謎々をあなたにあげる。決して解けない謎々をあげる。
春と秋しかなくても、割れた秋のかけらをあげる。細かなかけらを一つか二つあげる。それはイキモノのかけらかもしれない。
眠ったら眠りきれない過去をあげる。六本木の交差点でスピンターンしたマセラティの助手席。きりきりと見開いたブルーの瞳をあげる。
幻想とわからない幻想をあげる。すべすべをあげる。消えそうな猫はあげない。腕をあげる。脚もあげる。耳をあげる。爪をあげる。だから。
だから。
開かれたものを開く。サイレンの中の微光をあげる。スカーフに包んだ、小さいけど重いものをあげる。振り向いたらあげる。あっ、と叫んだらあげる。あなたからあなたにあなたをあげる。
ミシェルをあげる。ミシェルがタイトスカートの採寸に使った巻き尺をあげる。その時ガラスの扉の前を通った片足のひと。
(秋のツバメは
掌で眠らせたまま
もう、あなたにあげてしまった。)
選出作品
作品 - 20080920_575_3034p
- [佳] みんなあげちゃうモノガタリ - 右肩良久 (2008-09)
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みんなあげちゃうモノガタリ
右肩良久