オフィス通りの半ば
南町のバス停留所で
カーキ色のミリタリー・パンツをくるぶしに下げ
乳首を剥きだした若い男が
いっしんふらんに握りしめて
しごいている
時刻表の右側に立っているので
蛍光灯の光はかれを
おびやかさない
暗がりに沈んだ肌のりんかくが
あたりの風景を切り離し続ける
わたしはかれを見ているがかれはわたしを見ない
その連続の運動に没頭する
なめらかな手
こぼれた精液をぎゅっと
踏みしめわたしはうっかり
避妊しそこねてはらんだ気分になる
夜はまだ更けない
靴をぬいで自転車のペダルを
踏みこんで
いく
選出作品
作品 - 20050627_719_286p
- [優] サタデー・ナイト - 軽谷佑子 (2005-06)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
サタデー・ナイト
軽谷佑子