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作品 - 20100111_790_4077p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


冬の果実

  藤本T

もはや運ばれるもののなくなった透明な冬の 
倉庫ではからみつくコトバの残骸が丹念にほ
どかれ錆びた銅や鉄線の軋む音が優しい切断
のうえをゆっくり歩いていく(導きの手はと
うに凍てついてしまったから 少しばかり重
力をおおく感じるの/だった 梢のきっさき
に刺さってしまったきみの額と 白い欲望と
のあいだで港に埋められた地図がいま燃えは
じめ 暗がりのなかで齧られた衝動は行く先
もなく砂の奥で鳴っているのだ 撓まないで。
そこかしこで固い指とポプラが順番に手折ら
れていく さかしまになった海辺に流れ着い
たきみの尺骨のなかではちいさくなった火種
がいまだ息をしており崩れ落ちた倉庫からわ
たしは解読できない手紙の束を拾い集め、ひ
とつひとつ冬の果実で燃していく 見定めら
れそこなった夜気の、海辺の街路で交差する
折れた指とポプラ ここにはもう夏百合がふ
たたび馨ることはなく遠さ、のあまりの短さ
に抗する術を探しあぐね 一杯の白い夜気を
わたしは暗い海へと返すのだった

   無数の
   碧い綿毛
   閉じて
   みどりの
   部屋の
   飛び交う
   穿たれた
   瞳
   強く
   撓まないで。
   手折れて
   発光し
   水面の
   溢れで
   数える
   固い
   指とポプラ
   すでに
   閉じられた
   部屋の
   奥では
   手折れて
   切断の
   地図、燃えている
   
   
    

文学極道

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