たくさんの後ろ姿が笑ったけれど
その古い服はいつまでも真面目な顔をしていた
腐ったポットを片手に持って
駅前であなたを待っている午後
地から天へ魚の破片が流れる
呼吸をし損ねた丸い跡
見えているのは多分
わたしが欠点だらけだから
その透明なくらげのような言葉で顔を洗う
バイオリンの斜光
春と夏のあいだで歌う白い人
ふいに訪れる区切れを追いかける
フラフープの中で死を指折り数える
無理したピンクが世界から浮いて泣いているように
わたしも駅と駅の間で割れそうだ
その罅が現実を映せたら
急行に乗って帰ってくるはずの季節
酸素も無いその空白の穴の中で
乾いたお湯を流し続ける
昔のレントゲン写真を見れば
胸のかたちは何も変わっていない
偶然と鐘が泣くときに
足元にぽつりと雨が降る
意味は神様が食べてしまったけれど
少しだけ保温しておくよ
もう一度生きたいと思ったときのために
選出作品
作品 - 20060527_198_1292p
- [優] 駅前 - 巽 (2006-05)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
駅前
巽