選出作品

作品 - 20120312_021_5935p

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電話BOXイリュージョン

  大ちゃん

この街に唯一残った
道端の電話BOXから
大音量を上げて
呼び出し音が
鳴り響いていた

俺は中に入って
とりあえず
受話器を取った
とたんに音は止み
男の声がした

「もしもし。電信電話公社です。」
ずいぶん古風な男だ
「ただいま電話BOXの点検中です。」
そんなのがあるのか
知らなかった

「お客様、速やかなご対応、感謝します。」
「お礼に何か、望を叶えさせて下さい。」

LUCKEY!
記念品でもくれるのかな?
「じゃぁ、堀北真紀のポスターが欲しい。」
俺がそう言うと

「お客様、欲がない。
もっとむき出しの
男を見せてください。」
奴は言った

「じゃ、俺、女が欲しい。」
遠慮無しに言ってみた

「そうそう、そうこなくっちゃ。
金の斧、銀の斧、迷わず金の斧を
選ぶ精神性。尊い思想です。」
なんか理屈っぽいね

「これから起こる事は
ちょっと意外かもしれませんが、
全てはあなた様へのおもてなし、
ドッキリみたいなものです。」
男は甘い声で囁いた

なんかもう

猛烈に期待して来た

「さあ、サプラーイズ。
私ども電信電話公社が、
自信を持ってお届けする離れ業。
イッツアショウタイム!」

急に受話器に付いている
ボタンが点滅しだした
ポチッと押してみると
「110番警察です、どうしました。」
元気そうな女が出てきた

おおそうか
テレフォンセックス
ダイアルQ2
懐かしいな
お前は
ミニスカポリスか

俺は気分を出して
「ハァハァ。」
息を荒くした

「どうしました。」
どないもこないもない
ムード出していこうや
ネェチャン
「ハァハァ。」

「何かあったんですか。」
だめだこいつ
台詞がいけてない
要再教育だ

俺はマグロ女を恫喝した
「ドッキリはもう良い、分っているんだ。」
「・・・・・・。」
「ちゃんと感じている演技をしろ。」
「・・・・・・。」
「こんなものがSEXって言えるか、ぼけぇ。」
「あのぉ・・・・。」
「早く、くわえ始めろよ、エアで。」
「・・・・・・。」

それにしてもこの女
内容も無いのに
えらく引っ張りやがる
時間だけ過ぎたら
銭のもらえるような
甘いシステムなのかな?

これが公社マンの言う
欲望という名の
男の金の斧なら
ちょっと寂しすぎるぜ

ネチネチと
大根女優に対して
罵詈雑言を浴びせ続け
かれこれ
2〜30分が経過していた

そろそろ
他の女への
チェンジを
要求しようかと
思っていた矢先

突然辺りが
全台フィーバーの
パチンコ屋みたいに
真っ赤になって
騒がしくなった

白と黒を基調にした
パトカーのような
デコラティヴな車が
数台
俺の入っている
電話BOXの周りを
取り囲んでいた

ドアが開き
警察の制服を着た
コスプレイヤーたちが
男女入れ混じり
雪崩を打って
飛び出して来たのだ

「大砲、大砲。」
こいつら
俺の自慢の逸物を
褒めちぎっている

なんだそうか
ソープランドか
送迎車か
お前らポンビキか
吉原か
それとも
赤羽か?
エラク派手だね

よしよし
良くなっている
サービスが良くなってきている
これが本当のドッキリ
サプライズなんだな
公社の人
今度こそ礼を言うよ

俺はもう心の高ぶりを
抑えきれない

「わかった、わかった、俺は一人、
一人しかいないんだから。」

電話BOXから
引きずり出された俺
苛烈な客引きで
もみくちゃになった
だけど
悪い気はしなかった

「最低三発は抜かしてもらうよ。」

今夜はシックな
黒いブレスレットを
カチッと手首に
プレゼントしてくれた
お前の店に決めたぜ

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