I
机の上の観葉植物に
傾けて
こぼしてしまう
拭きとっても
緑
電話をかけようと携帯を
取り出したりしない
八月六日
割ろうとして確かに胸郭を
叩きつけた
できればもう水は飲みたくなかった
根を凍らせないように冬には
がらんどうには
おしながされない残響があった
もはや草木は生えないと
いわれていた
いまは
グラスをにぎる
蛇口をひねって
とめる
グラスは満たされ
そして日向へ
II
しぶきを立てて
走り抜けていく
時間
飲みつづけても
このゆらぎでは
まだまどろむことができない
耳
玄関に置いてある箱からじゃがいもを取り出す
芽が
生え始めていて
確かに流域がつづいている
ああこの鼓膜は白い国の寒さを知らない
水はそこでも夢を
聴くのか
いますぐ電話を
かけたりしない
日向へ
日向へ
III
薄く斜線で消しておくこと
語りえないこと
何度でも語りなおすこと
表面にまだらが出ること
しばらく減らすこと
底を手のひらに包んでベランダに出ること
そして日向に
ひとすじ貫かれた未完の動詞をなぞりつづけること
忘れないこと
忘れること
忘れたこと
思い出すこと
生きること
選出作品
作品 - 20071102_177_2427p
- [優] 幸福論 - 午睡機械 (2007-11)
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幸福論
午睡機械