詩投稿掲示板 - 過去ログ [498]

9169 : 叙利亜とサネ  山田太郎 '16/10/08 08:37:26 *13

    叙利亜

すべて身から出たサビですたい
おくさん
誇るもんなどなにひとつとてありゃせんですばい
門付けする資格もなか
ばってんニギリひとつでよか
いや
ニギリでのうてもよか、そがいなぜいたくいえた
身分でもなかですたい
イモでよかだけん 干した大根の尻尾でもうれしかたい
はいね
わしの骨の腐った根性話
耳ふさいで聞いてもろうてもしかたなかと思います
わしゃあ見てのとおりの流れもんですたい
熊本で震災におうて半ダコの飯場ば逃げ出して
ここまで流れてきたですばい
よかですねえ
にっぽんの玄関口 門司ば
カモメと 急ぐぽんぽん船と 黒い荒波 ここまできて
わしゃあほっとしとるけんど
心の中は哀しみに沈んどりますばい
てくてくと一日中歩いてきましたばい
九州横断自動車道の脇道を朝も晩も歩いて大分について
そっから別府湾と周防灘を回って
ようやくここに辿り着きました はあ
しまいには歩くのがいやになってこん足ば切り落としてやっかともおもいました
だどもこの足切り落としても蚊一匹振り向いてはくれませんやろね そがい考えるとあほらしゅうなって
ただひたすらびっこ引いても歩いて ここまで来ましたっちゃ
もうこっから先は海峡しかないきに ほら
海猫ば行き先迷うて鳴いてますろう
ああ おくさん アジの干物んでも焼いてなさるか
いい香りの煙がここまで流れてきますがね
ほしうていうてるんやなかです
このムラサキ色の煙がなつかしゆうてうれしいんですばい
子供んころの夕餉ばおもいだして 三男四女の九人家族でした
おやじは田川の炭鉱で働いとったきに落盤事故で生き埋めになって保証も満足におりんで
そのあとおふくろは
ヤクルトやら売りに歩いてわしらばなんとか養うてくれましたけんども
わしが十三のとしに結核でなくなりました
しょうがなかけん弟妹のために学校ばやめて炭鉱に入りましたばい
おくさん、こんな子守歌しっとりますか
4月熊本灰の町
8月叙利亜骨の町
十月十日で赤子が死んで
正月淋しいかかの墓
鹿児島のラーメン屋で働いていた女房と三十んときに所帯もったとですばい
なんの因果かねえ 妊娠中毒で赤ン坊ともどもなくなってしまいましたとです 
旦那さん? 旦那さんかいね、あんた
そんな血相変えてなんなさるかね
間違えちゃ困るばい わしゃあただの風來の物もらいじゃけに
そげな木刀持ち出さんでもよかたい
わかりもした わかりもした
いにますばい そげな怖ろしいものふりかぶらんでくだっさい 交番にも届けんでくだっさい
うその震災避難民ちゅうですか このわしが この入れ墨がですか
九州のヤクザ同士の抗争(ケンカ)で追い回されて逃げてきたヤクザ者の成れの果てやゆうですか このわしが
わしはだれにも危害なんぞくわえるつもりはなかです 作り話なんぞいうちょりません
ただの痩せ犬とおもうてください
門付に回るのが精一杯のこの世の避難民ですたい
ああ それにしてもいい匂いでごたる
ああ 旦那さん おかみさん わしはこのおいしい匂いを思い切り吸っておいとまするでごわす
つくづくわしは疲れ果てましたばい わしごとき流れもんが門司におるのが迷惑やおもうたら
海浜公園でダンボールひいて寝てますきにいつでも殺しにきてつかあさい どうしても迷惑やおもうたらそんときは
こちらからお願いしますだ どうか殴り殺してつかあさい
足ももうぱんぱんに腫れて疲れましたきに





サネ

あいつのサネは
蒟蒻芋の匂いがする
五年もたってから思い出した
わたくしのキンタマはいまでは
牛蒡の匂いがして
土くさく
ぜんぜん云うことを聞かなくなった
他人様のようなキンタマじゃ
宝の持ち腐れやゆうてあいつは
六神丸をくれた
麝香、牛黄、朝鮮人参、カエルからとれる蟾酥(せんそ)
、真珠、熊の胆
ああ、あの日までは
ピンピンしとったのに
波にさらわれて
ほうぼう捜したはてに
まぶしい空の下に浮いてた
あいつ
連絡受けて125ccバイク飛ばして
福島めがけて走っていたら
突然湧き出した黒い雲から冷たい雨が降り出して
その雨のずっしり重いこと
鼻血がとまらないのでチリ紙を突っ込んで
宿につくと3日もそのまま寝込んでしまった
そのあいだ、嵐の海を漂っていたのだ
あたいはおでんが好きなの
だから牛蒡も好き
石ころみたいなあんたの
コロコロしたおでんも好き
浩宮さまと同窓の元彼がいたなんて
ウソをついてたあいつ
いんぽてんつは哲学や
言うたら
わたしも哲学やろって
サフ、ツル、を読み出した
サフ、ツル、は絶倫やったんやで
ボォーボーワァー、がそういうてた
いまでも波の音がきこえる
海に洗われても
蒟蒻芋の匂いがした
 サネ
おい、東電、おれの蒟蒻芋を返せ
おい、原発推進知事を当選させた福島県民
被害者ヅラをやめて おれの蒟蒻芋を返せ
おい、和合亮一、知事と連名で汚染桃を売る詩の商人
おれの蒟蒻芋を返せ 
おい、和合に中原中也賞を与えた
荒川洋治、北川透、佐々木幹郎、佐藤泰正、中村稔、吉田熈生
どろぼう、盗すっと、詐欺師、ゴミ、腐りチンポ
わたくしのサネを返せ
あいつとわたくしのいとなみをかえせ 
いとやさしきあいつをなみからかえせ 

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