○街
たしか雨が降っていたと思う。梅雨だっただろうか。ぼくは何度もこの空間に戻ってい
く。今だって大して無いけれど、もっとお金を持っていなくて誰にも会いたくない休日を、
その当時住んでいたアパートから二十分程度の、駅前にある街の図書館で本を読んでやり
過ごしていた。縦に並んだベンチの、後方の一つを選んで、その右端に鞄を置く。近くの
海外文学の棚から本を一冊取り出し、ベンチに腰を下ろしてそれを読む。チャールズ・ブ
コウスキーだったかもしれないし、リチャード・パワーズだったかもしれない。アンドレ・
ブルトンでは無かったことはたしかだと思う。それとも、もう少し歩いて雑誌コーナーま
で行きスポーツ雑誌でも読んでいたのだろうか。若い女性の声が聞こえてきて、ぼくは顔
をあげる。ベンチで横になり眠っているおばあさんに図書館員の女性が大丈夫ですか?と
声をかけている。彼女は仕事として声をかけているのだろうが、おばあさんはそれを無償
の善意として受け取る。ええ、大丈夫。ありがとう。そう言って、また眠りに就く。図書
館員の女性は諦めたのか、他の誰かに相談しに行ったのか、おばあさんの元から足早に離
れていく。ぼくはコンビニに寄って買っておいた週刊誌に視線を戻し、袋とじを音を出さ
ないよう静かに破って、そこに写った女性の裸体を眺めて落胆する。
そして現在のぼく。書きたくなるような事柄は少ない。なにもしていないのと変わらな
いような仕事をこなしながら、その合間に文章を書いている。詩ではない。小説でもない
かもしれない、と考えるとぼくは空から街を眺める一羽の鳥になる。鳥はぼくの書いてい
る文章の枝で羽を休める。女の子ともおばさんとも呼べないような女性が話者で、彼女は
あらゆる物事に両面価値感情を抱いている。日の光は彼女の体を暖めながら彼女の影を深
く暗く引き伸ばしていく。月はこれから姿を現そうとしているのと同時に消え去ろうとし
ている。彼女は自分のことを小型の飛行機に喩える。わたしは街を眺めながら墜ちていっ
て崩壊した、と彼女は語る。それなのに生き延びた、と。ぼくにとって彼女は女性であり、
街でもある。彼女が崩壊したとは街が崩壊したということであり、彼女がなにも無くなっ
たと言うのは、ぼくにとって街にはなにも無くなったということだ。彼女は仕事を辞めて
都会を離れ、地方の住宅街にある実家へと戻る。彼女は生まれ育った道をぶらぶらと歩き
ながら、ある男の子のことを思い出す。気取り屋の本ばかり読んでいる彼。彼は作家にな
ったのだろうか。ならなかったんじゃないかなと彼女は想像してみる。彼女は彼について
なにか書いてみたいと思う。でも彼そのものは無理だ、彼にはもう十年以上会っていない。
彼女は彼ではない彼を作り出す。名前を決めなくてはならない。Kというアルファベット
は文学的なんだ、と彼が言っていたことを思い出す。カフカの『城』だっただろうか、『変
態』だっただろうか、思い出せない。カフカですらなかったかもしれない。わたしは文学
についてなにも知らないからKは使えない、と彼女は考える。ぼくだってよく知らない。
なんとなく彼に形が似ているから、と彼女は男の名前にSと付ける。結末はまだ決まって
いない。Sと彼女は彼女の書いている文章の中で出会う。墜ちてしまったのよ、と彼女は
語る。小さいといっても飛行機は飛行機よ。鳥だったら良かったのにね、とSは答える。
そうしたら街を壊すことも無かったし、地に墜ちたところで誰も気付かない。ええ、そう
かもね。そろそろ行こうかな、鳥は空へと飛び立っていく。眺めていた街はもう無くなっ
ている。遠くに海が見える。
ぼくは図書館の中に戻っていく。ある男の姿が目に入ってくる。身長はぼくとそう変わ
らず、百七十センチ程度。季節はずれのダウンコートを着ている。坊主頭で三日か四日分
の無精髭を生やしている。体格は良く、格闘技でもやっていたのだろうかとぼくは考える。
