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大ちゃん

選出作品 (投稿日時順 / 全19作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


レディオウェーヴ ブラザーズ

  大ちゃん

昨日テレビで
熊田Yが
俺を好きだと言った
口は動いてなかったけど
ダイレクトに伝わる
彼女の気持ち

朝早く街に出て
足早に歩いていると
自転車にのぼりを立てた
作業服のおっさんがいた

「小沢元代表に車で3回轢かれた。」
そう書いてあった

おっさんは
「お前、熊田Yのとこに行くのか?」
無表情に荷台を指差した

口は動いてなかったけど
電波的にわかり合えた
俺達
レディオウェーヴ ブラザーズ

そういう訳で今
高速道路を二人乗りで
テレビ局に向かっているところなんだ


糞迷宮

  大ちゃん

激しい雨が降っていた
土曜の昼下がり
娘を塾に送る車中
便意をもよおした

「お父さんお前の塾のトイレ、借りてもいいかな。」

「絶対ダメ。却下。キモイ。」

年のせいなのか
若き日の男色行為のせいか
僕のバタフライバルブは
待ったなし
したくなったら
すぐ緩む構造だった

塾に着くと娘は
すばやく降り
「ウザイ、行け。」って
力任せにドアを閉めた

仕方なく家路についたが
すでに限界が来ていた
意識が遠のいて行く
なぜこんな目に遭うのか

猛烈な雨の中
苦し紛れに
アクセルを踏んだ

出る 出る 出る 出る 出る

もやの中に
白い建物が見えた
引きずられるように
その駐車場へと入って行き
来客用スペースに止まった

シートから立てなかった
完全な金縛り状態だ

その時
お尻に風を感じた
僕の下水管から吹く
生温かい滅びの風

初弾は蛇の頭ぐらい
ニュルッと飛び出してきた
蓋が取れた感じ
この時
少し圧力が
下がった気がした

動ける
よし
ここで止めてみせる
いや止めるんだ
トイレを借りて
そこでするんだ
僕は腰を浮かせた

ああダメだ
止まらない
バタフライバルブは
酸欠のイソギンチャクみたいに
大きな口を開けて
ベロンベロンにめくれあがった

次から次へ
いやらしい音を立てて
汚臭のする半固形物が
パンツの中に溜まっていく
同時に僕の尊厳が
崩れていくのだ

ほとんど出し切ったところで
降りしきる雨の中
外に出た
いきなりずぶ濡れになり
さざんかの垣根に飛び込んだ
少し泣いた

すると非常ドアの影から
一人の老婆が
おいでおいでと
手招きをしている

垂れ下がった
ジーンズを揺らしながら
彼女について行った

部屋に招かれると
僕はトイレを借り
後始末を始めた
幸いにもパンツの
タイトな形状と
ヒートテック素材のおかげで
外には漏れていなかったが
ジーンズのその部分には
汚いシミが広がっていた

パンツを脱ぎ
裏返して
汚物を便器に捨てていると
パシーンと
ケツを引っぱたかれた

「よしお、このウンコたれが。」

老婆だった
顔に僕の糞の
跳ね返りが付いていた

「こっちに来い。」

彼女は僕を風呂に連れて行った

「つらかったやろ。悲しかったやろ。」

柿渋石鹸で隅から隅まで
念入りに綺麗にしてくれた
排水溝に昨日食べた
ニンジンのカス混じりの
便が溶けては消えて行った

老婆はパンツも
洗ってくれて
おまけにジーンズのシミも
全力でふき取ってくれた

「よしお、次はいつ来るんや。」

「おかあさん、またすぐ来るよ。」

僕は泣きながら答えた

手渡された
大人用のオムツを
キュッとはいて
その白い建物を後にすると
何食わぬ顔で
塾に娘を迎えに行った

僕は、よしおじゃないけどね


後日お礼に行ってみると
そこは介護付きマンションだった
管理人に適当な理由を言い
例の部屋に案内してもらうと

「ここはもう半年、誰もいないよ。」
との事

鍵を開けてもらい
中に入ると
がらんとして何もなかった

ただ
トイレにはかすかに
僕独特の油っぽいウンコの
匂いが漂っていたし

お風呂の排水溝には
ニンジンのカスと
磨り減った柿渋石鹸が
ピッタリ
へばりついていたんだ


蝮のピッピ

  大ちゃん

ピッピの鳥篭に
とぐろを巻いた蝮が
静かに佇んでいる
消化が進まないので
脱出できないでいる

昔抱いた女の
内股に彫られていた
タトゥーのそれと
良く似ていた

ああなんて
可哀想な俺
唯一の話相手を
丸呑みにされてしまった

いつも
「ピッピ、俺のこと好きか?」
て聞くと
「ピッピ ダータンノコト トゥキ トゥッキー ピヒョルルリラー。」
て鳴いてくれてた
そんなピッピを食らいやがって

糞垂れ蛇め!
篭ごと燃やして
分子レベルで
リサイクルしてやる

険しい顔で
蝮を覗き込むと
蝮のほうでも
俺を覗き込んでいた

「大ちゃんノコト、トゥッキー シャシャシャシャシャー。」
「ピッピ、生きていたの。」
「大トゥッキー シャシャシャシャシャー。」

それからまた
俺とピッピの
愛の暮らしが始まった

俺は生きている蝿の
手足と羽根をもぎ取り
舌の上に盛って
口移ししたり

ネズミの煮汁を
筆一杯に含んで
乳首に塗りたくって
舐めてもらったりした

「大ちゃん、ウレシー シャシャシャシャシャー。」
ピッピも喜んでいた

仕事が辛い時でも
ピッピのあの
愛しげな眼を見ると
みんなぶっ飛んでしまった

ある日
逆鱗に触れぬよう
優しくワンウエイに
背中を撫でていると
うれしい変化があった

「もうすぐ羽根が生えて来るよ。うまく飛べるといいね。」
ピッピは少し戸惑っていた

「明日お祝いに、あそこにピアスをしてあげる。」
「・・・大ちゃん、ウレシー? シャシャシャシャー。」
「ついでにタトゥーも入れてあげるね。」
「・・・・・・・・・・。」
ピッピも喜んでいた

次の日の朝
ピッピはいなくなってた
きっと
ドラゴンだとか
スカイフィッシュになって
飛び立って行ったんだ

大空の自由を堪能したら
また帰っておいでよ

それまで俺は窓辺で
口をアングリコ
ピッピの大好きなアレ
メガ盛りにして
いつまでも待っています

日本晴れの空から
君の声が聞こえるようだ
可愛いピッピ
俺のピッピ
小鳥のピッピ


大ちゃんの国際秘宝館

  大ちゃん

             
         WELCOME TO 大ちゃんの国際秘宝館


                 E N T E R


               Morning          

               7:30 AM         
               コンクリートの巣穴から   
               ヒトがうじゃうじゃ     
               這い出してくる       


  Wet                          Ruin

  順繰りに                        廃院の
  卵の黄身を口うつし                  ベッドの上に捨てられた
  我慢しきれず                     注射器の山
  君が潰した                      眼に刺さる針


               Long tall Sally      

               長身の          
               Sallyのカラダ、後から 
               ジェットスキーを     
               操るように        


  Baby                         Symmetry

  朝日射す                       マネキンの
  新生児室の保育器に                  首、大鉈で叩き割り
  くの字に折れた                    床に並べて
  老婆が眠る                      口づけさせた


               Blood          

               見せてくれ        
               男ダイリン血の花火    
               バンジージャンプの    
               紐なしバージョン     


  Over drive                      Magic

  アクセルを                      芯削り
  床に着くまでベタ踏みし                デスクに立てた鉛筆を
  殺す殺すと                      ヘッドバンギン
  ホーン鳴らした                    眼に刺し隠す


               Third eye        

               恋人の          
               第三の眼を覚ますため   
               むなぐらつかみ     
               頭突きの連打     


  J’s torture                     Shinjyuu

  ラップ越し                      胸はだけ
  脛毛が透ける君の足                  装飾ナイフの刺し違え
  万力で締め                      強く契った
  バキバキにした                    ハートのKISS


               Bait           

               釣り針を         
               アヌスの皺に引っ掛けて  
               リールで巻いて      
               フジツボにする      


  Milk                         Crimson 

  たぎる精                       寝室を
  義眼はずして受け止める                濃い紅に塗り染めて
  熱くて白い                      蝋燭を燈し
  涙アフレル                      君とまぐわう
  

               S・hell?          

               どうしても         
               欲しかったのさ、君の腕     
               貝殻つなぎの         
               クルージングナイト         


  Hall clock                       Black dog

  白い君                        わたくしを
  死体それとも時計なの                 不安にさせた罰として
  振り子揺らすと                    車で轢いて
  ボーンて鳴いた                    ペシャンコにする


               CT              

               知りたいな          
               君の内面、輪切りして     
               閲覧自由の          
               スライドにする        


  ばーすでい                      漆器

  年の数                        バスタブで
  バースデイケイク指を差す               漂白済ませ、漆塗る
  炎の代わりの                     あなたに金の
  赤いマニキュア                    蒔絵が似合う


               9in nails

               我が儘で
               独りよがりな心臓に
               9インチの
               釘を打ち込め


  チューリップのトリプティク

  (1)
  チューリップ
  たかたか指でかき回し
  おしべとめしべ
  グチャグチャにした

               (2)
               チューリップ
               まん中指でかき回し
               おやゆび姫を
               グチャグチャにした

                             (3)
                             チューリップ
                             兄さん指でかき回し
                             オオハナムグリを
                             グチャグチャにした


  ビリヤード                      (財)

  この俺が                       組み替えた
  突きたい物は球じゃない                足の付け根に垣間見る
  直腸破裂の                      リングピアスが
  ブレイクショット                   ぬらぬらしてる


               ケンタウロス       

               男色の
               ケンタウロスの恋人は
               人にはあらず
               猛き雄馬


  エナメル                       サイン

  エナメルの                      イク時は
  ミニスカートから這い出した              足の指曲げ骨鳴らす
  タトゥーの蛇の                    嘘か本気か
  餌になりたい                     見分けるサイン


                 E X I T

              ありがとうございました


ドクターモロダシ島  後編

  大ちゃん

前編までのあらすじ

最悪の毒婦、ばばあの言葉責めにより嬲られた俺は、復讐鬼と化し、
自らのペニスと足首を付け替える改造手術を施した。しかし、
ようやく探し当てた女は、尾羽打ち枯らし、老醜を晒していたのだった・・



               本編


「おビールでも飲みはる。」と                      
ばばあ                          
「うん。」と                            乾杯の後
俺                           彼女は三つ指をついて
なんか調子狂うな                    畳に額をこすり付けた

 
          「今日一日、夫婦の契りを結ばさせていただきます。
          不束者ですが、よろしゅう御願いいたします。」


             だってさ・・・


土下座した後
実に自然なアプローチで
スルスルと
俺のズボンを下ろすと
パンティに手をかけた


          「ちょっと待った、ここは俺じゃないと。」 

     
彼女のリードに
任せていたんじゃ
何の為の復讐劇だか
判んなくなっちゃう                         そ れ っ


             ばばあは少し仰け反っただけ

             
         「あ足首ですか、OK・OKやで、いける、いける。
          親指がペニスなのかしら?分かった、じゃぁ、
          ここフェラするわな。」


総入れ歯をはずし                        こそばいような
半分ビールの残った                     良い気持ちのような
コップに投げ入れた後                   むかし高校の池の鯉に
俺のアンクルサムを                  足の指を吸わせていたのを
パクってくわえた                        想い出していた


            とろける様なファンタイム
            今 過ぎて行きます
            ああ ここは
            天国に一番近い島 
   

                           ばばあはフェラをやめると
                               従順な犬のように
                                 仰向けになり
                                ベットベットに
                              ローションを塗った
                             性器を剥き出しにした


          「どうぞ、カムインや!」


ついに来たリベンジの時                            
おれはやる
やってやるぞ
前戯などはお構い無しだ                                                                                                         
                           ウラミハラサデオクベキか
                               いざ つかまつる
                                ジャンケンポン     
                                          
