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作品 - 20071102_177_2427p

  • [優]  幸福論 - 午睡機械  (2007-11)

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幸福論

  午睡機械

 
 
 
 I 
 
 
  
机の上の観葉植物に
傾けて
 
こぼしてしまう
拭きとっても

電話をかけようと携帯を
取り出したりしない
 
八月六日
割ろうとして確かに胸郭を
叩きつけた
できればもう水は飲みたくなかった
 
根を凍らせないように冬には
 
がらんどうには
おしながされない残響があった
もはや草木は生えないと
いわれていた
 
いまは
 
グラスをにぎる
蛇口をひねって
 
とめる
グラスは満たされ
 
そして日向へ
 
 
 

 II
 
 
 
しぶきを立てて
走り抜けていく
時間
 
飲みつづけても
 
このゆらぎでは
まだまどろむことができない

玄関に置いてある箱からじゃがいもを取り出す
芽が
生え始めていて
 
確かに流域がつづいている
 
ああこの鼓膜は白い国の寒さを知らない
水はそこでも夢を
聴くのか
いますぐ電話を
かけたりしない
日向へ
 
日向へ
 
 
 
 
 III
 
 
 
薄く斜線で消しておくこと
語りえないこと
何度でも語りなおすこと
 
表面にまだらが出ること
しばらく減らすこと
底を手のひらに包んでベランダに出ること
そして日向に
ひとすじ貫かれた未完の動詞をなぞりつづけること
 
忘れないこと
忘れること
忘れたこと
思い出すこと
生きること