塩素の匂い。水面に、空が映り込んでいる。プールの底も、同時に、透けて見える。プールの底も、空も、同時に、空であって、プールの底であって、同時に、なくて、Clと書くのだよ、塩素は、と教わった。空、と、プールの底、と、塩素。
日射しが強く、プールには誰もいない。水面に映り込んだ空には、白い雲があり、雲がない部分には、プールの底の色をした空がある。空に、映り込んだ水面には、Clが映り込み、雲が、なくて、ぼくの、足が、水面に、空に、沈んで、水面と、空に。
空が溶けて、水面に、降り注いだ。遠くの雲にはClと書かれていて、Clと書かれた雲が、走り去った。ぼくは、足を空に浸して、ちょうど雲が足のところに来た時に、飛び込んだ。空の中は、日射しが乱反射したプールの中のように、輝き、Clの匂いがした。そしてプールの底に、足が着いた。
選出作品
作品 - 20101113_161_4824p
- [優] pool - 益子 (2010-11)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
pool
益子