全ての雨が降下を終えて まだ
魂が這い上がることは許されていない
ラメを散りばめスパンコールに冒された蝶は毒を全身に隠している
朦朧とした光の中で性別も良く分からないのに
目の前でゆっくりと溶けている
等号の意味を知る イコールで結ばれた番の片方は
たいてい 蝿も近寄らないくらいに気高く美しい
(ひどい湿地を抜ける 沼の周りは特に強烈な
薫りでヒトを誘う 先行した人達はそこで暮らしている)
食糧難が遠い時代になり あなたは蝶を呑みこむ
体内で羽ばたくくらいが丁度良い?
(肩胛骨 あまりにも甘く苦しいあなた
五指 湾曲部 ネイルオイルを舐める)
大災害だ 冷たい夜なのに柔らかく湿った土は凍らない
ユートピア 間違えないように半島の地図を携えて
右の臀部に 楽園を追い出された彼らの名前を
ひけらかすように その 呼気の一つ一つに亜熱帯の
暗闇を込めている アルコールが燃えている
再々開後の宇宙 誰もが 身を激しく打つ雨を知らない
深とした大気に星が降りかかる「喜び」すらも
選出作品
作品 - 20051114_271_730p
- [優] 蝶を呑む - 埜 (2005-11)
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蝶を呑む
埜