彼は彼にしか聞こえない声でぶつぶつと言葉を呟きながら館内を歩き回っている。なにか
探しているのだろうが。歩くとは片足を過去に残しながら進んでいくことだ、と彼女の想
像したSは言っていた。
○海
男は海岸沿いを歩いている
太陽の位置を確認することで
向かうべき場所の
おおよその方角は理解出来る
あくまで昼の
陽の出ている間に限られるが
砂浜を、波止場を、
街中を、波の上を、
男は歩いていく
女は男の後を歩いていく
気付かれぬよう
距離をとって
声をかけてくる欲望を断りながら
たまに受け止めながら
遠くから、あくまで遠くから、
泣き声が聞こえている
夜の間
男は教室で暴行を受け
仕事場で脳みそを焼かれ
レトルトのコーンスープのように音をたてずに啜られる
銃で撃たれ、耳と鼻を削がれ、
目を刳り貫かれ、頭に頭巾を被せられ、
首をはねられる
血が流れて
海へ混ざっていく
女の屋根は爆撃され
髪は刈り取られ
強姦される
暗闇が女の中に入り込んでくる
壁も天井も清潔に塗られた
五人部屋の端のベットに
女は拘束される
どうせ目は見えないからと
花は無い
雲に隠れたからと
月は無い
男と女はどこかで出会わなければならない
どこだろう?
教えてほしいが声は聞こえない
花屋に寄る
女の子は可愛い
そうだろう?
色だけ決めて後は任せる
盲だからねえ
香りはどう?
花を近づける
わかるよ、良い匂いだ
場所を変え
筆箱の男に会いに行く
謝る
何度も祈るように
陽はまだ出てこない
男は海の上で立ち止まり
(時間というものが存在し)
振り返って
(前へと流れを進めているのなら)
波に腰掛けて待つ
(きっといつか現れるのだろう)
時間の端を両手で掴み引っ張る
背負うように左肩に掛けて歩く
追いつくように
追いつかないように
・決別
まだ海は青いのね、と彼女は受け止めるように手を差し出す。彼は愛しあうかのように
その手を掴む。簡単なことさ、と彼は彼女に言う。ええ、そうかもね。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20160206_543_8607p
- ゆま :
さっと読みの感想でしかありませんが、別れるために出会う感じでおもしろかったです。
あとこの詩しか読んでいないので、「決別1」があったのかは知りません。 ('16/02/07 01:01:18)
- 赤青黄 :
一読して普通だなぁと思いました。普通というのは、うーん僕の筆致に似ているっていうのが強いですね、自分の書いたもの見せられる感じです(僕の作品なんか至極どうでもいいのでこれ以上詳しくは触れませんけど。まぁ似ていると思ったということはなんとなく書き方だとか作品の思惑だとか、ちょっとは自分の中に落とし込みやすいって感じですかね)
ざっと感じたのはまず散文で力尽きて、分量が足りないので行訳でごまかして、その水増しも疲れたので最後にちょっとつきたしてみた。で最後に殺せばそれなりに読者になにかしらの交歓を持たすことが出来るんじゃないだろうか。っていう思惑みたいな奴です。違ったらごめんなさい。ですが僕はそういう風に読みました。だからうーん読んでて今一でしたね。
内容っていうか、うーんまぁ内容もクソもないかもしれないけど、僕はもっと泥臭い青臭さの方を好みます。例えば今月号のアフタヌーンに掲載してる冬の四季賞の作品、最高に青臭いんですが、主人公は最後死なずに生きます。僕はそっちの方がいいです。なぜなら僕は今生きてるので、今から死ぬ人の話はまぁ聞いてもどうしようもないかなぁという感じです。それからもう売ってないでしょうが秋の四季賞の「三途の川でワルツを」はそれより何倍か面白いです。あれは始めて泥臭くない作品で好きになりました。で、あの言語センス溢れる科白とかと比べると圧倒的に文章が面白くない。比喩もつまらない。真面目に書いてるのか茶化して書いてるのかはしっかりと判断出来ないけど、匂いとしては前者っぽい感じがするので、うーん滑ってる感じがします。ってもまぁ緩いポエムとしてはありなのかもしれませんが、まぁ結局いいたいのはですね多分最後に人が死んだり生き返ったりする作品沢山ありますけど、この作品より漫画の方が僕にとっては面白かった、ということです。 ('16/02/07 08:46:50 *2)