           足指じゃんけんはグーの形で
           いきなりインサートした
           ズボズボって音を立て
           一気に踵まで入って行く
           休まずにじゃんけんはグーとパーを
           交互に繰り出していた
               

ああ良い按配だ                          冒険だったが
今までは                          バックにも挑戦した
素股だかなんだか                        彼女を回転させ
ワカラナかったのが                     背後から腕をまわし
嘘みたいなグリップ力                   干し葡萄を摘みながら
やっぱり俺                         高速でピストンした
オペして良かったかも


             はずれない
             外れないよ
             いくら試しても
             すぐに外れていたバック
             それがどうだい
             自由自在だ


プレイ中の彼女                     「大丈夫。」って聞くと
死にかけの猫みたいに              「あんさん、気持ひウィ〜〜。」
グーって唸っていた                     嗚咽を漏らしている
痛いのかな?                       どうやら俺の取越苦労


             しかし 
             ちょっと待って
             俺 今
             大人の女性を
             満足させている?
             こうなったら絶対
             イかせてみたい


             もう少しだハニー
             最後の体位は決めてある
             人類49番目のラーゲ
             究極奥義その名も
             ヨ シ ム ラ


老女体をもう一度                      さらに彼女の身体を
180度回転させ                   ややリクライニングさせた後
こちら向きに騎上位にし                俺はベンチプレスのように
仰向けになった俺の               荒々しくその両足首を掴み挙げた
曲げた膝の上に                            今ここに
手を付かせた                       ヨシムラは完成を見る


                                
             高射砲の強度で下方から
             白髪混じりの陰部めがけ
             何度も腰を振り続けた
             「タカイ、タカーイ。」
                                               
                         
ゾンビみたいに
白目をむいている彼女の
だらしなく開いた口から
次々に涎が流れ落ち
キラキラと輝いていた


             つま先までタトゥーを入れた足が
             俺の気まぐれ次第で
             閉じたり開いたりしているのは
             まるで孔雀の羽根


俺は今このヨシムラで
霊鳥と化した彼女を
涅槃の神々への贄とするのだ


             カーム
             限界点が見えた
             往こう一緒に
             好きだ
             好きだ
             好きだ


         エンジェルズ カーム, ウイアー ヒィィィアー

    
             暗黒が訪れた





波止場への帰り道
二人寄り添って歩いた


「ねぇ、ハニー、質問があるの。         「実はな、若い時分、レズ仲間に
どうしてあんなにズッポリ、巨足を        尼サンがおっての、その娘の頭を
入れることが出来たの?」            入れていたんや。せやからあんさ
                        んのは、わて史上2番目かな。」


             100%解(ゲ)シュタポ


思うに彼女
腕の良い女王様だったのだろう
何人のM男達に
至福の時を与えてきたのか


             しかし寄る年波には勝てず
             思うようなプレイが
             出来なくなった頃
             心に1匹のマムシを
             飼うようになった
             プライドという名の
             えげつない神経毒を持った


                          そんな時とても不幸な事だが
                         ピュアだった俺は彼女と出会い
                      完膚なきまでに地獄に突き落とされた


その後は
彼女自身も
転がり落ちるように
風俗の奈落に
沈み込んで行った


             風俗に慣れているから
             風俗でしか働けないから
             そしてやっぱり
             風俗が好きだから
             生きる為に
             生き残る為に 
             プライドすら
             かなぐり捨てたのだろう


                               ああ哀れなおんな
                                    そして
                              なんて哀れなこの俺


彼女は下垂した瞼の奥から
ぼろぼろと涙を流し
こう言った


          「あんさん堪忍やで、うちがあんなこと言わなんだら、
          こんな身体には・う・う・。」


気付いていたのか
でも
もう良い
もう良いんだよ


             おしゃぶりな口をKISSで塞いだ


さっきのプレイだって
ただ
気持ち良いだけじゃなかった
恐かったし
しんどかっただろう
だけどじっと
我慢していてくれたね


             息も歯茎も
             もう何もかも
             臭かったけど
             愛しくて
             愛しくて
             舌を絡ませ
             チュウチュウと
             吸い上げた


          「君に、取って置いて貰いたい。」


俺はミイラになった
足の親指を差し出した


                                 彼女はそれを
                              ティッシュに包むと
                             シワシワの胸の谷間に
                                捻じ込みながら


         「肌身離さず持っています。火葬される時も一緒やで。」

おお!
ディア・グランマ
その心意気や良し


             今の貴女は性格美人
             愛され度200%の
             ダーリンウーマンだ



船の上から俺は
小さくなっていく彼女に
千切れんばかりに
手を振っていた


                                 さよなら俺の
                                伊豆の踊り子よ
                              (MIE県だけど)
                            もう逢う事もないだろう


           「俺達、良いSEXが出来たね。」





エピローグ


あれから男としての
自信を手に入れた俺
それなりに順風満帆


             おもしろ半分
             You tubeに投稿した
             股間の巨足で
             サッカーボールを
             リフティングしている
             セミヌード動画が超受け


                               見る見る火が付き
                         その道の指南書「JUON」の
                              カリスマ読モとなり
                      「呪怨スーパーボーイ」にも選ばれた


最近ではTVにも進出し
お茶の間のサポーター達からは
「魔羅ドーナ」と呼ばれている


             プライベートのほうも
             ぬらりひょんガールの
             「貞子ちゃん」と
             ヨシムラできそうな
             良い雰囲気だ

 
                                    だけど
                                一つ難を言えば
                                  あの日以来
                               ジョニーの指の間
                         ジュクジュクの水虫が治らない


             ふふふ
             まったく
             あのババアって奴は
             いったい・・・



                   完






参考文献

女がたまらずヨガリ泣く、SEX新体位「ヨシムラ」驚異のアクメパワー
週間大衆2010年11月29日号

ポーの一族 小鳥の巣   萩尾望都著


モヒート

  大ちゃん

禁じられた談合
悪戦苦闘の某中堅ゼネコン
ドボンぎりぎりで
とある山奥の田舎町の
トンネル工事を落札した

どの道この道
赤字なのだが
銀行さんの手前
少しは数字を良くしたい

このパターンの時は
奴隷のような俺達
傘下の協力会社に
ババが廻って来る

ゼネコンは
地元の土建屋を使わず
犬のように聞き分けのいい
俺達を駆り出すのだ

生きぬように
死なぬようにと
奴らの言いなりで
黙々と働く俺達

一方的に体の良い
護衛船団システムが
いつの間にか
出来上がっちまっていた

これじゃぁ全く
地域の為にもならない
仁義もヘッタクレもない
俺達はこの町でも
招かれざる客だった

夜のほうでさえ
バブルの頃なら
クラブに繰り出し
盛大に稼いだ金を
ばら撒いたものだが

せいぜい居酒屋で
時化た酒を飲むのが
このご時世には
お似合い

だけど
そんな中でも俺は
この間テレビで
ヘミィングウエイ特集を
見てからと言うもの
にわかにショットバーに凝り
地方を仕事で巡る度に
店探しを楽しみにしていた

パパ・ヘミィングウエイ
男の中の男
あまりにもいけている
俺はゲイではないが
抱かれてみたいとも思う

キューバ滞在中に
パパが飲んでいた
伝説のカクテル
「モヒート」

ラム酒ベースに
ライムを絞り
フレッシュミントを添え
タンブラーで掻き混ぜる
シンプルかつ強烈な
男の勝負酒だ


糞みたいな穴倉(トンネル)から
今日もなんとか
無事に出て来られた

仲間の誘いを断ち
地元タウン誌で見つけた
この町に一軒だけの
ショットバーへと向かった
ローカル色ゆたかな
「モヒート」が
今夜も俺を待っているのだ


バー・アミーゴ
紫煙の充満した
薄暗い店内に
ボワッと水槽の灯りが
滲んでいる

鬱蒼と茂った
水草の間を縫って
泳いでいるのは
熱帯魚ではなく
中国産のメダカだ

このチョイスの理由は
たぶん
「安い上に丈夫だから。」
だろう

大陸のケミカルな
原色の小川を
生き抜いてきた
筋金入りの
バイオフィッシュだ

ハンティングが好きだった
パパにあやかって
サファリジャケットを
粋に着こなした俺
ややぶっきら棒に
カクテルのオーダーをした

「モヒートを一杯。」
渋いな俺は・・・
自分に惚れる瞬間

「そんなものはない。」
バーテンダーの無情な一言

何だと貴様
俺がゼネコンの一派と知っての
嫌がらせなのか?

「ミントとか、とにかく草がない。」

奴はしゃぁしゃぁと続けた

仮にもショットバーの
看板を上げながら
モヒートの一杯も
出すことができないなんて
もう一刻も早くヤメテシマエ!

「草がなかったら、道端でヨモギでも採って来い。」

俺は怒鳴り上げた

バーテンダーは余裕の表情で

「よし、採ってきてやる、立小便をつけてな。」

下品だなお前
ヘミィングウエイを
バカにしているのか

地元の先客達
クスクス笑っている
どうやら俺は
一本取られたらしい

このままじゃ引き下がれない
芋を引いたままで
何時までも笑っている
そんな俺じゃないのだ!

