選出作品

作品 - 20120531_068_6125p

  • [優]  puppet - 村田麻衣子  (2012-05)

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puppet

  村田麻衣子


クローゼット片付けてたら、要らないものがでてきちゃうし、
ぬいぐるみとか昔の手紙とか下手したら子供のころもらったよ
うなのも、平気で捨てちゃってる「わたし」を主人公にして。
中途半端な日当たりが嫌でたまらなくて、カーテンを閉める。
そこから物語が始まってしまうから わたしは あとは、エキ
ストラがたくさんいるからいいや。みんなやたら色んなものを
残したがる。やたら子供を欲しがったり、感情的に身体的に流
されて、オンナノクセニって言われ慣れてない証拠に、社会に
でれてない証拠に 感情が操作不能なくせに
産んで育てない奴はクズだと思う。
経済的に現実的に、もっと正確に感情は違った方向に流れてく
はずなので、それをいとおしさの正体をつきとめられもせずわ
たしは刻々と護る「わたし」を、素敵な部屋に囲い。誰かを
護るということそうして、やたら保存したがるのを嫌うそのす
べをあとからみつけようとする癖に、その記憶力と想像力が欠
如しているがゆえに、その現実に甘んじて産みたがる女たちの
例がそれなのかもれない

捨てられないから、こんなにぐちゃぐちゃになってしまうし。
あたまのなかもぐちゃぐちゃで 今してることの何が、これか
らに通じているのかわかんないし。永遠に結びつかないすべて
が、刹那的なものに目を奪われているだけのような気がして胸
がぎゅってなって、涙が出るまえに「違うよ。」って思えたか
らよかった。冷たいフローリングにカーペットを敷きつめる。
昨日の飲み会は、お見合いパーティーみたいでつまんなかった
。誰よりもはしゃいでお酌してたのはわたしだけど(笑)ふと彼
からもらったメールを思い出してしまって がやがやとうるさ
い会場を写メに撮って[保存しません]を、クリックして返信し
、途方に暮れてしまった。カーニバルで、はぐれて迷子になっ
たみたいに 急に誰に話しかけたらいいのかわからなくなって
しまって帰った グレイのワンピを着て、クローゼットから見
つけた花柄のストールを羽織ってた。そこにいる人達とわたし
が、欲したもののあいだにファッションが存在し セックスも
同じでように わたしたちどうすればいいのかよくわかってい
る。何事にも鮮度が大事だけど、グレープフルーツは熟してい
るほうが好きで、食べようと思うだけで痺れてしまうくらい好
き。

彼はこの部屋の真昼の訪問者であり、夜に染み入る電飾焦がれで
今ごろ、モザイクをはいだ半裸の女たちとまぐわっている。
わたしは冷蔵庫の中にあるだろう食材を食べようとしたら、
実際にあのはんぶんのグレープフルーツはなかった事実に消衰した
あのこは、そんな世界があるとも知らずに子供を育ててる

彼やそのすべてにおいて心を奪われた瞬間から、あけっぱなした冷蔵庫の前に座りこんだわたしがバドワイザーをあけるまでのえいえん。内側から外側にかけて故障してるみたいにひりひりとひかる。次はわたしに何を演じさせようか、えいえんにつづいていきはしない今が、そういうインパクトのない時間が流れていく。