- 北 :
○海
の言葉はよかったですが、単なるバイオレンスに陥ってしまう可能性を危惧しました。 ('16/02/08 19:57:28)
- 三台目 :
ゆまさん、
さっと読んでいただいただけで十分です。ありがとうございます。1は僕のMacの中で刑が執行されるのを待って寝ています。
『ドラゴンボール』の中に出てくる人造人間は8号からで、1〜7号までは確か出てこなかったと思うのですが、その不在と決別の1が無いのはそんなに関係無いです。
赤青黄さん、
ごめんなさい、正直何を言ってるのかいまいちよく分かりませんでした。僕がアフタヌーンを読んでいないからかもしれません。
それでなんと返そうかと迷うのですが、掴んでないものを話すことができないというか、まあこの作品がクソで漫画の方が良いというところは僕も同意します。
ありがとうございます。
北さん、
バイオレンスとは違うかもしれませんが、随分あっさり死んじゃうよなと思いながら書いてました。
ありがとうございます。 ('16/02/12 00:35:49)
- 赤青黄 :
すいません。大分僕の都合のいいようにレスしてしまいました。
(ちょっと長い言い訳)
漫画を何個か参考に上げたのは、僕は相対評価を今の所僕のレス主軸にしているからです。「この作品はつまらない」って僕が言ったからといって皆が「詰まらないと」思うかどうかは分からないからです。だから「この作品とこの作品を比べてこの作品は〇〇」と言った方が、まだ根拠がハッキリするかなぁと僕は思っています。(それに僕がこんなレスするより、僕が比べた作品読んで貰って比べてもらった方が多分意味はあるんじゃないのかなぁっていうのもあります。それが作者にとってくだらない作品だっていうなら、僕のレスなんか適当に見捨てればいいだけですからね)。まぁ、どこをどう比べてそんなことを言ったのか、提示しないでやるっていうのはちょっと適当だったかなぁと思います。やらなかった理由は、必要であれば述べますが多分余計なのでここではもういいません。(要請があればレスします)
で、ここまでディスっておきながらレスしたっていうのは、一番は僕が書いてる作品が三代目さんの作品にかなり近いと思ったからです。だから適当にレスを書いても通じるかなぁと思って大分端折って短く適当にレスしました。ごめんなさい。(それで本当なら、なんで自分の作品と本作に僕が共通項を見出したのか、書いた方がいいんですが、そこまでいくと流石に場違いなのと単純に僕が恥ずかしいのでやりません。)まぁそれよりも、この作品を通じて感じた自作の欠点っていう奴を、レスを利用して整理しようとした、っていう側面の方が強いかもしれません。
というわけで、三代目さんの事なんて全然考えずにレスしてしまったので分からなくて当然だと思います。その代わり、もう少し詳しく僕の思ったことをレスしようと思います。
(以下作品についてのレス)
