選出作品

作品 - 20081110_401_3134p

  • [優]  露光 - DNA  (2008-11)

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露光

  DNA

岸辺に充填されるはずであった夜からもはぐれて きみは 銀波の行く末を案
じることにも倦み疲れ テトラポットのなかで窒息した柔らかい書物に手をの
ばす 月のひかりの届くことはなく にがい螺旋をくだりはじめ
  
  (血、のしたを流れるましろい河川

水の流れ 水脈のかけらは散らばり
  (あるいは 冬のなかで滞 留し

完全な護送などなかった
  (きみはつねに冬の午後の弱い光を擁護してきたはずだ

見透かされた葉脈に再度、〈非〉を突きつけ 行き違った鈍いこどもたちのほ
うへ歩み寄る 地下には地下の向日性。があって 白い綿毛の飛び交い 

見/遣るな
  (作業員は作業をし ことばはことばをする

区切られた領海ではなにひとつ獲れやしない
  (頷き、をひとつひとつ否定していき 

「残余は食べられますか」
「いいえ」

ミンダナオからの船には交わることのない希望が積載されていた 

 *

乾ききったゆびのさきで水面のへりを撫で 狂うことのない磁石に黒い布を被
せる 銅線はそこかしこに張りめぐらされており  

                               机のうえ
                              宛名はなく                                            見/遣るな
                                 箱は
                              忘却された
                               鼓動、の
                              運ばないで
                                 海を
                              突き立てて
                                 きみ                                             露光する