選出作品

作品 - 20051008_378_596p

  • [優]  寝顔 - ミドリ  (2005-10)  ~

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寝顔

  ミドリ



リモコンで冷房を止めると
舞はサングラスを外し
主食のサプリメントを口に入れる

白いタンクトップの下の
ブラを外すと僕は
乳房をつかみ
強くキスをする

そのまま二人はベットから落ち
椅子で頭を打ち
テーブルの下で
パンツを下ろして
古本のように積み重なる
アルファベットのBみたいに
強く抱く

抑制の効かなくなった体がふたつ
互いを求め合い
ギュッと抱きしめあって
キスばかりしている

電話台で
ファックスの音がして
咳き込む舞が
身を離した瞬間

僕らは群集の中にいた
排気ガスを吹き付けるバス
交差点で立ち止まり
広告の看板の文字が
人々の行動をレイアウトしていく
ローティーンの少女たちが
アヒルのように
ミスタードーナツに入っていく

レジスターがあき
つり銭をジャリと掴む
店員の指
カフェバーでコンサバの女が
薬入りのカクテルを飲まされ
便所で輪姦されている

ソープランドで働き始めた舞は
帰るなりヒールも脱がぬまま
座り込んで泣いている

僕は舞の着替えを手伝って
身体を拭いてやる
タバコを吸った後
少し吐いた舞を
ベットに寝かしつけ
灰皿の上で
火をもみ消した

防音ガラスの中で
ビリビリと耳を這う
地下鉄の工事が
束ねた髪の
舞の寝顔を
乱暴に寝かしつけている