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作品 - 20120308_904_5927p

  • [佳]  北極 - 黒髪  (2012-03)

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北極

  黒髪

思い通りにならないことはたくさんあった
近所に住んでいた女の子に嫌われて、一人で遊ぶしかなかった
お弁当箱におにぎりを詰めて、小さな遠足をしたり
一人で石を壊して遊んでいた幼少期
「ねえ、ぼく、いつまでこうしているのかな」
年齢相応に甘えた僕はそんな疑問を口にした
お母さんがいなかったから北極のペンギンに聞いたけど、わからない
ペンギンはよちよちと歩いた
寝起きにぐずぐずしていたある日曜日の教会の鐘の音が美しく思われた
靴を履いて礼拝に出かけよう
聖書朗読の間に着いて、結んで、開いて、神様一緒に踊ろう
と問いかけても
天使は絵の中で微笑んでいるだけです
これらの日々の幸福の仕掛けを……わからないまま、僕は大きくなった
次々と崩れていく橋桁、心の支え
崩壊していく心、ひとりぼっちの
ああ、静かなこころよ、天使様
ある女の子に絶望的に恋した
その子の夢を見ていた
僕は手術室の助手
カンシ、開腹
成功だった、よかった
子供の頃の思い出の中のように、やはり何かがある
一度きりの全身麻酔のおかげで、炎に包まれてしまった僕のカラダはそれほど苦痛を生まなかった
プスプスと黒焦げになった僕は、ひどい臭いに包まれて
煙は廊下に充満した
やってきた親は泣いた
普通の暮らしを望んでいたということが頭をめぐる、僕はもう喋れない
思い出されることばかり、昨日の星屑に、なりたいと思ったのは、星々の輝きが綺麗で憧れたから
大人になって初めて星を美しいと思った、それは童心の思い出を呼び寄せた
青い空に最後の涙を流した
オーロラも今七色に輝いて
ペンギンの親子が静かに見やっている
確かに僕は聞いたのだ遠くで足音がシャリシャリいうのを
この世は夢なんかじゃないのさ
遠い、遠い夢さ