選出作品

作品 - 20111021_969_5628p

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Detritus

  yuko

帰り道を失くした
舳先が
おびき出される
夕暮れに
糖蜜色に光る髪
ひとさじの嘘を垂らして
とろとろと
煮詰められた瞼

擦り切れた文字を
めくる指先
かつて、
翼のない鳥たちが
打ち上げられた浜辺を
洗いあげるために
花は捨てられる

足首に
浮かび上がる痣の
かたちを
地図と呼んで
折りたたまれた襞の
ひとつひとつを
ほどいては
やわらかなたましいの
所在を探した

韻を踏み
しだく足元に
揺れたくさり
沈められた心臓を
覗きこむ
舟上で
喉元を引っ掻いていく
やさしい風に
胸がすく

水面に
閉じ込められたひかりで、
反射された夜、
岩上から
飛び去った白い鳥たちの
長い長い尾羽が
波間に消えていく、
紅い花弁の
ひとひらひとひらを
数えては千切って、
折り重なった
死骸が
海岸線を滅ぼしていく


波打ち際を
歩いていく影を
踏んだ
なにもかもを愛したかった
海底に沈む
錨の夢
死んだ秘密を孕んで
涙の
透明度が失われていく