簡単にいうと何が書いてあるのか分からない。というか読んでて何も興感しない。ので普通だと思いました。で、下の方に細かく書きますが文章もボロクソです。比喩も殆ど一切魅力として映りませんでした。途中から作業っぽくやってました。(まぁ所々ちょいちょい感じますが)大した小細工もないので見所を殆ど感じませんでした。詰まらない自分語りを延々と聞かされている、というのは正にこういうことでしょう。自分の話を他人に聴かせる為の仕掛けが僕には感じされなかった。勿論自己満足で振り切るならそれでもいいんですが、そこまでの斥力はこの作品にはないと思います。だから、僕は今回漫画と比較しました。「そこらへんにありそうな文章や展開の詩」(本作)と「言葉や展開は結構青臭いんだけど、でも、力技でねじ伏せて行こうとする漫画」(井村朔早「奴のサナトロジー」)と「緻密じゃないが、然るべきポイントを抑えた絵で、且つセリフをかなり磨き上げた漫画」この三つを比較しました。共通項は皆多分やってることは青臭いです。それから作中で人が死に、誰かが生き残ります。ということだけですね。
>たしか雨が降っていたと思う。梅雨だっただろうか。ぼくは何度もこの空間に戻ってい
く。今だって大して無いけれど、もっとお金を持っていなくて誰にも会いたくない休日を、
その当時住んでいたアパートから二十分程度の、駅前にある街の図書館で本を読んでやり
過ごしていた。
この冒頭が凄く読み辛い。ここだけで読む気なくします。
「たしか雨が降っていたと思う。梅雨だっただろうか。ぼくは何度もこの空間に戻ってい
く。」
「たしか雨が降っていたと思う。梅雨だっただろうか。」
「梅雨だっただろうか。」ということは「たしか梅雨が降っていたと思う。」っていう風に置き換えが可能だと思うんですが、するとこの梅雨は物質的な雨としての意味合いが強くなる。(ガは述語の主体=名詞を表す。)そのあとに
「ぼくは何度もこの空間に戻っていく。」
ってくる。この場合の「この空間」っていうのは「梅雨が降る季節、並びにその季節における空間の有り方」っていうのを指していると思うんですが、前述したように、前文は「梅雨の時期に降る「雨」」の意味合いを濃くしめしているから、語が対象にしているものが若干のズレている。
で、その「戻っていく「梅雨という空間」」の描写がそこから一切なされずに(どくしゃの中にあるイメージで梅雨は処理しろってことか。)「今だって大して無いけれど、もっとお金を持っていなくて誰にも会いたくない」というぐじゃぐじゃした装飾が挟まった「休日」(突っ込むとキリがないのでやめます)がぶち込まれる。
ここで僕は適当に書いているのかなぁと決めつけてしまいました。
だから僕はここらへん勢いで書いたのかなぁと僕はおもってます。始まりに「雨」ってとても使いやすいし。「梅雨」っていう言葉のイメージはかなり便利だし。じゃぁ、ここで井村朔早「奴のサナトロジー」の冒頭を引用してみます。
この漫画は雨の中ポツンと立つ、主人公を中心に小さく置いた俯瞰図の扉絵と「箕田が死んだ」というセリフから始まります。次にその状況がこう説明されます。
>その日は季節外れの台風がきていた
>誰も来ないような廃工場の裏の
>誰も落ちてねーだろってくらい小さい用水路で、
>「箕田侑都くんが亡くなりました」
>「事故死だそうです」
これと本作を比べた時、どっちの方が惹かれますか。ということです。漫画の方がとても端的で分かりやすい。(さらに、ここに絵も付くわけですよね)これだと多分視覚表現に負けちゃうのではないでしょうか。
>近くの海外文学の棚から本を一冊取り出し、ベンチに腰を下ろしてそれを読む。チャールズ・ブコウスキーだったかもしれないし、リチャード・パワーズだったかもしれない。アンドレ・ブルトンでは無かったことは確かだと思う。それとも、もう少し歩いて雑誌コーナーまで行きスポーツ雑誌でも読んでいたのだろうか。
どっちなんだよって書き方。「近くの海外文学の棚から本を一冊取り出し」って事実を書いて、作者名まで書いて「それとも」ってなんだよ。
>ぼくはコンビニに寄って買っておいた週刊誌に視線を戻し、袋とじを音を出さないよう静かに破って、そこに写った女性の裸体を眺めて落胆する。
