天窓から睨む月の鋭い眼光
コンクリートの醒めた肌
薄明かりの白粉叩く鏡の前
流動体のゆらゆらする夢を頬張れば
牙を剥いた苛立ち、
硝子が口の中で鈍く鳴って
水銀の粒が唇を零れ落ちる、美しく
ときには砂のように
ときには水のように
若いリズムを刻みながら踊る踊る、
掌の上を踊る
まるでそれは生きていた
砕けた破片
噛み締めたら流れだした
赤
美しく銀と赤
黒い涙、マスカラの睫毛でぱちんと弾けば
夜の孤独に滲みゆく
奥で潰れた声の破片が
舌の上
もつれあい転がる銀、銀、銀の
滑る滑る、
赤を
赤の
零さないで
乾いた
砂のように
こころは死んでいた
張り付いたいのち
内を剥がれ落ちるそれは
干涸びて
ふざけた血が 嗤う
ああ、
もう崩折れそうに
祈り疲れた
ねえ、なんて痛わしい空
なんて怠い未来
石女と体温計
選出作品
作品 - 20060508_790_1240p
- [佳] 銀と赤 - 苺森 (2006-05)
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銀と赤
苺森