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作品 - 20100129_187_4120p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


I Need It Now.

  ヒダリテ

さて、昨夜から首相官邸でじっくりことこと煮込まれる見通しであったとされる一見カレーに見えるとされたカレー状のカレーに含まれる見込みであったとされるある具材について包括的内容を盛り込むかについて、じっくりとした話し合いがもたれる見込みであったとされるある会合において、決定的に不足しているとされたある種のタマネギの一部が便宜的に不条理な井の頭公園内のゴミ箱で見つかった事件で、第一発見者の男性は我々の取材に対し、自分はゲイであると告白し賛否両論を巻き起こしています。
「一部の農家で行き遅れた娘たちの失踪騒ぎに便乗した悪質なファンの嫌がらせではないでしょうか。私はゲイです。」
通報をうけて真っ先に駆けつけた無関係な外国人はダイナミックに卒倒し、泥の中で美しく悶絶しながら、このように話しています。
「幼い頃テレビで見た美しい景色のヨーロッパを、いつか私も見に行きたいと思っていました。私もゲイです。」
事件で警察は調べを進める一方、この農家からさほど遠くないところで元気よく吠える犬の肛門に新鮮なタマネギがねじ込まれるという奇怪な事件が連続して起きており、これらの事件との関連性についても調べを進める一方、この犬に対する任意での事情聴取の際に、興奮して吠え続ける犬の尻の穴から飛び出してきた天津甘栗状の物体を誤って飲み込んだ捜査員の救命活動が行われる最中、犬の態度に腹を立てた近所の住民が無差別にチーズフォンデュを振る舞う騒ぎを起こし、直ちに別の捜査員に取り押さえられましたが、一命を取り留めた捜査員は、犬の尻の穴から飛び出してきた天津甘栗状の物体を指さし、このように語ったということです。
「気をつけろ、そいつは天津甘栗なんかじゃない。」

また神奈川県内を中心に架空の男性器を持ちかけ架空の顧客を募り、大量の架空の男性器を売りつけようとしたペルー人の二人組が昨夜めでたく結ばれました。普段からフルチンでいることが多かったというこの二人の男は、二年前謎の飛行物体に乗って空から飛来し、瞬く間に相撲界を席巻し、にんじんとジャガイモを使った卑猥な一発ギャグで一世を風靡した、と自画自賛気味に話していますが、近所ではたびたび異臭騒ぎを起こすなど、決して評判は良いものではなかったようです。趣味は金属バットの素振りと話す彼らは、深夜に庭先で金属バットをフルスイングしたり、近所の犬の肛門にタマネギをねじ込むなど、そのほほえましい姿がたびたび近所の住人に目撃されていますが、昨年、「だって牛が可愛そう」をスローガンに肉用牛の解放を訴えていた牛解放運動のリーダーが変死体で見つかった際も、二人そろって刃物と牛肉を持ってカメラの前に現れ、フルチンでインタビューを受けるなど、端から見れば本当に仲の良い双子のようだった、と語る近所の住民は、来年は孫が一年生になります、と、うれしそうに話しながら、顔をほころばせていた、ということです。

