今朝、飼犬の、黒い、目を見ていたら
撫でるのをやめてしまった
私らの風土は、砂漠に発生した、
畸形ブナの性別だ
閉じられた窓辺の夢が、今日もまた尾をひいて
――ソラ、飛ンデイク
夢が
風景から風景へと過ぎ去り
もう私はただ、ひとをおもいだす
いつかは一日でも私の世界で死にたい
私らの風土は、ほら、
それすらが夢だった
*
私は一人の藁
咆哮と華麗なオーケストラのどまん中で
自分の尻を握りしめて勃起した
そして
空ではないどこかへ吹き消える
高原に草々が次々と遠くへなびく
狂想曲をぶちまけながら
風が張り裂けるのだ
灰色の霞にある太陽はほんとうに赤い
何か不変のものがあるような気がして
今日も私らはどこかで愛撫しあう
こうなったら合葬してくれればいい
木の歌を聞くひとなどやりきれない
あのひとは、どうしたらいいだろうか?
(今、坊主が崖から俺をぶん投げようとしている)
選出作品
作品 - 20051007_342_594p
- [佳] 風土 - 樫やすお (2005-10)
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風土
樫やすお