濡れた足跡は
途中で途絶えて
あとから生まれるはずの
露骨を纏った冷たさに
西日を浴び終えた硝子細工の
颯爽と駆けてく反射光が
屈折を孕んで落ちてゆく
雨の香りはさまよっている。
傘を広げた空間の
さびしげな音に
紛れ込む純粋な色
正直に答える発音が
もどかしくて
薄いから
私の脊髄は固まって
動こうとしない。
寒さに揺さぶられ
鳥肌が立つ賑やかな駅のホームで
誰かが私に答える
折れた筋が眩しくて
音にならないのだ と
路面に落ちてゆく
大量の折れた傘は
轢かれるたびに
音を発して
焦げた匂いを
私の食道へと流し込む。
めまぐるしくも
あかるい夜に。
選出作品
作品 - 20101125_369_4856p
- [佳] プラットホーム最前列 - 久石ソナ (2010-11)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
プラットホーム最前列
久石ソナ
* メールアドレスは非公開