選出作品

作品 - 20080922_594_3038p

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勝手に埋めろ、人生

  DNA

わたしたちがいまだミシシッピ河で石投げしていた頃 きみがすでに埋め始めていた遠さのボールに記述される詩

1.

ねえさん、今日もぼくたちの波止場で一羽の記号が息をひきとったね

幾何学の身振りで生きながらえてきたきみのからだに 年老いた砂がまとわりつき

道行き、それは疾うにぼくたちの岸辺では役目を果たし終え

綴じられた<>のほうから穏やかな<>がまた漏れだしていく

(これもまた生/活なのだ)

ミジンコの眼球にぼくたちの一切の希望が映るはずもなく

ねえさん、死んだ記号の亡骸にそっとあの石を供えてやってくれ

2.

」空転する さかさまの硝子ペンで

縁どられた空には きみのねりあげた碧 がいまにも崩落しようとしている

(危うさ、とは無関係に交 差する二本の白線)

行き止ま/りはどちらですか?

記号の振り返ったさきで小さな性交が終わりを告げ

埋められたボールのほうで哀しみの羽化する音をきいた気がした

3.

中野の線路沿いの喫茶店で 向かい合っていたきみたちは 白いシャツのうえに 白さを溢した

夏の午前の陽光でぼくには何も判別がつかず

路上ではもう一匹の白さが干からびていた

(風はときに残酷な行いをし)

ちいさきものども、きみたちの悔い改めた翌日に記号は死/ぬだろう

ならば、せめて密航せよとねえさん あなたは云うのか

4.

見よう見まねで始められた分散する思考たち

きみからの短い手紙には一本の記号が杙を突き立てられ

「露出せよ」とただ叫んでいる獣の群れ

あまりの静寂のなかぼくは雨のさかさまに降るのをみた