ムンズと棚に手を伸ばし
邪魔をするバーテンを抑え
ラム酒の瓶を取り出して
おもむろにグラスに注ぐと
傍らの水槽に手を突っ込み
水草を掴んで投げ入れた

「喰らえ、これが俺の藻ヒートだ。」

奴の口めがけてグラスごと
特製カクテルを突っ込んでやった
歯とガラスが当たり
どちらかが割れた音がした

突然の
ハードボイルドな展開
天国のパパも
ビックリしながらも
きっと喜んでくれるはず

地モッピー達は
焼酎の瓶を
カウンターに叩きつけて
武器造りに励んでいる

俺は俺で
奴らを牽制しながら
アイスピックに
舌を絡めている

一触即発
微妙な空気の揺れでも
この場末のバーは
戦場と化すだろう

「ふぁってくれ(待ってくれ)。」
流血のバーテンが
俺達の間に割って入った

「これは旨いよ!ファンタ(あんた)天才だ。」

折れた前歯の間に
紛れ込んだらしい
血まみれのメダカを
ビチャビチャさせながら
奴は言った

「このファクテルの作り方を、
教えくれないか。」

鼻血と一緒に
水草を出し入れしている
バーテンダーの
マジな顔がチャーミングで
俺達は誰彼となく
笑ってしまったんだ

「いいぜ、持っていけよ。
今からこいつは、お前の酒だ。」

イエース
男達の野太い声が
狭い店の中で
歓喜の爆発をした

それから皆で
水槽の水草とメダカが
全部なくなるまで
夜通しカクテルの
踊り飲みをした

雨降って地固まる
地元もよそ者もない
俺達はただ陽気な
モヒートのファンだった


あれから健は
(バーテンダーの名前)
例の踊り食いカクテルで
キューバで開かれた
モヒートコンテストで優勝
一躍スターダムにのしあがった

あのど田舎の町も
「モヒートタウン」として
世界的に有名になり
ちょっとした
観光名所になっている

モヒートせんべいに
野沢菜のモヒート漬けは
モンドセレクションで
金賞を受賞した

カクテルから手足の生えた
ゆるキャラのヘミングちゃんは
恋人のフジコ・へミング共々
グッズの販売で単年度的に
キティちゃんや
リラックマを抜いていた

立派な町おこしだった

今日も観光バスに乗って
俺達の作ったトンネルを通り
日本中いや世界中から
あの町に客が集まっているのだ


俺達ゼネコン旅団はすでに
次の現場に移っていた
今日も何とか
ほら穴から出て来られた
黒い汗をぬぐいながら
血のような夕焼けを見ていた

「パパ、俺もう、いつ死んでも良いよ。」

すると近くの山寺から
陽の終わりを告げる鐘の音が
静かに鳴り響き始めた

それはまるで
天国のヘミングウェイが
俺達なんでもない
その他大勢の者の為に
鳴らしてくれたようだった 


電話BOXイリュージョン

  大ちゃん

この街に唯一残った
道端の電話BOXから
大音量を上げて
呼び出し音が
鳴り響いていた

俺は中に入って
とりあえず
受話器を取った
とたんに音は止み
男の声がした

「もしもし。電信電話公社です。」
ずいぶん古風な男だ
「ただいま電話BOXの点検中です。」
そんなのがあるのか
知らなかった

「お客様、速やかなご対応、感謝します。」
「お礼に何か、望を叶えさせて下さい。」

LUCKEY!
記念品でもくれるのかな?
「じゃぁ、堀北真紀のポスターが欲しい。」
俺がそう言うと

「お客様、欲がない。
もっとむき出しの
男を見せてください。」
奴は言った

「じゃ、俺、女が欲しい。」
遠慮無しに言ってみた

「そうそう、そうこなくっちゃ。
金の斧、銀の斧、迷わず金の斧を
選ぶ精神性。尊い思想です。」
なんか理屈っぽいね

「これから起こる事は
ちょっと意外かもしれませんが、
全てはあなた様へのおもてなし、
ドッキリみたいなものです。」
男は甘い声で囁いた

なんかもう

猛烈に期待して来た

「さあ、サプラーイズ。
私ども電信電話公社が、
自信を持ってお届けする離れ業。
イッツアショウタイム!」

急に受話器に付いている
ボタンが点滅しだした
ポチッと押してみると
「110番警察です、どうしました。」
元気そうな女が出てきた

おおそうか
テレフォンセックス
ダイアルQ2
懐かしいな
お前は
ミニスカポリスか

俺は気分を出して
「ハァハァ。」
息を荒くした

「どうしました。」
どないもこないもない
ムード出していこうや
ネェチャン
「ハァハァ。」

「何かあったんですか。」
だめだこいつ
台詞がいけてない
要再教育だ

俺はマグロ女を恫喝した
「ドッキリはもう良い、分っているんだ。」
「・・・・・・。」
「ちゃんと感じている演技をしろ。」
「・・・・・・。」
「こんなものがSEXって言えるか、ぼけぇ。」
「あのぉ・・・・。」
「早く、くわえ始めろよ、エアで。」
「・・・・・・。」

それにしてもこの女
内容も無いのに
えらく引っ張りやがる
時間だけ過ぎたら
銭のもらえるような
甘いシステムなのかな?

これが公社マンの言う
欲望という名の
男の金の斧なら
ちょっと寂しすぎるぜ

ネチネチと
大根女優に対して
罵詈雑言を浴びせ続け
かれこれ
2〜30分が経過していた

そろそろ
他の女への
チェンジを
要求しようかと
思っていた矢先

突然辺りが
全台フィーバーの
パチンコ屋みたいに
真っ赤になって
騒がしくなった

白と黒を基調にした
パトカーのような
デコラティヴな車が
数台
俺の入っている
電話BOXの周りを
取り囲んでいた

ドアが開き
警察の制服を着た
コスプレイヤーたちが
男女入れ混じり
雪崩を打って
飛び出して来たのだ

「大砲、大砲。」
こいつら
俺の自慢の逸物を
褒めちぎっている

なんだそうか
ソープランドか
送迎車か
お前らポンビキか
吉原か
それとも
赤羽か?
エラク派手だね

よしよし
良くなっている
サービスが良くなってきている
これが本当のドッキリ
サプライズなんだな
公社の人
今度こそ礼を言うよ

俺はもう心の高ぶりを
抑えきれない

「わかった、わかった、俺は一人、
一人しかいないんだから。」

電話BOXから
引きずり出された俺
苛烈な客引きで
もみくちゃになった
だけど
悪い気はしなかった

「最低三発は抜かしてもらうよ。」

今夜はシックな
黒いブレスレットを
カチッと手首に
プレゼントしてくれた
お前の店に決めたぜ

ウィンク


こしあんルーレット

  大ちゃん

僕は
お饅頭の中身は
粒あんが好きだが
嫁の母は
こしあんが好きだった

好きなだけならいいが
粒あんのことを
下品だとか
気持ち悪いとか
さんざん虚仮にする

長期に渡り
家族ぐるみで
生活費の援助を
受けている身としては

「そうっすねぇ、あんなの、あんこじゃないっすよ。」

なんて引きつり笑いで
受け流すしかないけど
内心は
はらわた煮えくり返っている

他の事は良いんだよ
かるーい気持ちで
スルーできる
大人だもの

だけど粒あん
粒あん

はるかかなた
南米の地にあると言う
女だけの王国アマゾネスの
選りすぐりの戦士達の
豊潤なクリトリスを
じっくりコトコト
弱火で煮詰めたような

有名バリスタも舌を巻く
あの艶
あの照り
あの触感
ああもう考えただけで
いっちゃいそうです僕

ある日
夕ご飯のテーブルに
おまんじゅうが並んでいた
だれが買ってきたのかな

「めしの時間に、一緒に食うのがエエンやで。」

お菓子に目がないお義母さまの
いつもの無茶振りだった

「よっしゃや〜、皆いっせいに食べるで。」

お義母さまのそれって掛け声で
僕達ファミリィーは同時に
お饅頭にかぶりついた

「うぉ、まっずぅ、粒あんやんけ。
アンコやと思うたら、
中にウンコが入ってるで。」

お義母さまはペッて
口から黒い塊りを
お吐きになられた
そんでもって
テーブルにベチョ

その時
僕はあろうことか
「何をするんだ。」って
刺すようなきつい目で
お義母さまをにらんでしまった

だってだって
可愛い僕のプリンセスを
ウンコ呼ばわりしたんだもの

「なんじゃ、われ、文句あるんか。」

し、しまった
けど時すでに遅し
盾になってくれるはずの
嫁はんも今日は
女子会に行っていて不在

「お前、さてはあれか。こんなけ援助させといて、
今日も子供の入学金、しめて60万円払わさせといて、
えらいキバむいてくるんやのぉ。」

「おばあさま、ぼくたちのおまんじゅうは、
みんなこしあんだよ。」
長男が騒ぎ出した

「さてはお前やろ、わての皿にだけ、
わざと粒あん入れたのんは。」

下垂した上目蓋を
プチ整形で
無理やり大きくした
その白目がちな眼が
更なるど迫力
天然3D画面で
僕に迫ってきた

そ、そんなこと
やってません、やっていません

「わてへの、嫌がらせか〜、ほっとけんの。
今まで、お前等に援助した1億円、耳をそろえて返せや。」

なんぼなんでも1億円って
あんまりにも法外でっせ
ママン

お義母さまは食いさしの
粒あんのおまんじゅうを
床にたたきつけると

「やってへんのやったら、これを踏んで見いや。」
踏み絵ならぬ踏み饅を
僕に強要してきた
恐ろしいことになった

ごめんね
僕のアマゾネス軍団
でっかいゴキブリを
叩き潰した事のある
この腐りかけのスリッパで
お父ちゃんは今
君達を踏みつけるね

悪く思わないでよ
これも生きる為なの
家族の為
子供たちの為なの

はうあ〜
お饅頭はビッチャって潰れた

「ほう、やればできるやんけ。
早くティッシュで拭き取って、
そのウンコ饅頭を
トイレに捨てて恋や。」

「はいっ。」
僕は元気良いお返事とは
裏腹にトボトボと
粒あんを捨てに行った

今、トイレに
ぼろぼろな
お饅頭を流した
人間よもう止せ
こんなことは

しかし良く見ると
なんと一粒だけ
しっかりと黒光りする
ほぼ完全態の豆姫が
奇跡のように
便器にへばり付いていた

僕はたまらず
可愛い子ちゃんを
指先でツマミあげ
くちづけした

「おばあさま、おっさんがトイレで
おまんじゅうを食べているよ。」

気が付くと長男が
こっそりと僕の様子を
伺っていた

そうだったのか息子よ
全てを仕組んだのか?
お前こそが
スパイだったのか

不甲斐無いこの俺に
愛想をつかして
この家から追い出す気なのだな

「お前なんか、消えてなくなれ!」
息子の吐き捨てるような
声に追い討ちをかけるように
お義母さまの足音が
廊下に響き渡っていた

その時の
僕にはそれが
熱帯の太陽に
焼かれながら
人食い人種が
狂おしく
打ち鳴らす
ドラムのリズムに
聞こえていた


フレッシャーズ☆カット

  大ちゃん

新しい
事業年度の
始まりの月
俺の会社にも
フレッシャーズが
やって来た

超氷河期を越えて
鳴り物入りで
やって来た
ハイパーな奴等

遠い昔
新人類と言われた
俺たち世代も
2年後には
やつらの靴を
舐めているかも

何か始めなきゃ
このままじゃ
超人類に
おもちゃにされる

皆が帰った後
アスクルで今日来た
新品のコピー用紙を
一冊丸ごと脇に抱え
重役室に忍び込んだ

いつだって悩んだ時は
この儀式をしなきゃ
何も始まんないんだ

B5の袋を開けると
エッジの効いた
元気のいいのを
一枚取り出した

人差し指の爪の
付け根の肉に
縦に押し当て
シュッ
一気に引いた

熱っ
フレッシャーズに
指差され命令に従う
不甲斐ない
未来の俺をカット

続けて
パンツごとズボンを
引き摺り下ろし
亀頭に合わせると
シュッツ

UGGHHHHH
フレッシャーガールに
ムラムラと欲情する
不甲斐ない
ちんけなマラをカット

お次は
カッターシャツを
メンズブラジャー
もろともたくし上げ
フレッシャーズ代表の
入社の答辞を聞いて
思わず勃起した乳首を
シュッ

ガ・ギ・グ・ゲ・ゴー
イケ面フレッシャーに
心奪われた
不甲斐ない
コリコリの豆をカット

はあはあ
痛い
痛い
次ラストで
自らに言い聞かせた

とどめに
ハイパーフレッシャーに
媚びへつらうだろう
この不甲斐無い
俺の二枚舌を
三枚におろすつもりで
シュッ

ベーイシティイ・・・

俺は血が止まるまで
ティッシュを噛み続けた
負けないぞ
新人類の心意気
見せてやる

俺だってこの時代
なんとかかんとか
生き抜いてきたんだ

俺は
先輩としての
プライドを
守り通す事
血まみれの
ティッシュを
握りつぶしながら
ポタリポタリ
執念深く誓っていた


ダイヤモンドΩチャック

  大ちゃん

              新人社員を代表して
              答辞を読んだ日以来
              同期の中での俺は
              特別な存在だった

仕事の質、量、スピード
何をとっても超一流
会社に利益をもたらす
最高最上のルーキーだ

そんな俺を                        夜風に当たりながら
会社のオーナーが                    舗道を歩いている俺は
放って置く訳もなく                   たった今その令嬢との
ご自慢の一人娘を                     初めてのディナーを
早速紹介してきた                       済ませたばかり

              恥ずかしかったのか
              色白のヤマトナデシコは
              食事の間じゅう
              ずっとうつむいていて
              たまに顔を上げると
              すごく紅潮していた
 
                             あっけないものだな
                               彼女も洩れなく
                                 俺の魅力に
                              ハマッてしまった

今夜はファーストデイト
だからあえて
大切にしている感を出すため
何もせずにタクシーに乗せ
丁重に見送った

                                  おやおや
                            10分もしないうちに
                             早速メールが来たよ
                          完全に惚れられたようだね



              チャック全開のチャックマン
              今夜は久しぶりに
              笑わせてもらった 
              菱形に開いたチャックから
              白いシャツが飛び出していたね
              ボケやから気付かんのやな
              お父様は身だしなみには
              超うるさいで
              こんなんが一番嫌いなんや
              もしかしたらお前
              地方に飛ばされるかもしれんで
              どないするつもりや?
              まあ黙っといてやってもええ
              穏便に取り計らって星印やったら
              今からすぐ一人で
              新宿のHOTELファインに恋 


うつむくと確かに                      だが動揺ばかりも
白やぎさんからの                       していられない
お手紙が届いていた                     ここはTHINK
オーマイチャ〜ック                    そう良く考えるんだ
えらいこっちゃ                    今回の事件の責任の所在

              俺がチャックを開けていた
              そもそもの原因を・・・
              暗いリビドーがふつふつと
              ある方向を示し始めた
              そうだよママだ!

