選出作品

作品 - 20050907_770_493p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


羊膜内外

  葛西佑也

羊水 に 浸されていた
へその
   緒
つながれていた
束縛

母体から
出てくる
小さな人

子ども(創造物)じゃない
無力も無邪気も
勘違いだった

朝焼けの土手
    草の上
     孵化寸前
卵膜の裂け目
もれる 羊水

無意識に知っていた
(羊水 が 海水)
塩分が
濃ければ
分娩は
容易に
   なる

  小さな人
  海の民 から
  陸の民 に
       なった
  モノのこと

陸に
打ち上げられた
クジラ
潮吹きでもって
       証明される
海の民
  捕鯨は禁止 されて
           いる

海水が
   恋しいモノ は
いつまでたっても
大きい人 にはなれ
         ない
そう、潮吹き で
        もって

だが、
小さい人 も
大きい人 も
陸の民
   (ではないか)

ならば
いちばん近い
存在
  虫
孵化
  された
     小さな人
やがて
   なる
     大きな人

潮吹きは
    もう
できない
    もう
恋しくはないか
 海水。