バスタブで生まれた水神をたらいの下に隠して育てていた
ある日かえって風呂場を開けると
弟が陰茎をしごいていて
水神が面白そうにそれを見つめていた
私は弟を叩きのめし
水神を抱いて一緒に家を出た
とうとうと流れる川
水神は大地の血管だと喜ぶ
私は草むらからのぞく髪の毛がはみ出したビニール袋に
ここにはいられないと水神の瞼を覆った
給湯室はかしましい女達の城
ここをオスとお湯が出るのだと教えると
いつまでもジャージャー垂れ流してる
バインダーに挟まれた「7:00」のメモ
記憶が吐き気にまみれる
公園は支配されている
水たまりにつきとばされブランコから隔絶される可哀相な水神
公衆トイレの濁った水
水神の居場所はどこにもない
不意に温かな雨が降る
ハレルヤ?
たちまち雨雲は逃げ
慌てて水神は後を追う
待って
待って
あたしは水神なの
一緒に連れて行ってよ
気がつけば海
雲はとうにムラサキに輝き
海にさえ還れず立ち尽くす
幼い背中
帰ろうかと呟くと
小さな娘はただ泣いた
選出作品
作品 - 20090805_915_3689p
- [佳] (無題) - 水 (2009-08)
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(無題)
水