俺は激怒に指を震わせ
荒々しく携帯を操り
夜中にもかかわらず
ママを叩き起こした

           俺「ママの馬鹿、どうしてくれるの。」
           母「え、え、どうしたの。」
           俺「みんなママがいけないんじゃないか。
            ママがチャックを閉める習慣、つけてくれてないから、
            僕、すごい恥をかいたんだよ。」
           母「え、え、何、何、ごごめん・ごめん・」
           俺「ダメダメダメ今夜こそ、絶対に許さない。
            僕がどれだけ苦労して、ここまで登りつめて来たか、
            いったいぜんたい判ってんの?」
           母「おお、ごめん、ごめんよ、坊や。ううううう。」
           俺「何でこんな簡単なこと、教えることが出来ないんだ。
            それでも本当に僕の母親ですって言えるの。」
           母「ごめんなさい、ごめんなさい坊や。みんなママが、
            ママが悪かったの。でもどうしたら、どうしたらいいか、
            言って頂戴、ううううう。」
           俺「アホか、今頃謝っても、もう遅いんだよ。
            土地でも売って、金作っとけや。ボケ。」


携帯をブチ切っても     
怒りと憎しみで       
まだハアハアしていた    
ママの野郎
今度会ったら                   
ただじゃおかねぇ

              さあ次は令嬢の件だが                
              なぜ俺を呼んだのか? 
              ここは言われるまま
              HOTELファインに
              行って見るしかないだろう



AM 0:00
HOTELファイン到着
支配人によって
地下室に案内される
部屋には令嬢が
キャットウーマンみたいな
コスチュームで待っていた

            「おう、チャックマン、よう来たのぉ、
            ひとつ言うとくで・・お前が大好きや。」

ホラね
こんなことだと思ったんだ
彼女はきっと抱いて欲しいんだよ
この俺に身も心も
それにしても酷い関西なまり
なんか嫌だな・・・

            「けどな、見たら判ると思うけど、
            私、あっちの方の趣味があるんや。
            今からちょっとプレイの相性を
            試してみたいんやけど、どうや、
            チャックマン、ためしてガッテンか?」

迷うことはない
鞭の2,3発も受けたら
巨大企業の
跡取りになれるかもしれない

「いいけど、どんなことすんの?」

            「いったん服を脱いで、これに着替えて欲しいんや。」

黒革のホットパンツ
ブリーフもなしで
着けろというのか?
ま いっか
OK OK

                                タイトなその
                              ホットパンツには
                                 ギラギラと
                             恐いほど輝いている
                           ファスナーがついていた

「はいたよ、つぎどうすんの。」

            「よう似合ってる、グーやでチャックマン、
            Bzの稲葉、吉本のHG、TOKIOの長瀬みたいや。」

「皆、いっちゃってる人ばっかだなぁ。」

            「そのチャック、ええやろ、ダイヤモンド製やで。
            このホットパンツはなぁ、元彼も、そのまた元彼も、
            代々はき続けてきた、伝統のシロモノや。
            気に入ってもろたら、エエんやけど?」

「うん、なんかうれしいよ。」

           「オオ、そうか喜んでくれるんやな。おおきに、おおきに。
           ウエストのサイズもあつらえたみたい、ばっちりやな。 
           そしたら、手錠と足かせつけさせてもらうで。」

彼女は慣れた手つきで
てきぱきと俺を拘束しだした
このゴシックなSMルーム
天井からは手錠がぶらさがり
床には足かせがくっついていた


            「できたで、ほな始めようか。」

嬢は俺の前でしゃがみこむと                 うつむく俺の目に
ダイヤモンドチャックに手をかけ               たわわな美白乳が
シャーシャーと                        飛び込んできた
上下しだした                       むむむビューテホー
                             起ってきちゃったよ

              それは突然だった
ガギギュ
いい痛
痛いイタイイタイ
噛んじゃってる 噛んじゃってるぅ
やめてやめてやめて

            「どや、どや、痛いか、痛いか。
            当たり前やろボケ、神経ついとるんやから。」

「やめてよ、ひどいよ。」

            「お前がスケべやからアカンねん。
            やめて欲しかったら、まず勃起をやめろや。」

彼女は上半身の服を脱ぐと              俺はさらに興奮してしまい
俺の髪をつかみ                   切れたあそこの静脈からは
顔を胸に引き寄せると                   大量の血が噴出した
オッパイでビンタしてきた

            「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

俺はまるで囚われの
ダンシングフラワー
逃げようにも手首足首
がっちりロックされて
どうしようもない

                     「ええ声で鳴くのぉ、チャックマン、
                     ええ動きで舞うのぉ、チャックマン、
                     もっともっと楽しませてくれや。」 
ジジッ
嬢はさらにファスナーをあげた
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ
イダイダイダイダイーダイダー

               「おもろいやんけ、おもろいやんけ、
               チャックマン、おもろかったら、それでええんや。
               もっともっと、スマイルフォーミー。」

ジジッ
グアオーグググゴー

               「行ってみよう!チャックマン!行ってみよう!」

ジジッ
グギャーグギャー

            「行きたくない!お嬢様!どこへも行きたくないよー!」

このままじゃまずい                     それにさっきから
千切れちゃうビーイング・ラブ                  嬢の声が変だ
こんなLOVEマシーンじゃ            オッサンみたいになっている
世界も羨まないよ            ユーリズミックス(完全な入神状態)?

            「ああなた、誰なのぉぉぉぉ。」

            「我こそは、第六天魔王ナリ、
            六道欲望界の覇者じゃ。
            チャックマン!お前みたいな、
            勘違い野郎は捨てておけん。」

ジジジッ

            「グボォォ、グボォォ。」
                                          
痛すぎてゲロ吐いちゃった
このままじゃマジ
殺されかねない
嬢は第六天魔王だそうだし
もう訳ワカラナイや

                                 だけれども
                               こんな状況でも
                                  やっぱり
                                責任の所在を
                               明らかにしたい
                                  俺がいた
                            悲しいエリートの性だ                                              

              やっぱママのせいだ
              あぶない人に
              ついてっちゃダメって
              教えてくれなかったから

ママの馬鹿
           ママの馬鹿
                      ママ ママ
                                助けてぇー

                ドーーーン

その時ドアが爆発し                      オーナーだった
ミートボールみたいな                   つまり嬢のお父さん
頭をした男が現れた               ママを呼んだらパパが来たのだ

            「理里香ぁー、この痴れ者がー。」

ヘッドスリップしながら
変態娘の懐に飛び込み
右フック1発で宙に浮かせた
全盛時のタイソンみたいだ
彼女は一撃で気絶させられた

           「き君、大丈夫か。」

「オ、オーナー助けてください。」

           「よっしゃぁー、と言いたいけれど。
           一つだけ聞かせといて欲しい。」

じじいよ
ゴジャゴジャ言わず
早く助けろ
すべておのれの
ド変態娘のせいなんだぞ

           「君、理里香と結婚せえや。」

俺の中の全細胞が                   
このオファーを拒絶していた              オーナーは俺の顔色から
聞いたとたん                      プンプン乗り気しない                      
10000個ぐらい                     臭いを嗅ぎ取ると
ネクローシス(細胞壊死)がおきた             急に不機嫌になった

           「なんや、君も嫌なんか?
           最近の若い人は辛抱が足らん。
           ほな、皆と一緒に、海に沈んでもらうで。
           コンクリはいつでも練ってあるんや。
           こんな話、表に出されへんよってな。」

ヘドロの海の底                        何年か経ったら
餌食になった諸先輩方と一緒に                絶滅危惧種として
新種のサンゴになって                      おさかな君が
揺れているヴィジョンを視た              見つけてくれるだろうか

           「いやや、 いやや死にとうない。
           結婚します。するから早よう助けて。」
気が付くと俺は
付け焼刃の関西訛りで
オーナーに嘆願していた

           「そうか、そうか、賢い奴っちゃな。
           今から、君はわしの息子や。
           待っとれ、すぐ助けたる。こうか?」

ブッチィィィィィィ                   スローダウンオーナー
オーナーはファスナーをつまむと             人生を急ぎ過ぎている
一気にずり下ろした                  麻酔的な処置は無いの?
ビッチャァァァァー                      力任せだなんて
嫌な感じのスプラッター音            チャックに肉片も付いているし

              俺の脳髄は
              すみやかに気絶を示唆した
              目の前が真っ暗になった



サドな令嬢と結婚した俺                  驚いたことに彼女は
見返りに会社の重役になった               普段はまったく貞淑で
悲しいかなトラウマで                品の良いセレブ妻であった
普通のズボンがはけず               25ansの読者モデルもこなす
ジャージ姿で出勤していた            あこがれのタマプラーゼだった

ただ
生理前後の数日間                             
彼女の荒ぶる魂は
どんな慶応ボーイにも                               
止められないほど                         そんな時は
エグイものだった                    義父の用意してくれた
                            シェルターに避難して
                               難を逃れていた
                               今日もそんな日
                      
テレビを見ていると
電話が鳴った
秘書課の男だった

           「オーナーが他界されました。」

ななんと

           「つきましては、臨時取締役会を招集します。
           シェルターの前にレクサスを止めていますので、
           ただちに乗車してください。」

ママ ママ                         
チャンス到来だ                       
ママの自慢の息子は                     スキップしながら 
ついに天下を取るよ                     シェルターを出て
後で電話するね                     車に乗り込んだとたん

              ジジジジジュゥゥウウ

電撃が走った                     
スタンガンだ
俺はうつろな目で                                  
運転手の顔を見た 

                           そこにいたのは嬢だった
                              そして野太い声で
                               こう言ったのだ

                     

             「さぁ、チャックマン、
             邪魔者は消えた、プレイ再開や。」


白蛾

  大ちゃん

古い玄関灯が
小さな鉢植えを
照らしていた

三角形をした
白い蛾の雄と雌
細長い葉の上で
尻と尻を合わせ
菱形を作っている

その重心はピンク色だ

どちらかの性器が
ピンクなのか
それとも
お互いの性器が
ピンクなのか

この菱形が
あまりにも完全で
僕にはちょっと
わからないでいる


ブラジリアン シンドローム

  大ちゃん

 来るべき新世紀、目に見えぬ力で、世界を牛耳る輩あり。人々はその者たちを、新しい王と呼ぶだろう。(バビロニアの古文書)                  
                                                          

              大阪電力株式会社


              西暦2077年7月某日
              休み明けの月曜日
              その日は朝から
              35℃を越す真夏日であった

              全体朝礼が終わり
              すでに汗まみれの
              4体のサイボーグ社員
              人間風車ビル・ロビンソン
              人間変電所ブルーノ・サンマルチノ
              人間機関車エミール・ザトペック
              人間DOG犬江親兵衛

              彼等は会社の広大な施設内の
              超伝導素材を敷き詰めた
              最先端電磁フィールドにて
              横一列に整列していた

              開始のサイレンとともに
              おのおの右隣の者の
              マスをかきはじめた

人間風車
オッサンの顔に4枚の白いチタン素材の小さな羽根が突き刺さっている。
バードストライクのせいで、血や肉片のこびり付きが落ちない。

人間変電所
オッサンの腹の中に2対のロータリーエンジンを内蔵している。
おにぎり型のバルブが磨耗していて、燃焼効率は少し悪くなっている。

人間機関車
片腕が超合金ピストンで、どんな高速にも対応できるオッサン。
ピストンの先端は、手淫に適した、OKサインの形状である。

人間DOG
ボディに、野良犬の頭が取り付けてあるオッサン。
もともと不細工だったので、あまり代わり映えはしない。


              暖機運転も済
              奉仕専門だった人間風車と
              奉仕されてばかりの人間DOGが
              その距離を縮め出し
              固い絆の円環を閉じた

