ゆらゆらと灼けたタイルテラスで
靴底を鳴らし踊るきみは
場違いなジーン・ケリーだったけれど
その耳にはぼくの声すら届かない程
空っぽなメロディが響いている
だってほら吸い込まれそうに遠い
たんたたんたん
脳みそのヒダにこびり付いた昨日を
皮膚へきっちりと縫い合わせ
ぼくは日に日に折れ曲がる
赤いサイレンが耳鳴りのように唸り
溶けだした太陽は暗く笑う
たん
ベルベットの風を纏ったフリルスカートが
8の字を描いてスイングする
糸の切れた凧のように舞いながら
息の上がったきみの頬で
柔らかに光っている金色の産毛
指先が撫で上げる午後には
口を大きく開けたまま
野ざらしの内臓が
花壇一面に張り付いている
陽炎が手招きをする
きみはもう死んでいるのに
たたたん
鮮やかなダンス
いくつものダンス
選出作品
作品 - 20090210_105_3329p
- [佳] 鶏頭 - ゆえづ (2009-02)
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鶏頭
ゆえづ