今迄読んでいた本から週刊誌に切り替える動作っていうのが皆無。勿論別に、唐突に出してもいいんですが、図書館に行く前にコンビニに寄った描写とか、鞄やコンビニの袋から取り出す描写とかあってもいいんじゃないのかなぁ。それとも敢えて描写しなかった理由っていうのがあるのだろうか。いつの間にか海外文学の本がスポーツ雑誌からコンビニの本にすり替わっていた、という仕掛けを施したかったのだろうか。
「お姉さんの様子をみて欲情した僕は代わりに、袋とじの女の子でハァハァしたくなった。だから海外文学の本がいきなりコンビニで買ってきた週刊誌に替わってしまっていた」ってことでしょうか。
というわけで、まぁ一連は適当に書いたんじゃないかって僕は思います。多分やりたいことは二連にあって、その二連を引き出すための前フリを書こうとして適当な言葉を連ね書いた結果、それが「ぼく」という人物の背景になった。で、そこから浮かび上がってきた人物を元に二連目の「詩ではない。小説でもないかもしれない」文章を書くぼくと彼女を描き出していく。
というわけで二連以降はある意味そこそこ読めます。ただそこにつながっていく一連が駄目だと思います。
二連というか全体を通してですが、多分物事の二つの側面っていうのが作品の中では大事な要素として働いている。端的に二項対立と言ってもいいかもしれない。例えば「〇街」は散文だから小説で「〇海」は行替詩ってとってもいい。作中の言葉でいうと、二つの「両面的な価値」ですか。まず、ぼくは作品の中で「女の子ともおばさんとも呼べない」「彼女」を話者に据える。
>彼女はあらゆる物事に両面価値感情を抱いている。日の光は彼女の体を暖めながら彼女の影を深く暗く引き伸ばしていく。月はこれから姿を現そうとしているのと同時に消え去ろうとしている。
ぼくは小鳥で、彼女は飛行機。
>ぼくにとって彼女は女性であり、
>街でもある。彼女が崩壊したとは街が崩壊したということであり、彼女がなにも無くなっ
>たと言うのは、ぼくにとって街にはなにも無くなったということだ。彼女は仕事を辞めて
>都会を離れ、地方の住宅街にある実家へと戻る。彼女は生まれ育った道をぶらぶらと歩き
>ながら、ある男の子のことを思い出す。気取り屋の本ばかり読んでいる彼。彼は作家にな
>ったのだろうか。ならなかったんじゃないかなと彼女は想像してみる。彼女は彼について
>なにか書いてみたいと思う。でも彼そのものは無理だ、彼にはもう十年以上会っていない。
>彼女は彼ではない彼を作り出す。
「書きたくなるような事柄は少ない。なにもしていないのと変わらないような仕事をこなしながら、その合間に文章を書いている」ぼく、と同じように「街が崩壊した=(彼女の書くべき事柄、もしくは背景)」彼女もまた、新しい物を書こうとして新しい「彼」を生産しようとするが、彼をどう書いていいかわからず新しい彼を作り始める。ここから対立構造というよりは入れ子に近い感覚ですね。イメージとして示すなら「白黒の箱が交互に入った入れ子」みたいな感じですかね。
>彼女は彼ではない彼を作り出す。名前を決めなくてはならない。Kというアルファベット
>は文学的なんだ、と彼が言っていたことを思い出す。カフカの『城』だっただろうか、『変
>態』だっただろうか、思い出せない。カフカですらなかったかもしれない。わたしは文学
>についてなにも知らないからKは使えない、と彼女は考える。ぼくだってよく知らない。
>なんとなく彼に形が似ているから、と彼女は男の名前にSと付ける。結末はまだ決まって
>いない。Sと彼女は彼女の書いている文章の中で出会う。墜ちてしまったのよ、と彼女は
>語る。小さいといっても飛行機は飛行機よ。鳥だったら良かったのにね、とSは答える。
>そうしたら街を壊すことも無かったし、地に墜ちたところで誰も気付かない。ええ、そう
>かもね。そろそろ行こうかな、鳥は空へと飛び立っていく。眺めていた街はもう無くなっ
>ている。遠くに海が見える。