       ここに永久機関型発電ユニット「四人囃子」は完成を見る

           ヒューマンフレンドリーエネルギー
              「四人囃子」

地球温暖化対策の切り札             三人寄れば「もんじゅ」の知恵
クリーンかつ                    四人集まりゃ「四人囃子」
絶大な発電量                       とかく場当たり的な
大阪都全域の一日消費電力の               国家のエネルギー政策の
約150%を賄っている                当面の切り札的存在であった


 各サイボーグの白金パラジウム製の、剥き出しの燃焼棒(チンコ)が摩擦により赤熱を始めると同時に、彼等自身もぐるぐると小さく回りだした。社内放送では、呑気なオクラホマミキサーがオンエアされ始めたが、やがてそのテンポは常軌を逸する速度と化し、呼応するように、「四人囃子」自体も、目にも留まらない速さで回転していた。彼らの中心に出現した人工コイルの中では、空気が急激に温められ、破格の上昇気流が発生した。それを受け、人間風車は、風車を激しく回転し、エナジーを人間変電所に送電する。人間変電所はそれらのエナジーを何倍にも増幅して、人間機関車に再送電する。人間機関車は手も千切れんばかりにピストンし、そのエナジーを人間DOGに注入する。人間DOGは、注入されたエナジーを電子声帯で言霊に変換し、ウラジオストク(浦塩)まで聞こえるような遠吠えを始める。すると遠吠えは人間風車のナイーブな神経を刺激して更なる回転を呼び・・・・この様にして大阪電力の電磁フィールドにはかつて人類が手にした事のない、未曾有の大電力が発生していたのだった。この発電方法は、プレアデス星系宇宙人が、アメリカのエリア51にて、半世紀前にNASAの科学者達に教示したものだった。出来の悪い我ら地球人も、ようやく彼等の新しいサイエンスを理解し始めたのだった。


              四人の男達はいずれも
              大学生の子ども達がいる
              彼等は学費を稼ぐために
              志願してサイボーグとなった

              父の苦労を知ってか知らずか
              毎夜合コンに興ずる子供達よ
              この光景を見てもまだ
              勉強したくないと言えるのか。

父親とは
家長とは
こう迄しても
頑張らねばならないのだ

              やがて、すったもんだの挙句
              ランチタイムとなった。
              各サイボーグ達は徐々に
              回転をゆるめて行き
              カゴメカゴメ状態を脱した後
              再び横一列の編隊になった


 彼らの消費カロリーは半端ないので、ランチとは言え、タニタの社員食堂のメニュー全部を、バイキング形式で食べてもらっていた、ダイエットには縁のない軍団なのだ。

 さあ、昼にしょうやと、フィールドから離れようとした時、最初に人間DOG犬江親兵衛が異変に気付いた。人間機関車エミール・ザトペックの様子がおかしかったのだ。

      「オッサン、痛い痛い、何しとんねん。昼や、ピストン止めろや。」

 エミールはうつろな眼をして、ふるさと東欧の民謡を口ずさみながら、ピストンを続けていた。その時、気温は45℃を示していた。記録的な猛暑にボケてしまったのか。

              ウーララ
              ウーララ

        「離せや、ワンワン、痛い痛い。もう、ええっちゅうねん。
         お前だけイキッとったら、しばくぞ。」

手淫を止めないザトペックに
人間DOGは顔をしかめて
迷惑そうに吼えた

        「あかん、こいつの眼、いってしもうとるで。」

人間変電所ブルーノ・サンマルチノの声は、恐怖に震えていた

              ウーララ
              ウーララ

         「やばいで、このオッサン、暴走モードや。」

       普段は冷静な人間風車ビル・ロビンソンが叫んでいた


人間機関車
エミール・ザトペック
寡黙な仕事人にして
ふるさと東欧を愛する
いぶし銀のような男

                                  だが反面
                       最新鋭ユニット「四人囃子」の中
                         唯一前時代的なエッセンスを
                       持ち合わせた危険部位でもあった

      「痛い!痛い!チンコ溶ける、チンコ溶ける、キャンキャン。」

犬江親兵衛が泣き叫んでいる
ご自慢の燃焼棒の先から
イカ臭い冷却液をいくら
いくら放出しても・・・
瞬時に気化してしまい
全くうまく行かない
手で撥ね退けるなど論外
既に熱すぎて手遅れであった

         「あかん、オッサンがメルトダウンや。」

              ウーララ
              ウーララ

赤熱したザトペックは、                 
人間DOGのペニスを
ジュンと蒸発させると             
自らもその溶融点を超え
地響きを上げながら
仲間達や周辺の施設を
否応なく引き摺り込み                       
土中にめりこんで行った                  

                              ドドドドドドドッ

                 ウーララ
                ウーララララ

ズボズボズボズボ

              ギャーギャー




           「ブラジルの人、聞こえますか。
           今から、えげつないのが行くでぇ。」


受け狙いの警備員が
電動メガホンを
MAXパワーにして
直径約200mにも達し
依然成長を続けている
巨大な穴に向かって
ギャグを発し続けている

                             この様な局面でさえ
                             笑いを取ろうとする
                               激しくも悲しい
                             浪花のど根性を見た

           グアシャグアシャグアシャアー

 大地は激しく揺れ、大阪電力の全施設、及びに周辺市街地は紅蓮の炎に包まれていた。天空ではJR大阪駅の北ヤードから延びている、軌道エレベーター「ジャック」が暴風に煽られた凧紐の様に、右に左に突っ張らかり、今にも落下してきそうな、嫌な感じになっている。

    サイレンが鳴り響く!ああ終に大阪都最後の日がやって来たのか?




              一部始終を安全な
              VIP席で眺めていた
              大阪電力社長ハシモト氏が
              葉巻を燻らせていると・・・
              場違いな童謡「ふるさと」の
              携帯着メロが流れ出した
              関東電力イシハラ社長からだ

「イシちゃん、電話ありがとう。そっちも大変な時なのに、心配かけてすまないね。何、平気だよ、地球が滅亡でもしない限り、俺たちの栄華に翳りはない。なんてね。」

              更にイシハラ社長から今回の
              ブラジリアン シンドロームの件
              マスコミ対策について聞かれると
              余裕のハシモト氏はこう語った

「放って置けばいいよ。奴ら、ちょっと大袈裟だな。ブラジルは日本の正反対だよ、当社のサイボーグ社員、本当に行くかな?行くかな?とりあえず、このまま地球の中心まで行くとして、彼、それからどうなっちゃうのかな?面白い、俄然、物理学的に興味があるね。そうは思わない、ねぇ、イシちゃん、アハアハハハハ。」



     窓の外では、暗雲が立ち込めて、凄まじい雷鳴が鳴り響いている。
    エミールの開けた穴は既に1キロにも及び、赤黒いマグマを噴出していた。

              イシハラ氏との電話を終えた
              我らのハシモト氏は
              目の前の光景を見て

           「ちょっと、いい感じの地獄絵図じゃないの。」

              クククとうそぶいた後
              自家用の垂直離着陸機
              米軍海兵隊払い下げの
              オスプレイ改に乗って
              早々に現場を離れて行った



                F I N







テクニカルターム解説


○ 人間風車ビル・ロビンソン=いにしえのプロレスラー。必殺技 人間風車{ダブルアームスープレックス、前屈みの相手の前に立った体勢から相手の両腕をリバースフルネルソン(逆さ羽交い締め。相手の両腕を背面に「く」の字になるように自分の腕を絡めて曲げる。リバース・チキンウィングとも言う)にとり、やや腰を落とした後、相手を持ち上げながら後方へ反り返り、相手を背面から後方に叩きつける。}を駆使して日本プロレス界でも暴れまわっていた。

○ 人間変電所 ブルーノサンマルチノ=いにしえのプロレスラー。正しくは人間発電所。その無尽蔵のパワーからこのような異名を取った。

○ 人間機関車 エミールザトペック=チェコ出身。1952年ヘルシンキオリンピックで5000m、10000m、マラソンで金メダルを取り、一躍名をはせた。顔をしかめ、喘ぎながら走るスタイルから、人々は彼を人間機関車と呼んだ。

○ 人間DOG 犬江新兵衛=南総里見八犬伝の中心人物、姫を守り忠義を尽くす、正義の人。

○ イ キ る=大阪弁。ええかっこをして、変に頑張る事。
         イキっている人のことを特別に「イキリ。」とも言う。

○ プレアデス星系宇宙人=古代文明を地球にもたらしたと言われている宇宙人。
他にシリウス系、ケンタウロス系など、地球は、現在に至るまで、色色な宇宙人の介入を、受け続けて来たらしい。


眠れる森の痴女

  大ちゃん

CHAPTER 1
痴女と野獣
 
              ヨーロッパの某所

大気汚染による                          その間を縫って
酸性の雪を浴び続け                      一台のクール宅急便
立枯れた針葉樹の森は                    ヘッドライトはハイで
漆黒の闇を灰色に                       林道を飛ばしている
薄化粧していた

              飽きるほど長い間
              アクセルを踏み続けた
              ドライバーの目に
              やがて
              届け先である
              「城」が見えてきた

                                  城の車寄せで停車
                                  彼は素早い動きで
                               荷物を台車に乗せ運ぶと
                                 白い息を吐きながら
                                 ドアホンを鳴らした

             「宅急便です。クールで届いています。」


              しばらくすると
              ドアが開き
              全身毛だらけの
              野獣のような男が現れた

                                  男は大きな木箱を
                                 軽々と担ぎ上げると
                             再び城の中へと消えていった

             「ダンケシェーン。毎度おおきに。」

              城への配達は初めてなのに
              「毎度」などと軽口を叩く
              日本の関西人的なノリの
              運転手は足早に去って行った


城のインテリアは
貴族趣味で統一されている
まるでルキノ・ヴィスコンティの
幽霊でも漂っているようだ

              野獣はテーブルの上に
              「痴女の宅急便」と
              書かれた木箱を置いて
              無造作に板を割り始めた

見ると体格の良い                               野獣は
東アジア系の中年女が                       痴女を起こすために
全裸で豪快に鼾をかき                          説明書通りに
棺桶の様な木箱の中                          キスをしてみた
仰向けに収まっていた

              すると痴女は
              パッチリ目を覚まし
              木箱から飛び出すと
              野獣に手を回し
              激しく舌を入れてきた

         [おお、これが痴女か。トテモ良いものだな。」

              痴女のデリバリーサービスを
              初めて体験した野獣は
              夢見心地になった
                 
              ねちっこくベロベロと
              プレイを楽しむ痴女と野獣
              お互いの歯槽膿漏の血膿すら
              残らず吸い上げた挙句
              急にキスを止めると・・・


CHAPTER 2
東洋の痴女


              痴女は野獣の股の間の
              鬱蒼と生えた
              毛をかき分けて
              そそり立つ陽物に
              しゃぶりついた

腐らないはずの                           そんな異臭を放つ
カスピ海ヨーグルトが                     チンかすフォンデューを
それでもなお腐ったような                        おいしそうに
                                   舐め尽していた

              彼女の口の中はもう
              白いものが一杯に
              溢れかえっていて
              グチャグチャと
              泡を吹いていた

汚れていた                             これを見て痴女は
野獣のマラは                             野獣を押し倒し
見る見る                              胸に両手をつくと
殻を剥いた                             8段もある跳箱を
ライチの実のように                       飛び越すような姿勢で
瑞々しく                             足を大きく開脚した
艶やかになった

              そのまま狙いを定め
              黄金の蜜壷を
              ドスンと
              野獣の道祖神めがけて落とし
              騎上位でグラインドを始めた

            「うあああああ! 南無妙法蓮華経。」

東洋の御経を唱え
快楽に身悶える痴女は
鼻血を流している

              あれあれ?
              おやおや?

