あしたはお葬式だから
わたしたち夜中ていねいに
からだの準備をする
やさしく膨らんで
剥がれていく熱を洗面器にためて列に並び
つまさきを揃えて
ぐずぐずと、甘くなる夢をみる
空気は冷たくてつんとしているから
裸足になるのに臆病だった
ひやりとしてからわたしたち
唇を撫でながらお祈りをする
ふやけて甘いかたまりは
空にかえしていった
白いひとの横たわる
足の裏がわでいくつもの色が交差している
睫毛のかげが遮られ
そのかわりに
たくさんの腕がうごめきあっている
なぞる手のひらが宙を泳ぐ
ぱさぱさに
乾いてしまっている
空気の淀みを
くちびるをきちんと結び
吸い込まないでいる
息をしていないのに
吐き出したいものがある
わたしたちの簡単な正装は
いつでも雨に濡れてよかった
からだの中身がきゅっとなる
もう準備はできている
音はどうしても静かで
沈んでいったわたしたちの
正確な微笑みを
もうだれも取り返そうとはしない
西の空には密やかに夕暮れが静止している
選出作品
結晶
Ar