ぼくが終着駅の三つ先で降りた日にはもうそこら中が真っ白で
世界の終わりなんですと言われたらそのままそうですかと納得してしまいそうな光景だった。
錆びた二色刷りの看板を眺めたが大切な部分を示すはずの赤文字は
とっくに消え去ってしまっていて何を言いたかったのか全く解らなかった。
(きっと本当にひとりぼっち)
そのまま真っ直ぐ、時に曲がりつつ歩いた。
周りを見ても白いかまたは白としか名づけられない色でぼくの経験不足を思い知り、
そこに満ちている光までどこまでもいつまでも白いような気がしてならなかったのだが
絵の具の白程度じゃ全てを塗りつぶしてしまうには到底足りっこないのが残念でならなかった。
『影がひとつずつ
ぽつりぽつりとぬけおちて
すっかり白い部屋に
声が
ただ広がって消えてゆきます』
世界の色が白いか黒いかそれ自体は非常にどうでもいいことで、
ただ重要なはずなのは黒が抜け落ちてしまったという寂寥だけなのだ。
ふと視線を上げ、耳を澄ますと
町だった光景はすっかり消え果ててあとにはただ真っ白な始まりか終わりしか残っていないようだったが
その中からなじみぶかい終わりだけをいくつか拾ってそのままぼくは歩いていったのだった。
(発信音はまだ鳴っている)
選出作品
作品 - 20050421_155_190p
- [優] しろ - 月見里司 (2005-04)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
しろ
月見里司