    (不思議、不思議、野獣はみるみる、美しい王子へと変身して行きました。)

薔薇の様に美しい王子
これまた美しい声で
          「ありがとう、痴女さん。おかげで元に戻れました。」
          感謝を述べたのだが・・・

                                    その時なぜか
                               王子に被さっていたのは
                                  人間ではなかった

              マウントポジションの
              いかついメスの大猿が
              突然無慈悲にも
              左右のパンチを
              王子に浴びせ始めたのだ

              ワン・ツー
              王子失神

              スリー・フォー
              王子昏睡

              ファイヴ・シックス
              王子死亡

              人外の野蛮な暴力の前
              ついに王子は
              帰らぬ人となってしまった

人肌の                                欲求不満なのか
ぬくもりが消えて行く                        不機嫌な顔をして
王子の華奢な身体に                      胸でドラミングをすると
不服を感じた大猿は                      王子の亡骸をつまみ上げ
ウンチングスタイルでの                       首を捻り脊髄ごと
交尾を止めて立ち上がった                    引っこ抜いてしまった

              ドアを蹴破ると
              葉の一枚も残っていない
              立ち枯れの森の中へ
              雄叫びを上げながら
              消え去って行った

              ウホウホウホォォォ


CHAPTER 3
奥様は痴女


              以上が
              私の母のプロフィールです

その後                          こちらレイクサイドホテルの
十月ほどたって                            フロント玄関で
私は生まれました                          小さくなった父の
                           シャレコウべ脊髄ステッキと共に
                                捨てられていたのです

              私としては
              誠意を持って
              包み隠さず全てを
              お話したつもりです


このお見合い
よろしければ前向きに
考えさせて下さい

                                   あれれ?待って
                                      ちょっと
                                 ちょっとどこ行くの
                                 あんた逃がさへんで

              レスリング女子超級
              元欧州チャンプの私
              走り去ろうとする
              男の首根っこを掴み
              頭上に持ち上げ
              ボディプレスで落とすと
              神速で馬乗りになった

              力が漲ってくる
              荒れ狂う私は
              無慈悲にも
              左右のパンチを
              男に浴びせかけた
               
              ワン・ツー
              見合い相手失神

              スリー・フォー
              見合い相手昏睡

              ファイヴ・シックス
              見合い相手死亡

                                          

「ふざけんなよ!若造。」                          そのとき
私は叫んだ                             ホテルのロビーの
四の五の言ってないで                     アンティックな大鏡には
黙って私と結婚したら良いんだ            怒髪天にも昇りそうなメスの大猿が

              こちらを向いて
              ガンを垂れていました

              ウッホホホホホー                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    


せせらぎ

  大ちゃん

 むかし人であった女の幽体が、やはりそのむかし宿と呼ばれていたこの廃墟から、離れられずに留まっている。全ての人はあまりにもあっけなく死に絶えてしまい、幽霊になる者とて稀で、彼女は孤独だった。

 葛などの雑草が生い茂るロビーの、ソファに佇み彼女は思いだしている。家族三人、この宿に旅行に来た日のことを。宿の傍の川で遊んでいた彼女の坊やが、「ママ、パパ、僕、虹色の魚を見つけたんだよ。」と叫んでいたことも。その日の夜は、興奮してなかなか眠れない坊やをまん中に、親子で川の字になり床に就いていた。 

 いつまでも止むことのない、せせらぎを聞きながら。

 人類のいなくなった世界、全てのものは美しさを取り戻している。彼女も早く、記憶などなくしてしまい、なにか光のようなものとひとつになればいいのだけど。


パパはフードル

  大ちゃん

嫁が若い男と逃げた。オッパイを弄るいたいけな息子を残して。年下の嫁に寄生していた、中年の俺は大ピンチ。早速ナマ保に頼りたいが、役所の奴らはどうも苦手だ。ええ!じゃ働けば良いって。今更この俺にどんな仕事が出来るって言うの?

「無理!」

家賃の滞納にキレた大屋が部屋の鍵を変え、今にも追い出しをかけて来る気配。とりあえず当面の軍資金が欲しいけど・・頼りになる親戚、友人、知人、誰一人イメージできない。もう闇金しか相手にしてくれないよ。BUT、それはそれで後がとても面倒だ。

「ギャーギャー。」

腹を減らした息子が、鬼のように泣いている。いくら必須なタンパク質とは言え、息子に息子をくわえさせて、男のミルクを飲ませるってわけにもいかず、本当に困った。ああ情けネエ、そこら辺の中坊の方が俺より金を持っている。

そんな時、ふと昔バイトしていた居酒屋で、先輩に聞いたある都市伝説を思い出した。人間危機に陥ちると、色色な知恵が生まれる。その内容は・・・・

「ホモビデオに出演したら、即金で50万円もらえるよ。」

と言うもの。藁にもすがる気持ちで、俺はこの伝説に賭けて見る事にした。早速新宿のエロビデオ店でリサーチした所、柳生企画という会社が「中年男優を急募」しているのがわかった。意を決し電話をした俺、すんなり面接にまで漕ぎ着けることが出来た。



柳生企画は赤羽の汚いペンシルビルにあった。俺は狭いエレベータに、ガキを載せたベビーカーを押し込むと、自らも隙間に納まり、3Fのボタンを押した。ピーン、扉が開くとそこはダイレクトに事務所で、撮影用の大きなベッドが置いてあった。総白髪のインテリ風な男と、ラガーマン系の筋骨男が、二人並んで立っており、紳士の方が挨拶してきた。

「お待ちしておりました、私は、当柳生企画代表、柳生劣情と申します。して、こちらの男がAD兼男優の柳生チョコ兵衛であります。」

目元涼しげな社長、淀みない口上には知性が溢れていた。反面チョコ兵衛はベビーカーに目をくれると、フンと鼻を鳴らした。見るからに感じの悪い男だ。

「さあでは早速、撮影に入りましょう。この服に着替えてください。」

え!今日は面接だけでは・・・なんか撮影とか言っている、まだ具体的なギャラの話もしてないし、俺は心臓がバクバクしだした。

「お互い、納期に追われるもの、すぐに金の欲しいもの、利害は一致しています。お話は早いに越した事がないのでは?当方ギャラは即金で30万円用意しています。」

社長の言う通りだった、それに30万あれば当座は何とか凌げる。俺は込み上げる胃酸を再び飲み込み、契約書にサインをして、プロダクションの用意した衣装に着替え始めていた。



ビデオのシナリオは
町工場の昼休み、野球に興ずる従業員の打ったボールが、敷地内から道路に飛び出し。某大企業の御曹司の運転する高級外車のボンネットに当たった。事故処理のため、御曹司の家に謝罪に出向いた工場長は示談の話を切り出したのだが・・・ムラムラしてきた御曹司に、突然レイプされてしまう。

大体こんな感じ。その工場長の役が、悲しいかなこの俺なのだ。心底アホらしかったがもうやるしか道はなかった。

イキナリ撮影が開始した、ACT1.工場長のレイプシーンだ。俺は御曹司役のチョコ兵衛に、スーツを破かれ、パンツを脱がされ、ベッドの上であわや犯されそうになった。その時、ベビーカーで寝ていた息子が急に目を覚まし、豪快に泣き出した・・撮影は中断してしまった。

「チッ、だからこんな子連れのじじい、使い物にならねえって、言ったんだよ。」

チョコ兵衛が舌打ちをした。

それは夢でも見ているようだった。社長は机に立掛けていた木刀を手に取ると、何の躊躇もなしにチョコ兵衛の顔面めがけ振り下ろしたのだ。

「パン、ビッシャャ〜。」

「ギャー。」

何と言うことだ、チョコ兵衛の左眼は、爆ぜて潰れてしまった。ベッドにうずくまる彼を上から見下ろしながら、社長はこう叫んでいた。

「たわけが。心は、魂はどこへ置き忘れた。最近のオノレは目に余る。調子こいてたら殺すぞ!」

「父上す、すみません。チョコが、チョコ兵衛が、悪うございました。奢り高ぶっておりました。」

「今頃わかってどうする?お前も柳生なら、一族の跡取りなら、最初からちゃんとしないか。」

ガス ガス。社長は木刀でチョコ兵衛の背中を連打した。

「父上、父上お許しを、何卒お許しを。」

 「こちらのパパさんはなぁ、子供のミルク代を稼ぐ為に、身体を張ってここまで来られたのだ。ノンケのしかも初老の男が、ケツの穴をさらす切ない気持ちが、お前にはわからんのか。」

 手で顔を覆うチョコ兵衛の指の隙間からは、幾筋も血が流れていた。

「おおお、すいません、パパさんすんません。この片目に免じて、もう一度、もう一度だけ撮影をさせて下さい。」

「やりましょう、やりましょうよ柳生さん!」

不思議だ。この光景を見て、俺は強い心意気を感じ始めていた。

「お前も柳生なら見事、止血してみよ。」

社長は自ら〆ていた、白い木綿のふんどしを掴み取ると、チョコ兵衛の顔面に投げつけた。彼はキュキュッとそれで眼の周りを縛ったのだが、みるみる赤フンに変わってしまった。しかし凄いものだ、精神力で流血が少しましになったように見える。とは言え、ベッドの上は血だらけ、泣き叫ぶ我が子、ゾンビ顔のチョコ兵衛、それらの悪条件にもかかわらず撮影は非情にも再開した。

 「音声は無しで、そんなもの後から何とでもなる。」

社長は声が上ずっていた

俺は息子を抱きしめると、自らの乳首をくわえさせ、そのまま血染めのベッドに仰向けに倒れこみ股を広げた。

「どうぞ柳生さん、我ら親子に構わず、早く、早く、始めちゃって下さい。」

「そうだ、チョコ兵衛、覆いかぶさって交尾しろ。子供は後でモザイクでも画けて、消せば済む事じゃないか。見せてみろ、心のファック、魂のファックを。」

シーツに溜まった血を指に絡めて、俺の肛門になすりつけると、チョコ兵衛は怒張したチョモランマをぐいぐいと俺の中に押し込んで来た。

 「痛い!痛い!」

ケツの中に漂白剤をぶち込まれた気分だ。涙が溢れてくる。だけどチョコ兵衛は片目を失ってまで頑張ってくれているんだ。ここで踏ん張らないで、どうすると言うのだ「俺!」

ピストンを続ける内に、再び出血の始まったチョコ兵衛は貧血で気絶しそうになった。俺は彼の肩の逞しい筋肉に噛み付いた。

「起きてくれチョコ兵衛。」

ボロ差し歯をグラグラにして、力一杯に噛み締めていた

「パパさん、ありがとう。」

意識を取り戻した、瀕死のチョコ兵衛の、男らしい感謝の気持ちを俺は体中で受け止めていた。そりゃ痛いさ、痛くて堪らない。だけど俺達、お互いがお互いの気持ちを慈しみ合っている。これぞ心の・魂の性技、柳生活人姦に違いないのだ。

「パパさん、往く。往く。」

チョコ兵衛が喘ぎだした。

「今だ、真空膣外射精!(膣ではない)」

社長が叫んでいる。柳生劣情、彼こそは正真正銘のファックの鬼だ。

チョコ兵衛のうまい棒が、俺のお尻からずり抜けた。俺は目の前で揺れているそれを、両の掌でハッシと挟み止めた。

「おお、神技・真剣まら刃取り。」

劣情が叫んだ次の瞬間、俺はチョコ兵衛の迸る白濁液を、一滴残さず顔面で受け止めていた。アクションが終わった後、俺も息子もチョコ兵衛も、疲れ果ててそのままぐっすりと眠ってしまった。



目覚めると事務所には、俺達親子だけが残っていた。柳生軍団はあの状態で、次の撮影に出かけたとでも言うのか?脇机の上に置き手紙があった、読んでみると。

「パパさん、今日は大変な撮影をこなして頂き、誠にありがとう御座います。チョコ兵衛の慢心を諌めることができ、父としてこれ以上の喜びはありません。御礼の金子を宜しくお納めいただきますよう、切に願います。あなたがた親子に幸多き事を、心より望んでおります。柳生劣情 拝。」

