夜の底を川が流れておりました
桜の古木は咲いて
花を散らしておりました
寂しき者がふたりして
抱き合い眠っておりました
指をからめておりました
いや、眠っていると見えたのは
もうなきがらでありました
肌に触れる花びらもくすぐったくはなく
いや、ふたりと見えていたのは
やはりひとりでありました
誰もいない夜をもう悲しみようもなく
寂しき者のなきがらは
ほとんど桜に埋もれて
あたりは静かでありました
それでも花は降り積もり
清い砂礫を川が運び
花が埋めて砂が積もり
やがて寂しき者の丘ができ
寂しき者の丘にマンションが建ち
マンション建ってともし灯ついて
丘いちめんにともし灯ついて
星空に舞い去っていくのでした
選出作品
作品 - 20060720_551_1430p
- [佳] 寂しき者の歌 - まーろっく (2006-07)
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寂しき者の歌
まーろっく