嗅覚だけで、空の色を判断することが、なぜこんなにも困難なのだろうか。「ぼくの体の中では、ゆうやけがはじまっている」肌に触れるものが、ぼくの毛先でなければいいと、もう永い事、祈っている。「だから目をあけない」祈っている。
視界の外でまつげが、揺れているのが朝のはじまり。少し遠くにつちふまずをみつけて、その奥に雨の音をみつける。夕べは窓をしめなかったから、たくさんの妖精が、忍び込んでいるはずだよ。春だ。狂おしいほど春だ。いい音が鳴っている、雨。水が窓際の畳に、さくらの花びら、に似た、冷たい足跡を、残していっている。春だ。
聞こえている、(ときどきは、きみもしてみたほうがいいよ、すうっといきをはいて、そのままちいさくなっていくんだ、目をとじて、くらやみはいちばんのみかたさ、のみこむのみこむ、体温がひくくなればなるほど、だれかが抱きしめてくれている)、気がする。
少しずつ忘れ物をする少女が、ぼくの部屋に住んでいる。きのうは左手首を路上に忘れてしまっていた。「雪がふっていたから、いそいで走ったの」ぼくは雨の水でそれを洗う。さくらの香りがして、溶けていく。雪。振り向いて、みつける、少女、笑って、笑ってる。「雪がふっていたから、いそいで、」いい音が鳴っている、雨。ここには、たくさんの妖精が、忍び込んでいるはずだ。
- 最果タヒ :
こんばんわ。ぬくぬく温室でそだった人間なのでびびっていますが、どうせ罵倒されるならばと、今までで一番評判のよかったものをわざとだしてみました。よろしくたのみます。 ('04/12/24 02:53:26 *1)
- d :
おはようございます。
クリスマスですので罵倒のプレゼントを差し上げます。
とても美しい詩ですね。言葉がやさしくやわらかく花開いています。
漏れは時々不眠症になり、今日も睡眠薬を飲んでも一睡もできなかったので著しくダルくて眠いのですが、3回読みましたが、長文ですがうんざりするようなことはなく、読めば読むほど心地良い言の葉の世界に浸ることができました。
最果タヒさんは独自の言語センスを持っておられ、既に自分の詩のスタイルを獲得しているようです。
以下、解らない点,改良できると思われる点を上げます。
第1連が、読み手に明確なイメージを伝えられていないと思われます。
>嗅覚だけで、空の色を判断することが、なぜこんなにも困難なのだろうか
大気の様子の気配は臭覚でも察知する事ができる場合がありますが、
冒頭でその事柄が「困難」である事が先ず告げられた意図が、以後に生きていないように思われます。
たとえばここで、あなたが都会に住んでいる人で、排気ガスやなんかで風の匂いなんて嗅ぎ分けることができる環境に無く,田舎に住んでいる人のようにはいかないと仮定します。
が、以後のふくよかな記述で、そのような環境によるものではないこと、そしてそのような外的な問題ではなく、内的な心象を通した風光の詩である事が明らかになります。
この行で語られる「困難」が、この詩全体のふくよかで瑞々しい春という世界に、どのような対項として提示されたのか解りません。
>肌に触れるものが、ぼくの毛先でなければいいと、もう永い事、祈っている
「毛先」と言う言葉が使われることに、イメージの連続性が無いように感じられます。僕は何のイメージも抱く事ができませんでした。
2連目以降は、すぺしーば、はらしょー。
心地良い気分にさせていただきました。ありがとう。
欲を言えば、かなり手垢がついた「妖精」という言葉は、この新鮮で独創的な詩には少し不似合いなような気がするので、もっと良い言葉が見つかるといいですね。 ('04/12/24 08:10:40)
- Canopus(かの寿星) :
ことばがツクシの若芽みたいにツンツンしてるね。
いわゆる五感、「視覚」とか「聴覚」とかのほかに、詩には「ことば覚」と
でもいうべきものがあって、タヒさんはこの「ことば覚」に優れていると思
う。からだが拡散したりちいさくなったり、同化してみたり異質なものと気
付いてみたり、構成がかなり巧みです。