いつの間にか換えられていた、清潔なシーツと枕の間に、札束でふくれた、長封筒が差し込んであった。

「100万円ある!」

俺は泣いた、お尻が痛かったからじゃない。誰かの頑張りが誰かを幸せにする、永劫回帰の幸せリング。こんな俺にも、出来る事があったのだ。

「カサカサ。」

お金を抜き取った後の封筒を逆さまにすると、チリチリにカールしたヘアーが数本落ちてきた。これぞマニア垂涎のDNA「柳生一族の陰毛」に相違ない。家宝にせねばなるまい。

「パパさん、パパさん。」

おお息子よ、大五郎よ、初めて呼んでくれたね。



エピローグ

劣情氏はお金以外にも、新宿の男性専科ソープ「冥府魔道」への紹介状と、さらに男娼として生きていく上でのマストアイテム、「柳生武ゲイ帳」をも用意してくれていた。さっそく、店を訪ねた俺は、ゲイ法指南役=柳生一族の絶大なる威光のおかげで、無事就職する事ができた。源氏名はオガミIKKOに決定。この時から俺の風俗アイドル(フードル)としてのサクセスストーリーが始まった。

俺たちの出演した例のビデオは、異様なカルトムービーとして、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でレッドメロン賞を受賞し、世界中のホラー映画通の知る所となった。片目を潰された、血染めのゾンビが、華奢な初老の男を犯す。二人の間に挟まって、何やらモザイクで隠された小柄な生命体が蠢いている。このショッキング映像が、専門家の間でフォースカインド(宇宙人との第四種接近遭遇)のドキュメントではないかと噂される様になっていたのだ。あのビデオの男優が店に出ている!と、ネット上で話題沸騰。恐いもの見たさのゲストが殺到して、俺の予約は、2年先までブッキングされていた。

武ゲイ帳を、隅から隅まで暗記した俺は、柳生新カマ流の師範となり、神レベルの性技でお客様を昇天させていた。さらに、グレイ型宇宙人の着ぐるみを着て、未来的なベビーカーに乗った息子が、絶妙のタイミングで発射するバイブミサイル「胴たぬき」は、お客様を狂喜乱舞させ、半端ないリピーター率を産み出す原動力となっていた。

そんな中、どこで噂を聞いてきたのか、嫁が俺たちの元へ帰ってきた。ダイブ苦労したらしい、体のいたるところにアザがあった。俺はそんな嫁を無条件に受け入れてやった。大五郎も本物のオッパイが吸えて嬉しそうだったが、そこには別れた男の名前のタトゥーが刻まれていた・・・まあ、いいか。

俺たちは、ファミリーの誰もが風俗を気軽に楽しめる、家族姦割引と言うオプションを始めたのだが、これがまた大ヒットし、一躍、スマホのCMにも出演するほどの人気者になっていた。今年の夏は家族で、24時間テレビのチャリティーマラソンを走る事も決まっている。

人の世は、重き荷を負うて、長い坂道を歩くが如し。辛い事、悲しい事、数え上げればキリがない。だけど俺たち、苦難に(負けないで)立ち向かうことを誓い合った。さあ、サクラ吹雪の(サライ)の空をめざし、ベビーカーを押しながら登っていこうよ、この栄光の春の坂道を。


ある天使の思ひ出に・・・



参考文献
■柳生武芸帳          五味康祐
■春の坂道           山岡荘八
■子連れ狼           原作 小池一夫 作画 小島剛夕
■コワーイAV撮影現場の話    村西とおる


テクニカルターム解説

■グレイ型宇宙人                           
 身長は小柄な人間ほどで、頭部は大きく灰色の肌を持つ。その顔は大きな黒い目(細く釣りあがった目というものも多い)に、鼻の穴と小さな口が特徴。河童などの妖怪も実はグレイではないかと言われている。

■ゆうばり国際ファンタスティック映画祭
 1990年より北海道タ張市で誕生したゆうばり国際ファンタスティック映画祭(ゆうばりファンタ)は、特別招待作品、国際コンペティション、オマージュ上映、特別企画など、ハリウッド大作から邦画、インディーズ作品まで幅広く上映作品が集められ、 秋の東京国際映画祭と並んで映画界の春のお祭りとして、日本国内でも有数の歴史ある映画祭のひとつになった。  ※レッドメロン賞は私の作ったフェイク。      


風の谷カンツリークラブ

  大ちゃん

風の谷カンツリークラブ、OUTコース最終9番、谷越えのロング、500ヤードパー5。吹き止まぬフォローの強風がプレイヤーにビッグドライブを約束する、ゴルフ場きっての名物ホールだった。

ライバルとの熾烈な受注合戦を展開するわが社は、不屈の営業努力の結果、遂に最終ユーザーとの接待ゴルフを実現させるに至っていた。未だ先行き不透明なこの戦いの中、敵方に大きく水を開けるスーパーチャンスが到来していた。

今回の取引は、当社の一年間の売上を一気に達成してしまうビッグプロジェクトであり、全社一丸となって結果を出さなければならない最優先事項であった。

取締役会の総意としてホスト役には営業部の接待スペシャリスト、そのふくよかな体と温厚な性格からついた愛称「仏」の部長が指名された。そして喜ぶべき事に、部長のたっての希望で、なんとこの僕がアシスタントに推挙されていたのだった。

「慌てん坊将軍」などとOLどもに、うっすら馬鹿にされていたこの僕も、今回の大抜擢で他の若手社員を出し抜き、確実に出世のラインに乗った感触があった。ただ、そんなにゴルフも上手くない僕が何故に?きっと普段からのえげつないヨイショが部長に認められていたのだろう。

なかなかエントリーのできない名門コースでのプレイに、相手先の社長と専務はすこぶる上機嫌だった。更に加えて部長の接待も、痒い所に手が届きまくる感じで、いつにも増して冴え渡っていた。一方、僕はと言えば、ここ最終ホールまではなんとか、無難にヨイショをこなしていたのだが・・・今にして思うと、少し油断があったのかもしれない。


急遽ゴルフ場に予約を捻じ込んでもらった歪が、最終ホールにやって来ていた。コースが混んで後続が追いついてきたのだ。うしろのパーティーは、見るからに柄の悪そうな連中だった。その上、メートルもあがっていて、プチ酩酊状態でもあった。

「早よ打てや!遅かったら牛でもするで?」

奴らは、何やかやと僕達をはやし立ててきた。そもそも前の組が詰まっているのに、早くしろなどと物理的に無理なのだ。それどころか、見下げ果てたことに、年配のキャディーさんの制服を指で突付いて、

「キャディーちゃんのピーナッツ、ちゅんちゅん。」

などと乳首の当てっこをする者さえいた。

一番偉そうなジジイなどは、そこら辺でおおっぴらに立小便を始めだし、ううぅなどと唸リ声を上げて悦に入っていた。不快感を隠しきれない僕と眼が合うと。

「なんじゃワレ!メンチ切っとったら、しばきたおすぞボケ。ション便かけたろか?」

ああ、何をか言わんだ、治外法権の無礼講状態。こんな輩は無視するに限る。

やっと前の組がボールの届かない距離まで離れて行き、コースの見張り番が白旗を揚げた。打っても良いとの合図なのだ。オナーさんの社長がティーショットのアドレスに入った。強風のために帽子を外した社長は、七三わけのヘアスタイルをやけに気にしながら、何度もお尻ばかり振って一向に打とうとしなかった。業を煮やした立小便ジジイは大あくびの後で、

「おっさん!遅延行為で2ペナルティーや。わしと順番変われ、このウスノロ。」

「まあ、まあ・・せっかくの楽しいゴルフなんですから、しばしお待ちを、ねっ!」

温厚な僕の上司、「仏」の部長がクネクネッと女形のまねをしてウィンクをし、その場の雰囲気を和ましている間も、何故か社長はショットが打てないでいた、イップスにでも罹ったのだろうか?すると社長は僕に向かって・・・

「・・・君、風が、風が、頼むよ。」

闘志を内に秘めたような低い声で訴えてきた。なあんだ、そう言う事か、社長はとびきりのフォローの風を待っていたんだ。ホント欲張りな人だよ、2オン狙いなんだね。良し良し、僕は人差し指を唾で濡らすと、頭上高く掲げた、感じるよ、感じる、台風級の風がすぐそこまで来ている。あっ、部長もウィンクしている、このタイミングで間違いなしだ。僕は迷わず叫んだ。

「社長、今です、GO!」

ヨッシャァッ、掛け声一発、物凄い突風と同時についに社長はスゥイングした。

「社長、ナイスショット!」

エグイほどのフォローの風に、谷底からの上昇気流も加味され、社長の渾身の一打が?黒くて円盤状の一打が?回転しながらぐんぐん距離を伸ばして行った。あれれ、肝心のボールはティーに残っている。ジャスタ モーメント!あんたのそれ、どう見ても空振りやないの?

「グウヒャヒャヒャヒャヒャ、あれ見い、ズラがぶっ飛んで行くで!まるでUFOや、それともフリスビーか?」ボスジジイの遠慮を知らない下品な笑いが、波のようにティーグラウンド周辺を侵食して行った。しまった、正反対だった、社長は風が気になってショットが打てなかったんだ!それなのに僕は僕は、わざわざ風がピークの時に、GOサインを出してしまった。

哀れ、社長はもはやツルッパゲを隠そうともせず、片膝をついてうつむいていた。泣いているのだろうか?頭皮がまっ赤っかだ。僅かに残った、襟足の貧弱な毛が申しわけなさげに風にそよいでいた。

相手先の専務は怒り狂っている・・振りをして、笑いを噛み殺しながら僕を睨んでいた。下品軍団にキャディーまでもが、この世の終わりのように、ひきつり笑いの激しい渦の中に飲み込まれていた。僕はと言えば、極度のプレッシャーから体全体が冷たくなって、もう気絶しそうだったんだ。

一つだけ確かな事は、会社の面目は丸つぶれ、今回の取引は大失敗、ザッツオールって事だ。しかも、責任はこの僕にあるような嫌な気分が止まらない。だけど、部長だって、ウィンクなんかして、イケイケだったじゃないか。そうだよ、僕だけが悪いんじゃない、死なばもろともだ、部長も絶対巻き込んでやる。こんな風に自己保身ばかりを考えていた、女々しくて、とてもちっぽけな僕であった。


その時、部長は、仏のような部長は、そそと静かにそして優雅に、うなだれる社長の許に近づくと、自分の頭に両手をかざして、

「社長、ナイス・スウィングです。さあ練習はOK、本番行ってみましょうか?」

ごく自然に帽子でも脱ぐようにズラを取り外すと、そのまま社長の頭に被せた。「パチン!」今度はちょっとやそっとでは外れないだろう、強固なグリップ音を残して。新型ではあったが、サイズも色合いも飛んで行ってしまったものと瓜二つだった。

笑い声は止み、あたりは水を打ったように静かになった。戴冠式のような、神々しい場面だった。自らのズラを与えて、社長の苦痛を取り払うなど、僕には絶対に出来ない、いや、同じズラ同志だからこそ出来た離れ業と言えよう。鉛色の雲の切れ間から後光が差し込んで、部長のハゲを照らしていた。

すると突然、誰彼とも無く拍手をする音が聞こえ出し、しばらく続いた後、ボスジジイがゆっくりと語りだした。

「今までの我々の振る舞い、誠に申し訳ありません。部長さん、良いものを見せてもらいました。自分を犠牲にしてまで、顧客のプライドを死守する、その美しい心、まさに営業の鏡や!」

部長はまるで何も無かったかのように、

「さて、何のことでございましょう。さあさあ、会長様も皆様もプレイに戻ろうではないですか?ご挨拶が遅れまして誠に申し訳御座いません、ですが、せっかくの会長様ご一行のお忍びでとの御意向に、(ここ洒落で御座いますよ。)水を差すのもいかがなものかと存じまして・・」

「おおお!君は、わしの事を知っていたのか。長らく第一線を退いておったから、全く気付かれていないと思うておったが。部長さん!わしは君に惚れたよ。今回の取引は君の会社に決まりや。おい、社長、何か異論があるかえ?」

「会長様、御意。仰せのままに!」

この会社のキーマンはズラ社長にあらず、立小便ジジイだったのだ。こっそりと取り巻きを連れて、僕達の接待振りを視察していたらしい。最悪の出来事が、部長の行った、たった一つの善行のせいで、最高の結果へと昇華して行った。しかし・・善行?