さて、その後行方不明となっていた例の犬が衆議院本会議場に闖入し、国会議員を巻き込んでの上へ下への大騒ぎとなり一斉にマスコミによって「晩秋の珍事、国会に犬乱入!」などと報じられた事は、よく知られていますが、今回の犬騒動で著しくその名誉を傷つけられたとして政府に対し多額の損害賠償を求める訴えを起こしていた杉並区に住むある主婦が事件当夜カレーを調理する際に使ったとされる刃渡り二十五センチの文化包丁によって切り取られたとされる被害者の一部が便宜的に不条理な井の頭公園内のゴミ箱で見つかったタマネギの一部と酷似していることなどから警察はこの主婦の元夫で現在はペットとしてこの家に住む男性の男性器に任意で事情を聞いたところ、この男性の男性器が裏筋で容疑を認める発言をしたことなどから警察はこの男性の男性器を逮捕し身柄を拘束したとの発表がなされました。以前からこの男性については、その男性器の所有権を巡って近所の住民との間でトラブルになるなど、男性は自身の男性器について深刻な悩みを抱えているようだったと言い、「いつもコレが自分のものではないような気がしていた」「時々俺に黙って居なくなることがある」「コレが誰の物かわからない」などと話すなど、自身が自身の陰茎とは無関係であると主張する発言を繰り返しているということですが、しかしその一方、他人の男性器については並々ならぬ関心を示しているとも言われ、護送中、捜査員の「(陰茎が)すぐにいるか?」との問いかけに対し「すぐにいる(陰茎が)」と即答するなど、積極的に取り調べに応じる姿勢を見せているということです。また取調室でも猥談に応じるなど次第にリラックスした様子を見せていると言い、ある捜査員の鼻について延々とその形状などについて独自の見解を述べるなど饒舌な一面も見せていますが、別の捜査員が容疑者に対し、一粒の豆を見せたとたん逆上し飛びかかってくるという凶暴な面も見せていると言われ、また、めがねをかけた捜査員に対して「日本に最初にめがねを伝えたのは、宣教師フランシスコ・ザビエルだ」などと知的な面を披露している最中にも、再び捜査員が豆を見せると、逆上し飛びかかってくる事などから、この男性の豆に対する異常な警戒心が、あのような凶行につながったのではないか? と見て、警察は何らかの形で何らかの豆がこの事件の背景にあるとして植物学的な見地や犯罪心理学の観点からも、性犯罪と豆との関係性を明らかにすることを急ぐ方針だ、ということです。

さて、一方これら一連の警察側の捜査に一部の「動物愛護団体」「性感染症予防団体」「全国剣道連盟」などが激しくこれに反発し、これが男性器の「人権侵害」に当たるとして、この男性の男性器の返還を要求するなど、事件は泥沼化の様相を見せていますが、中でも「全国剣道連盟」の反発は強く、彼らは警察による一連の捜査が「剣道的に正しくない」「剣道的に美しくない」「胴も小手もあったもんじゃない」などと、怒りをあらわにする一方、その発言の根拠には事件との明確な関連性がなく、下火になりつつある剣道人気に危機感を募らせた一部急進的な構成員による売名行為だとする意見も多く寄せられるなか、そもそもこの男性の男性器による単独犯行とする警察側の主張は一貫性を欠いたものであるという一部アダルトビデオ関係者などの証言もあり、さらにこの男性の男性器の責任能力にはなんら問題がないとする警察側の責任能力にそもそも問題があるのではないかという小学六年の男児からの投書が寄せられるに至り、警察署員全員の精神鑑定を求める動きも起こり今も内部捜査が続けられていますが、このように、この男性とこの男性の男性器には共犯関係はないとする見方が次第に強まるなか、さらにこの男性とこの男性の男性器のDNAが一致しない点など、不自然な点はあまりにも多く、これが警察による誤認逮捕という事態に至る可能性は極めて強く、そうなると、またしても「全国剣道連盟」の横やりが入るであろう事は必至であり、これら度重なる警察の不祥事に業を煮やした大臣は昨夜会見を開き、得意のパントマイムで「抜本的対策に乗り出す構え」を存分に見せつけた後、やがて「暗礁に乗り上げる」など次々に斬新なパントマイムを繰り出し取材陣を爆笑の渦に巻き込んだものの、二人組のペルー人男性との不適切な関係に追求が及ぶと、大臣は記者団の前で自らの玉袋のしわを丁寧に伸ばしながら、「遺憾の意を表明」する、という珍妙なパフォーマンスで記者たちの追及をかわすと、ひからびたタマネギの一部を残し会見場を後にしました。さて、いよいよ、この男性とこの男性の男性器が別人である可能性が濃厚になる中、今も首相官邸でじっくりことこと煮込まれているとされるカレーに含まれるとされる具材について、政府関係者は堅く口を閉ざしていますが、今やテロ組織化した「全国剣道連盟」は……。

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