渋谷で
だれかを失ったひとびとが
「さよならに反対」
そう声をあげ
行進している
目を覚ます
こんな夢を、見た夜はもうねむれない
だれかや
なにかを失った者たちは
美しく品よく見えて
それに比べてどうだろう僕は
空を仰いでしまう
いつまでも酷く
とてもみにくいままで
そしてなにかを失った人々は
静かに、やわらかに死んでゆく
だれか
どうか教えてほしい
わたしはどんな風に
死んでゆけばいいのか
つまりどんな風に
生きてゆけばいいのか
おしえてほしい
深夜2時
コーラをなみなみ注いだコップを置き
ポテトチップスの袋を肌身はなさず持った
30はあるテレビのチャンネルをまわしつづける
このさびしい怪物へ
あのひとがくれた造花を手にとって
花占いをする
生きたい 生きたくない 生きたい
生きたくない 生きたくない 生きたくない
携帯できみの画像をだしてキスをする
きみに電話をかけようとしてやめる
きみを失ってしまいそうだと思う
理由なんかなく
つまりわたしのすべてを理由としながら
きみを失ってしまいそうだと思う
テレビに目を向けると
アニメのエンドロールがながれている
わたしはひとり
その音楽にあわせてくるくる廻る
くるくると
くるくる
廻りつづける
床に花が落ちている
花弁のない造花がおちていて
わたしはにっこり笑ってみる
「さよならに はんたい 」 と
静かにつぶやきながら
選出作品
作品 - 20100607_199_4453p
- [佳] さよならにはんたい - ぎんじょうかもめ (2010-06)
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さよならにはんたい
ぎんじょうかもめ