80デニールのタイツに
かすめる風は冷たくて
ガーゼのマスクが鼻を濡らす
少しかゆくて、赤いのはわかっていた
ここでは砂が崩れないから
消えない足跡を追う
しし座流星群を見逃していた
「冬だからまだそこらへんで星が流れるよ」
父の言葉を信じられるほど星を見たことがなかった
富士山のふもと
牛の臭いの道路は
空よりも暗闇だった
月から30cmの星がまたたき
そして流れなかった
帰り際、扇形の街を見る
そこに吹く風を感じられず
頭上で星が燃えているだろうから
いま、そこに帰る
足跡が並ぶ
黒ずむ葉が凍り
私のあとを
雪が降る
しんしんと
しんしんと
選出作品
作品 - 20091123_641_3969p
- [佳] 流星 - リリィ (2009-11)
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流星
リリィ