ここはぐじゃぐじゃしすぎて良くわからりません。「彼女」と「僕」が文学についてあんましらん、彼は知っている。彼は「K」で、彼女の作った彼は「S」。でそのSと彼女は文章の中で出会って(僕が彼女と文章の中でであったように)、そこで堕ちてしまったこと語り、いつの間にか彼女が小鳥になっている。いつの間にか僕と同じになっている。
で、次に繋がる「海」がここで始めて提示される。
>ぼくは図書館の中に戻っていく。ある男の姿が目に入ってくる。身長はぼくとそう変わ
>らず、百七十センチ程度。季節はずれのダウンコートを着ている。坊主頭で三日か四日分
>の無精髭を生やしている。体格は良く、格闘技でもやっていたのだろうかとぼくは考える。
>彼は彼にしか聞こえない声でぶつぶつと言葉を呟きながら館内を歩き回っている。なにか
>探しているのだろうが。歩くとは片足を過去に残しながら進んでいくことだ、と彼女の想
像したSは言っていた。
ここはまるでわかりません。最後のは決め台詞ですかね。。。まぁ、多分色々残していきながら次の入れ子に持っていくみたいな感じなのかなぁとは思いますが、こいつは坊主頭の男は彼かもしれないんですが、身体的特徴が急にぽっと出てくると、なんか別人っぽく感じる。何か探しているんだろうなぁとは思いましたが「正直どうでもいいわ」ってなりました。ここまで読んで、疲れました。
問題は「〇海」で、これはもう適当に書いたんじゃないのっていうくらい関係が見えてこないなぁ。多分二連を下敷きにして書いたんじゃないかと思うんだけど、そういうことしかわからん、まだ散文の方がよめた気がします。
>男は海岸沿いを歩いている
>太陽の位置を確認することで
>向かうべき場所の
>おおよその方角は理解出来る
>あくまで昼の
>陽の出ている間に限られるが
>砂浜を、波止場を、
>街中を、波の上を、
>男は歩いていく
これはわかります。単なる描写です。
>女は男の後を歩いていく
>気付かれぬよう
>距離をとって
>声をかけてくる欲望を断りながら
「声をかけてくる欲望」を「断る」?欲望って断れるのか。というかかけてくる主体がわかりません。どっちがどっちなんですか。それとも敢えて違和感を持たせたのか。
>たまに受け止めながら
>遠くから、あくまで遠くから、
>泣き声が聞こえている
「受け止めながら」「遠くから鳴き声が聞こえてくる」ってなんだこりゃ。文章の繋がりの違和感を演出したいんだったら、散文の形式でいいんじゃないかなぁ。行替にすると短文の荒がメチャ糞浮き出る感じが強いんじゃないでしょうか。
>夜の間
追いかけっこから夜に入る。次は男と女が対比される?
>男は教室で暴行を受け
>仕事場で脳みそを焼かれ
>レトルトのコーンスープのように音をたてずに啜られる
>銃で撃たれ、耳と鼻を削がれ、
>目を刳り貫かれ、頭に頭巾を被せられ、
>首をはねられる
>血が流れて
>海へ混ざっていく
「レトルトのコーンスープのように音をたてずに啜られる銃で撃たれ」
ギャグですか?例えが冗長すぎて浮き過ぎじゃないでしょうか。しかもわざわざ否定をぶち込んで捻るアレが面倒です。
>女の屋根は爆撃され
>髪は刈り取られ
>強姦される
>暗闇が女の中に入り込んでくる
>壁も天井も清潔に塗られた
>五人部屋の端のベットに
>女は拘束される
>どうせ目は見えないからと
>花は無い
>雲に隠れたからと
>月は無い
「どうせ目は見えないからと/花は無い/雲に隠れたからと/月は無い」ここは固有の文脈があるかもしれない「目が見えないから」「花がない」っていうのは後に出てくる匂いの伏線かもしれない。月は「これから姿を現そうとしているのと同時に消え去ろうとしている。」から引っ張ってきたのかもしれない。ただ、「清潔に塗られた」ってなんだろ。これは正直他の人にも聞いてみたいんですが、曖昧すぎてわかんないです。
>男と女はどこかで出会わなければならない
追いかけっこしてましたからね。
>どこだろう?
