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作品 - 20060218_816_984p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


白い都市

  川 英

ソコは。
溢れている
ただ、天蓋はない
一斉に眠ることもあれば
一斉に目覚めることがあるという それだけのことだ

街に耳を当てカツテは聞いた雑踏の鼓動
力強かった
でも、偏在していたソレは
今、自失とし訪問を待ち続けている

彼女は。
螺旋階段を駆け下り
駅へと向かう細い路地 へ
そこは、室外機が寄生する雑巣(ザッソウ)
ホタリ ホタリ
首に鋭い冷気を感じ 這わせる指
傷ついたプラスチックホースから 落ちる透明な血
(イタクナイ?)
羽音が、間断なく低い響きを立て続ける
ホタリタ (ブブブブブ)リタホタリ(ブブブブブ)タリタホ(ブブブブブ)
反芻している細い路地では、
自由落下が時を支配する

ああああああ、あ

喘ぎに似た声を置き去りにして、彼女は人の溢れる商店街へ

彼は。
Hof, Platz, Strasse, Passage
そこでは、あらゆる都市の器官が打ち捨てられた玩具のように雑存し、
2月の果てですべてが凍り付いている 
彼はそこへ、
壁に耳を押し付ける再生行為へと向かう
(癒着して、離れないかもしれない)

逆回しのスローモーションで、押し当てる耳

響く壁が、
響いている壁が、 
あるいは、うめいている石が
あるいは、回帰している三半規管の中へ、
オゾオゾと、這いつくばりまわる繊毛上を
つまりは、うめいている石が
この壁を叩き割って、うめきを、一斉に
一斉に、ぶちまけろ、街へ
アロマプラプテ 
ああ、(トルコ人の売る)石榴に似たうめき(喘ぎ)

彼と彼女は。
桜の木下で、腐乱したかった彼女
は、やがて空から墜落した彼の腕の中へ

堕ちる
膠着した雪が、振り分ける指先の痺れ
とは。

火を付けてくれないかしら?指先に火を

髪にからみついて離れない、幾千本の肌熱や、
フタリが抱き合ったベットの、ただ、皺だけが増加してゆく 
ダム

 喉を吸ってくれないか?喉元の石を

海へ回帰する雨の音だけが増加してゆく 
ダム

 
明るいビルの底 
フタリ フタリ

彼のその冬のアトリエで
白い都市が産声をあげる

文学極道

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