ここで僕は、ふと今日二度目の、凍えてしまうようなある思いを心に巡らしていた。


部長はもしかすると、相手先の社長がズラを愛用している事や、会長一行がお忍びでこの接待を視察しに来る事すらも、事前に調査済みだったのではあるまいか?そして風の強いこの名物ホール、あのように旧型で軽量なズラでは、高い確率で事故が起きてしまうとも計算していたのではなかったのか?

ゴルフ場が最終9番で混雑するだろう事を予想し、わざと関係者全員が一堂に立ち合うような状況を創った上で、あのインパクトある「ズラ飛ばし」を演出した。そしてその後、神仏のごとき善行「ズラ移し」を見せ付け、まんまと会長を始めとする、皆を誑かしてしまったのだ。

僕のような若手を相棒に選んだのも、あの局面で社長に対し、うっかり誤ったサインを出す事を期待しての、目に見えない仕掛けの一部だったのでは・・・

結局、僕達は全員、部長の書いたシナリオの上で、恥ずかしいダンスを踊らされていただけではなかったのか?

熱視線を察知したのか、部長はくるりと振り返って、茶目っ気たっぷりにウィンクをした。僕達を覆っていた黒雲はどこかへと立ち去り、燃えるような夕焼けが、ゴルフ場の紅葉の色とも溶け合い、部長の頭を血糊の様に染め上げていた。僕は部長がハゲた悪魔に見えたのと同時に、心底、味方で良かったとも・・・

そんな秋の日の黄昏時、僕達コンビによる歴史的大勝利の瞬間であった。


                 END






ドクターDのゴルフ用語解説   

YES!ドクターDがオッサンのゴルフ用語を加齢に解説するコーナーですYO。


○ ロングコース・パー5    普通、ゴルフ場はOUTコースとINコースに分かれていて、それぞれ9ホールずつ合計18ホールで全後半を通じてプレイをすることになっている。各コースにはパー4のミドルホールが5つ、パー3のショートホールが2つ、パー5のロングコースが2つ配置されている事が多い。パーとは、この打数で打ったらOKですよと言う目安のようなもの。だから、パー数が多いと距離が長く、少ないと距離が短いと言う訳なのだ。なお、何故だかは分からないが、朝はINコースの10番からスタートして、昼からはOUTコースの1番からスタートする事が多い。ゴルフ発祥の地スコットランドでの慣わしのようである。

○ メートルが上がる      これは直接にはゴルフと関係が無いのだが、良く使われる、オッサン用語なので是非マスターして欲しい。会社のコンペなどで、前半が終了した場合、オッサン達はランチを食べるのだが、この時に鬼のように酒を飲んでしまい、へべれけになって午後からのプレイがままならない者が続出する。このような状況を「メートルが上がる。」と言う。メートルとは酒量メーターのドイツ語的発音ではないかと考えられる。

○ メンチを切る        関東で言う所の、ガンを垂れる・・に相当する大阪弁。厳しい眼をして、相手を睨みつける事。ゴルフ場では、この行為がきっかけでオッサン同士による激しい喧嘩などのトラブルが発生する事が多々ある。

○ オナーさん         ゴルフでは、その一つ前のホールで一番成績の良かった者が、次のホールで一番先にショットを打つことになっている。そしてそのプレイヤーのことを、オナーさんと呼ぶ。オナー=名誉、が由来ではないだろうか?

○ イップス          オッサンが、いいショットを打ちたいとか、一発でパットを決めたいとか、限界を超えて必死になった場合に、金縛りのように体が全く動かなくなってしまう状態。一応心理学用語のようだ。ドクターDも実際に、イップスに陥った上司の代理で短いパットを打って、シレッと外してしまい、後で怒られたと言う、理不尽な体験をした事がある。


アニマル パスウエイ

  大ちゃん

5大陸90ヶ国を2年にわたり
ノーブラで旅をしました
グループ痴漢や
強姦未遂や
集団強盗などの
様々な困難を乗り越えながら

明らか乳首の立っている私
Tシャツもブラも同じ事
ノーブラのほうが自然なんです
それに暑苦しいのがとても嫌で
適度に涼しいのが大好きなの
ブラジャーをつけた日本人女性の
優雅な印象なんてクソ喰らえだわ
私は筋肉ガテン系
完璧な肉食女子なの
昨日の晩も行きずりの中国人とSEXした

学生時代はレズビアンでした
年下のパートナーが教えてくれた百合の喜び
本当に燃えていた
ヤバイとは全然思わなかった
別れた時は極度の鬱になった
心にいつもにわか雨が降っていたわね
何か嫌な感じの雨がね
精神に変調をきたして
微妙な部分および頭が
かゆくてしかたなかった
そこで対症療法として
ヒサロで肌を焼きまくったの
かゆみがしっかり止まった後で
おっぱいまで真っ黒になった私は
このノーブラ旅行に出たってわけ:

最初に旅したインドでは
列車の中で痴漢に遭遇した
次から次に100人に痴漢された
身体も心も分裂しそうだった
胸がみみず腫れになる「拷問列車」
私はとっても恐ろしかった
それに虚しかった
インドの話には更に続きがあるの
痴漢集団から避難できずに
為すがままになっていると
わたし我慢できずにウンコをもらした
車内に悪臭が立ち込めたのよ
むせ返る暑さの中で
乗車率500%のその電車の
私のそばだけ空きが出来ていたわ
結構良い教訓だった
それからは電車に乗るときは必ず
ウンコの香水をふり掛けているの
セクシュアル・ハラスメント防止には
ある意味効果覿面だった
地獄のような幸運な経験だったわね

身体がたいして大きくない私は
アフリカではモテなかったな
あそこで何よりも評価されるのは
ズバリ体の厚みなの
暗闇で強姦されそうになったけど
「なんだ、ジャップ、薄すぎるよお前!」
なんて相手にしてもらえなかった
勝手に襲っといてからのダメだし・・
わたしムカつきが止まらなかったの

中東では強盗団に無理やり入団させられた
主にVIP狙いのストーカーとして働きました
中東の人々の性格は一直線だから
ストーキングも命がけだった
猛烈にわたしから逃げようとしたけど
オリンピック選手並みの運動神経で
24時間密着でクレーマー攻撃をした
最後にはわたしに全財産を渡して
アメリカに逃げて行ったわ
その後強盗団の連中の裏切りに会い
お金を全部むしり取られたっけ
良い思い出だわ

色んなステップを踏んで
今日のわたしが生きている
日本に帰ってきてからも
もちろんノーブラ
女一匹
行く道を行く
これからどんなことが待ち受けているのか
とってもワクワクしているの





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参考文献 「ブラを捨て、旅に出よう。」       歩(あゆむ)ゆりこ著


鎌倉 縁切り寺

  大ちゃん

紫陽花が長い雨を腐敗させていた
6月の暗い休日
僕は母と鎌倉を歩いていた
有名な縁切り寺を目指して

放蕩を重ねた父のせいで
僕たち家族は離散していたのだが
未だに借金でだけは繋がっていた
ねじれた腐れ縁を断ち切るために
そぼ降る雨の中をうつむいて
二人ざくざくと歩いていた

老境ながら住み込み家政婦をして
つらい生計を立てていた母
そんな彼女に楽してもらう努力もせず
あの頃の僕は会社の独身寮に入り
部屋と工場の往復だけの
無為な日々を過ごしていた

僕は人生を頑張らなくても良かった
だって父の借金を返していたのだから
体たらくであっても良い理由
自分の将来と向き合わない理由
あの部屋は格好の隠れ蓑だった

母と違い保証人ではなかった僕
法律的には返済の義務を負わなかったけど
他に建設的な何かを行なう元気もなく
毎月きっちりと借金を返す事だけが
生きている証しみたいな気がしていた

母は腑抜けた僕の態度に
なんとなく気付いたのか
「縁切り寺に行こう。」
出し抜けに電話をしてきて
「あの幸福破壊魔との悪縁を切ってしまおう。」
かなり息巻いていた

こんな経緯で無様な二人は
本当に久しぶりに会って
雨の中を黙ってその寺を目指していた

ようやく目的地に到達した僕達
寺門を潜ると大きな壷があり
灰に刺さった線香からの煙が
雨に当たり空気に溶け込んでいた
そこはどこの観光地にもあるような
代わり映えのしない普通の寺だった

迷うことなく賽銭を掴み
箱に投げ入れようとした僕に
母は「待って。」
ものすごい顔でこちらを見た
母はそれきり何も言わなかったが
ずっと幼子のように唇を突き出していた

母の仕草などにはもう
何も感じていなかった僕は
ワンコインを惜しみなく投げ
縄を揺らし鈴を鳴らした
そしておざなりに
「縁を切ってください。」
心を込めずにお祈りした

その後の流れでホイと
母にも賽銭を渡してやったが
彼女はもじもじしていて
なかなか投げようとしなかった
何を躊躇しているんだろう
自分で言い出したことなのに

まあ今に始まった事ではない
母はいつもこんな感じだ
肝心な局面ではドMになる
赤鬼みたいな父とは
食う者と食われる者の関係
ホント良いコンビだったね
どうでもいいのだけど
父に恫喝されていた
母はとても醜かった

そしてそんな時はいつも
傍らで泣いてばかりいた僕も
他人から見ればやはり
さぞ醜かったのだろう

目的を果たし寺を背にすると
僕は来た道を駅へと向かった
母も後を歩いていたようだった
花の無い雨の小道でさえも
紫陽花の匂いがしていたから

紫陽花は母の化粧の匂い
いつも嫌な香りで
僕を滅入らせてしまう

その後横浜で中華を食べたのだが
丸いテーブルに母がいたのかどうか
今となっては良く思い出せない

最近ふと考える
あの日から縁が切れてしまったのは
そう
父とではないんじゃないかと


大国の面子

  大ちゃん

昨日全くいつものように
ポエム勢いランキングをROMっていたら
炎のようなセンテンスに出合った

「お前はこの時代の坂本竜馬になれ。」

あの方がそう書き込まれたのだ

「中国の面子をなによりにし、尖閣諸島の領有権を放棄し、
世界に冠たる日中同盟を構築せよ。」

そんなことを目指せばわたくしは
1億の同胞から村八分にされ
とたん売国奴に堕してしまう
右翼系週刊誌にぼろくそに書かれるだろう

逡巡しているわたくしにあの方は

「天草四郎たれ!」

竜馬の次は四郎とな?
激しい時空の超え方ですな
キツイですわ
わたくしにそれは
ちょっとキツイですわ

・・・はっ

何を迷ってたんだろう
わたくしに反論する資格など
たとえばどこにでも・・・
ユーキャンでさえも売っていない

あの方がやれと仰るなら
単にやったらエエ話やないか
誰に何と言われようが
あの方について行くと
そう決めたわたくしじゃないか
弱い自分を克服しなきゃ

「今こそお前という種を、大陸に散布する時が来た。」

あありがとうございます

「そして咲かせよ!日中友好の黄色い大輪を。」

おお!ひまわり
やります
わたくしは
絶対にやりぬきます!


日が変わって次の日
わたくしは伊丹空港の
古くて狭いゲートをくぐり
南京行きの便に飛び乗っていた

一番キツイところから
このミッションを始めようと思う
「汝狭き門より入れ。」
とも言うではないか

13億の苗床にゴッドシード(神の種)を
いざ叫ばんかな

「汝の隣人を愛せよ!日中同盟万歳!」

文学極道

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