>教えてほしいが声は聞こえない
女の声が聞こえない。
>花屋に寄る
>女の子は可愛い
>そうだろう?
可愛いですね。
>色だけ決めて後は任せる
>盲だからねえ
>香りはどう?
>花を近づける
>わかるよ、良い匂いだ
女は男のそばにいるのかなぁ
>場所を変え
>筆箱の男に会いに行く
>謝る
>何度も祈るように
「筆箱の男」ってなんだ「謝る」ってなんだ。もう勝手に祈ってくれ。
>陽はまだ出てこない
>男は海の上で立ち止まり
>(時間というものが存在し)
>振り返って
>(前へと流れを進めているのなら)
>波に腰掛けて待つ
>(きっといつか現れるのだろう)
>時間の端を両手で掴み引っ張る
>背負うように左肩に掛けて歩く
>追いつくように
>追いつかないように
もう一生追いかけっこしてろよって感じです。
・決別
>まだ海は青いのね、と彼女は受け止めるように手を差し出す。彼は愛しあうかのように
その手を掴む。簡単なことさ、と彼は彼女に言う。ええ、そうかもね。
僕は最初読んだとき、途中が読むの面倒になったので最後だけ読みました。「それで、ここで海に飛び込んで死ぬのかなぁと思いました。」だからまぁ最後わけわかんない内に死ぬ作品読むくらいなら、上にあげた漫画の方が僕にとっては面白いって書きました。
で、ここまで書いて僕何がこの作品にあるのか皆目分かってません。だから僕はこの作品をこう読みました。
「適当にだらだら書いて思いついた順に言葉を繋げて、一区切りが付いた所で散文をやめて、やめる為に格言っぽい言葉で適当に纏めて、で適当に二連のことを引きずりながら三連を行替えっぽくすることで詩の体裁を持ちつつ何やってるか分かんないものを提示することでポエジーを演出して最後の最後で、二項対立からはみ出した、追いかけっこの終焉と幕引きの為に二人を海に放り投げた」
以上が僕の読みです。これはもう全然詰まらないです。と言ってる僕も同様の書き振りで最近ずっと作品を書いていたので、この作品を読んでそのあり方はマジでやめようと思いました。少なくとももう少し文体だとか行替えにパワーがあれば僕だって分かんないなりに読もうとしますが、ここには惰性しかないです。 ('16/02/17 08:55:18)
- おでん :
「変態」は普通に「変身」でよいのではないでしょうか。
シャレのつもりなのは分かるのですが、雰囲気が壊れた感じがします。
例えるなら、ピカソの青の時代の絵に、ヒゲの落書きがあるような感じです。
そこでおどけなくてもいいのに、と思いました。
おどける必要があったのでしょうか? ('16/02/17 12:14:37)
- 遼旅 :
映画を観る気分で読めました。〈たしか雨が降っていたと思う。梅雨だっただろうか。ぼくは何度もこの空間に戻っていく。〉がすぐれていますね。予感があります。
文体も脱力してあって読みやすく、細部にほつれは見えるものの、あまり気にしませんでした。〈砂浜を、波止場を、街中を、波の上を、〉のならびが好きです。
〈まだ海は青いのね、と彼女は受け止めるように手を差し出す。彼は愛しあうかのようにその手を掴む。簡単なことさ、と彼は彼女に言う。ええ、そうかもね。〉という締めに、セカイ系を感じました。崖の上から終末を見下ろしているような。余韻があります。 ('16/02/17 16:04:22)
- 三台目 :
赤青黄さん、再レスありがとうございます。
何度か赤青黄さんの文章を読んだのですが、やっぱり何と返していいのかよく分からない。これはもう僕の能力の欠落が原因でしょう。
それでも、個別に何か同意したり、反論したり、聞き返したりというのは、なんとかやれるかなと、『三台目、はじめての返信』みたいな感じで軽く読んでくれればありがたいです。
>冒頭が凄く読み辛い。ここだけで読む気なくします。
読みづらいでしょうか。僕はまどろっこしいなとは感じますが、読みづらいとは思っていません。そりゃ自分で書いたんだからと言われれば、それまでですが、別の要因があるような気もします。
>この場合の「この空間」っていうのは「梅雨が降る季節、並びにその季節における空間の有り方」っていうのを指していると思うんですが、
これは違うと思います。最初に提示したのは、雨、梅雨かもしれないという予測、過去の断片を空間に置いて語るという単純なことだけですよ。勿論、提示出来ていないと言われればそれまでですが。本の変わりようもそれで説明できると思うのですが。
比較してもらった漫画については文章だけではなんとも言えないので、気が向いたら読んでみます。
>二連というか全体を通してですが、多分物事の二つの側面っていうのが作品の中では大事な要素として働いている。端的に二項対立と言ってもいいかもしれない。
言っていいのかな?
