選出作品

作品 - 20051123_480_772p

  • [佳]  滑走 - 鷲聖  (2005-11)

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滑走

  鷲聖

爪先立ち
真冬の星座を探す類いのもの
洗礼名の入った
コートのジッパーに触れた衝動
冷たい鼻先で互いに確認したあと
もう一度
雪明かる雪原には
小さな獣の足跡が丘陵の向こうまで
追いかけようか
冗談だろ
さんざん雪つぶてをぶつけた俺の背中を払って
厚手のコートじゃうまく腕が組めない
息があがり
笑う
無言の樹氷に星が架かるのを見つければ木陰の迷宮で
繋いだ手の円周を往くおまえに
白い息のヴェールが掛かっている
とりとめなく話していた明日より先に
途切れてしまった言葉が
中空でダイヤモンドダスト
後方の闇に煌めきながら消えていった
幻惑
繋いだ手を放してしまう
雪に倒れたおまえが投げた雪玉に
我に返り
困ってしまう
獣が遠くから
引き起こそうとして逆に引き倒される姿を見ている
そのとき
星が戦慄いたことは誰も知らない