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作品 - 20080430_595_2726p

  • [優]  無題 - 凪葉  (2008-04)

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無題

  凪葉

わたしの中に、あると思っていた、永遠や、愛や、そういうものすべて、混ぜ合わせて包んだような、ひかりとか、抱きしめていた、朝、からだの奥深く芯から、じわりと滲みだした黒いなにかが、
指の先や、鼻の先、とにかく、先という先へ向かっていくのを感じて、
どうにかしないといけないのもわかっていたのに、どうすることもできないままで、
ただ、立ち尽くしたまま、
 
 
 
ここに居てはいけない、
そんな気がして、また振り払って、くりかえしを、くりかえして、
頭上を見ることができなかった、いつもみたいに、空を仰ぐことができなかった
不思議と首が上がらない
このまま、脱力する前に、と、耳元にはめていたイヤホンを強く押しこんで、いつもより音量を何倍にも上げて、なんとかして、思考をねじ曲げたかった
愛すること、そのことに、溺れそうになりながらも、胸を張る
爽やかに吹きぬけていく風にさえ、倒れたくもなる
 
 
 
鳥の鳴き声、雲が描く風の姿、草木のさざめく音の群れ、
生憎のくもり空が心にしみた
求めることが失うことなら、と、なんど思っただろう、あれからずっと、見つめ続けている長い時間
何気ない野花が愛しく思えて、触れようと伸ばした手の、ささくれた指先に、わたしの海に落ちていくわたしが加速していくのを、必死になって、固めるように、つよく押し止めてから、また、歩きはじめて
 
 
 
怖いのは、崩れる前に壊れてしまうこと、からだの中から破けてしまうこと、何も感じなくなるなんて、そんなこと、無いと思って、いたのに、悲しいうたばかりうたうようになって、悲しいうたしかうたえなくなって、手の届くせかいから遠ざかってしまって、それから、それから、わたしはどこへいくのだろう
 
 
 
あの朝も、いつもと同じ眩しい朝で、きっと、これからも続いていく朝で、それでも、ひとつずつ何かを失っていって、そうして、何かが生まれて、いつの日かわたしがわたしで無くなる時がくるのだろうか、と、張りつめていたものを緩めて、解して、このまま、
わたしがわたしで在れたなら、と