朝霧のなかを
葉のさきをすべる つめたい
雫のように
流れた
天井の水 あれは私の
カナリアの飲み水だ
ぶわぶわとふくれだした
トースターのうらの
ものの影から
カナリアは死んだ
床のうえで
あわの実がちらばって
あなたは羽を焼かれ
カナリアは
うすい翼のさきに風をうけて
明けきった空に鈴の音を聞いた
あのときも
あなたは露で身をぬらし
古い土に寝ころがっていた
瀬のきわでは蛙たちはもつれあい
一匹は石のうえでないていた
私は私で昔のオルゴールのぜんまいを回し
なんだかうれしくなっていった
あなたはとても重く
籠の中でぼそぼそと
ちいさな影を揺すって
しゃらしゃらと目でわらう
鈍く漂っているように
籠の底にしがみついていて
もう昔のあなたのようには
うつくしくない
たたみのうえに糞をして
陽の中で死んだ
あのときのあなたのようには
うつくしくない
選出作品
作品 - 20060301_947_1006p
- [佳] よく陽のあたる場所にて - 樫やすお (2006-03)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
よく陽のあたる場所にて
樫やすお