『「ぼくの体の中では、ゆうやけがはじまっている」』とか、タイトルの意
味は、忘れ物をして来た少女に託してしまったりとか、そこらあたりにぼく
は安易さとか強引さとか、そんなものを感じたなあ。全体的に視れば、やっ
ぱり1連めに異質さを覚えます。心地よい雨のリズムのなかでは、あんなにも
強い拒絶はいらないはずだよ。
うん、でも、読んでて楽しかった。ありがとう。 ('04/12/24 21:48:39)
- 最果タヒ :
ダーザインさん、ありがとうございます。
なるほど一連目は準備運動として書いてしまっているので、頭が活発になるときとずれがあるのかもしれません。
実際、「嗅覚」と「毛先」は実際にわたしが生活しているうえでおもったことでした。リアルと離れられずに書き始めてしまっている…。
ですので他者へのイメージへの助けが少なかったのかもしれません。他の詩はかいていくうちに広がっていくものでしたので、細かく書けたんですけれど。。
言語センスについてはとてもうれしいです、ありがとうございます。なるべく自分の直感、本性みたいなものから言葉としてあふれてきたものだけを詩には書こうとしているので、、。スタイルはまだ自分には違和感があります。もっと直感的に書けたらいいと思っています。
美しい、と言っていただけてありがとうございました。「妖精」は、わたしにとっても違和感があったのですがまだまだ代わりが見つかりません。これから精進して見つけようと思います。ありがとうございます。
かの寿星さん、ありがとうございます。
「ことば覚」。最近映像が浮かんだなら映像で、音が浮かんだなら音で、そしてことばが浮かんだ時だけは言葉で表現していこうとおもっているので、そういっていただけるのはとても幸せなことですし、「言葉は視覚でも聴覚でもない、もしかしたら感覚ではむりなのか」という疑問に最近ぶち当たっていたのでうれしいです。
第一連は「現実のわたし」の断片にしがみついてしまっているのかもしれない。ゆうやけ、も書く前のわたしがおもっていたことをそのまま書いただけでした。断片すぎるのかもしれませんね。伝えることがもっともっとうまくなれたら。いや、その時に感じたことだけをリアルタイムに書いていくことだけに専念していかなくては。ちなみに「拒絶」は夢のなかで、目覚めてからが第2連以降のつもりで書いていました。つもりで、ってのがいかんのでしょうね、きっと・・。
ありがとうございます。
第一連について、うすうすかんづいていたことはあったのですが、お二方の言葉は身に染みました。ありがとうございます。
書きながら調子を整えていこうとしてしまう癖を治したいとおもいます。
ほんとうに、ありがとうございました。
では、いいクリスマスを。 ('04/12/25 02:35:17)
- かけだし :
全体として、よくあるイメージの重ねがくどく感じる。
それは、妖精=春 のように、私は構成もうまいとは思わない、詩人というレベルにおいては普通だとおもう。このぐらいの構成力は、それこそ大手の詩の投稿サイトに投稿されてる作品としてみたら普通の構成力だと思う。一般的に使いやすい言い方を変えれば、安易で使い勝手のいいイメージを連想させる単語しか使われてないからこのぐらいの構成力は当たり前で、私として全体として見せ所がないように感じる。というか、展開が予想できてしまい私は楽しめなかった、物忘れ→体の一部 この辺のイメージの連想もよくあると思う。 ('04/12/25 05:04:53)
- 最果タヒ :
かけだしさん
安易ですね、たしかに。ポップなものがたくさんでてきた詩だったので多くの人が読んでくれていたのだとおもいます。
物忘れ→体の一部は意図するところではありませんでした。偶然の積み重ねでポップになってたんでしょうか。
見せ所はわたしもない詩だと思います。雰囲気のみだなあと思っていたので、わたしもたぶん他者の詩として読んだらあなたと同じことをいうとおもいます。 ('04/12/25 17:21:19)