机 と 机 の間に波 を曳き
夕暮れ オフィスか ら泳ぎ出 た
白鳥の翼が 鴨や おしどり の 群れ から
離れる それが あなただ
誰 の 耳 にも羽ばたく 音
空が
またもや青い
冬晴れ
を残し
歩きながらしきりに振る
首は
地上を 見はるかす鳥
の仕組みに
どこか
しら 似る
その あなた
街のマップを
大股で突っ切る
あなたが歩く 道す じ
それは
航路
と呼 ぶ のにふさ わしく
地上の人は
皆
死ぬ
濃淡 ある 死の モザイク
を
あなたは
攻撃的に
孤立し
突っ切って
いく
語ろう、明日を。雲の背後を回る太陽が、雲の輪郭から光を放ち白い。僕は人に愛されない。ガスシリンダー式昇降チェアを低くセットする。事務机の前、背中を丸めている。A4の用紙に、鉄の罫線が格子を引く納品書。インク。その輝ける黒。黒の断片。断片がとりとめなく黄道に連なる。僕は空から零れて今ここにいる断片。きりきり苛まれている。だから明日を語る。服を着ているときばかりではない。裸のときにも明日を語る。裸で歴史の底に落ちている。そこは激しく乾燥しているので、僕は目を見開いたまま、決して腐敗しない。硬い底に、誰かの踵で頭を踏みつけられていたい、いつまでも。そういうことだ、明日を語るとは。
美し い とは ひとり で
生き 抜く こと か
そうか
ひとりで 生きるもの を 衛星
が
見て いる 翼ある ものの
生きざまを翼なき もの の
生きざま を
ホーロー の 白いなべぶた
のような空 を 白鳥 が たどるうちに
や や あ っ て
あなた も あなたのゆくえが
わから なく なる
僕 を
知ら なくなる 僕 も あなたを
ね
地上の希望 を 占 有 し
衛星が見ている
選出作品
作品 - 20100318_614_4261p
- [優] あなたは空の白鳥で、衛星があなたと僕を見ている - 右肩 (2010-03)
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あなたは空の白鳥で、衛星があなたと僕を見ている
右肩