選出作品

作品 - 20100806_539_4605p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


茶柱が立ったら

  ただならぬおと

祭もないのに賑わしい
街中が吉報を予感してる
茶柱が立った碧ぞらの下
行く店行く店 琴を奏でて
僕も案外ステップなんか踏んで

男の子も女の子も
学校で育てた朝顔の鉢を持ち帰る
途中で落花した赤紫のいくつかの首を
おじいさんが拾ってまわる
そして僕の足下にも
ひとつ
ふたつ
ポケットにしまう

すれちがう香水は
みんな女装してるみたいだな
でも擬人化したら藁人形のように
体中に釘を刺していた

川のほとりに座ってて
土左衛門に無視された僕を
駈けつけてきた藁人形たちが
街の病原だといって笑いやがる
最近は釘を持った人に
僕は何度も
叩かれている

僕が街を出ない訳じゃない
街が僕を出させなかった
出ていこうとした街を
次々に呑み込んじゃうから

でも今日なら
出ていける気がしてる
茶柱がぽろぽろ落ちてく道を
裸足でステップ踏んで
僕は金槌だけど
川だって渡れる気がする

郵便屋さんに会ったら言おう
もうすぐ街は元気になる
気になるあの娘に渡してやれよと
ポケットの朝顔とりだして
郵便屋さんに会ったら僕は言おう
もうすぐ街は元気になると

それから鉄橋を歩いてく僕に
彼は元気な声でこう返すだろう
達者でな! のんきな天使!
おいらもなんだかそんな気がするよ
おいらもなんだかそんな気がする