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作品 - 20110426_234_5163p

  • [優]  砂丘 - 久石ソナ  (2011-04)

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砂丘

  久石ソナ

腕枕した腕が痺れ、
窓から零れる
白昼夢は
静かに蒸発する。
私の目を傷付ける、
雨の咲かない匂い。
石畳を白くさせながら、
引き裂きながら。

アジサイは
時間を知る半透明な羽を
なびかせて、
何色の叫びを
梅雨の暮れがあげていたか、
思いださせない。
熟れた結晶の
アスファルト、
片方の夜が
煮崩れる。

にがい眠気を
唆すとき、
粘膜に焦げ目をつけた
息吹さえ凍える。
手のひらで灰となり
街灯の下で消えゆく、
末枯れたアジサイを眺め。

やがて、
かたほうの夜は
未熟となる。
老いた雲間から、
腐敗を咀嚼した
花びらが
降り続けても。