選出作品

作品 - 20090403_823_3433p

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4月4日、その日の君は、

  はるらん


4月4日の土曜日、空から落下物が落ちてくるかもしれない、という
「落下物が落ちてくることはないと思う」ので、
皆さんはいつもどおり仕事をしたり、どうか普通でいてください、
とラジオのニュースが言っている
アメリちゃんは、まだまだ届かないわよっ、と余裕をかましている

「N領土内のA〜Fの上空を通過する」、
可能性に疑問符を残したまま、に赤い波線が立つ
落下物って、なによ?
落下傘、ピーナッツ、パラシュート
「海に落ちるはずなので、心配は無い」と思います

元外交官の奥さんは屋台で焼きたてのフランクフルトを売っている
華やかなドレスはもう1枚も残ってないのよ、と
ときどき美しい鈴が鳴るような声でコロコロと笑う
運河で船を待つカップルはフランクフルトとコーラを片手に
深いグリーンの水面を見つめ、
もっと透明になればいいのにね、と願っている

忘れ物をしたんだ、無くしちゃったんだ、何処で落としたのかわからない、
もっとよく探してみろよ、電話はかけたのか?
見つけろよ、何千、何万の中から
でも、どうやって?

4月4日、その日は友人の結婚式なの、
あさっては葬式で、今日は仮通夜さ、
4月4日、その日はウチのコ、一人で留守番なんです、まだ6歳なのに、

4月4日、土曜日、その日、自分は休みである
ドラえもんの映画が見たいと子どもにせがまれている
春休みだから町に唯ひとつの映画館は混雑するだろうな、
お金も無いしな、でもたぶん、出かけるかな、と思う
4月4日、緑のカバンと黒のカバンを持って、
あの日が近づいて来る