幼い頃に限らず
なりたいものがあって
人だけに限らず
きっとこの渋柿も
甘い柿になりたかったんだろう
私にもなりたい名前があった
ぽ、つん
口に出してみる
やっぱり似合ってる気がする
あの人の姓は
私のこの名に
言うのは
いくらでも出来るのに
それはだけど別人だから
夕暮れがそっと頬に触れて
帰っていくように
あの人もこの胸にきれいな色を残して
人混みに消えた
鳥がついばんだ柿が散らばり
どこもかしこも橙色
この庭の柿の木は
私が生まれた歳に種を植えたんだと言う
ねえ母さん、
うんと甘い柿が
食べたい
選出作品
作品 - 20051108_087_709p
- [優] 橙色 - 黒澤 あや (2005-11)
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橙色
黒澤 あや