日覆いの破れ目に射し込む秋風
日当たりのいいコンクリートの割れ目には
道草している名のしれない草花
ただひとり羅生の門をくぐる僧侶
夢を昨日に仕舞って身動きできずにいる私
その起立した影がわずかに西にかたむき
豊やかに風の息にゆさぶられながら敷石に染まっていく
そしてその敷石と影との間には
実存の剥がれた憩室があって
そこでは銀色のウインターコスモスが萌えそめ
人の感覚をふるい落としている
私は海水の砂摩で
光色の衣をまとって埋まる世捨て人のように
言葉を喪ってしまっていた
私から抜け落ちた母音のかたまりが
吹き迷う秋風にずいぶん遠くの風下まで運ばれ
表音仮名が表意漢字に化けて
あちこちで私を凝視している
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以前冒頭の部分を投稿しましたが、続きを再投稿させてもらいます。
本来は縦書きでルビも数箇所振ってあります。
選出作品
作品 - 20051121_432_760p
- [佳] 現代の絵巻 (1)秋 - tomo (2005-11)
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現代の絵巻 (1)秋
tomo