>こいつは坊主頭の男は彼かもしれないんですが、身体的特徴が急にぽっと出てくると、なんか別人っぽく感じる。
多分、別人です。
>「声をかけてくる欲望」を「断る」?欲望って断れるのか。
断れるんじゃないですか。
>「受け止めながら」「遠くから鳴き声が聞こえてくる」ってなんだこりゃ。
どうして、そこで区切ったのかが分かりません。
>「レトルトのコーンスープのように音をたてずに啜られる銃で撃たれ」
ギャグですか?例えが冗長すぎて浮き過ぎじゃないでしょうか。しかもわざわざ否定をぶち込んで捻るアレが面倒です。
ここは繋がってる。
>ただ、「清潔に塗られた」ってなんだろ。これは正直他の人にも聞いてみたいんですが、曖昧すぎてわかんないです。
聞いてみて下さい。
>女の声が聞こえない。
女?
>「筆箱の男」ってなんだ「謝る」ってなんだ。もう勝手に祈ってくれ。
筆箱の人って見たこと無いですか? 最近の若い人は見ないのかもしれませんが(それか金銭の問題かも)、僕は年に一・二回見かけますよ。
そしてぼくに出来ることは謝るか、祈るか、それぐらいしかないかなと。
>もう一生追いかけっこしてろよって感じです。
ここはちょっと面白いです。
こんなところで如何でしょうか?
あと、赤青黄さんの作品(『造花の街』と『おそらく、歯で終わる話』)を読んだんですけど、似てないんじゃないかなと。だからあまり悲観することも無いですよ。まあ、他の人にも聞いてみて下さい。
おでんさん、ありがとうございます。
シャレというか、品の無いおふざけですね。
「変身」のところだけではなく、この作品は全編そんな悪ふざけで溢れています。
「変態」のわざとらしさは鼻に付くと思いますが、そこでこの作品が悪ふざけだと気づいて貰えれば幸いです。
ふざける必要があったのか?と聞かれれば、まあ無いですけどと答えることしかできませんが。
遼旅さん、ありがとうございます。
僕は結構映画好きですよ。しっかり脱力出来ているなら良かったです。
前回ここに投稿した作品(十一月)の月間選評で、まあ選評という程のことは書いてなかったのですが、と確認してみたところ選考雑感なんですね。よく分からないですが。それで、そこにやれハルキストだ、ライトノベルだ、ゼロ年代だ、とさらっと書いてあるんです。僕は春樹さんも特別好きじゃないし、ライトノベルやゼロ年代と呼ばれる人達の作品をほとんど読んだことが無いのに、どうしてこんな事になったのだろうかと。じゃあ逆に寄せてみよう。読んだことの無い架空のゼロ年代を想定して、それに似せようとしてこの作品を書き始めました。だからセカイ系と言われてしまうのはしょうがないのかなと思います。悲しめばいいのか、泣けばいいのか、分かりませんが。 ('16/02/18 23:16:46 *1)