◇ No.286 , '11/09/24 02:53:51 作成

5478 : ラブソング  01 Ceremony.wma '11/08/25 22:46:04 *3  [URL]

僕は夜の闇の中を、
駆けずり回った、
まるで逃げ出すかのように、
呪詛の言葉を、
優しく、
花にささやくように、
そして、消えていった、
唇と、それをぬらしたであろう、
唾の間を、
何度も、何度も、
怒り狂いながら、
駆け回った
すべての死んだ人々の、
唇の、温かい、記憶
と、体液の、生ぬるさの、
中で、
もだえ苦しみそうな、
地獄のような、
天国を、
見つけた、

皮膚と皮膚が、
こすれあって、
なまぬるい
熱を放出する、
それがどんどん、
この世界を覆い始める、
振動するたびに、
気温が上がり、
誰も彼もが、
眩暈の中、落ちる、

 
酒場の隅で、本をめくる
少年を蹴飛ばす
たびに、歓声が起こる
「ここじゃ、そんなものは何もうみださねぇ!」
罵りと酒と唾が入り混じって、
熱帯を呼び込む、
朝からのみっぱなしの、
親父どもの、頭の上に、
熱い雨、
雨の成分は、濃いアルコールと、
少量の汗と、堕落で、
「うちのかかあのののしりったら
 天使さまもびっくりおっかないぐらいなもんだ」と、
すきっぱの間から笑い声を響かせる、
―そしてようやくここで、初めて名前を持つ登場人物が現れる
「よう、ラクリ!、てめぇんとこのかみさんは未だに祈ってやがるのか?」
「聖母様、聖母様、と、まるで病気みたいにのたうちまわって一日中いのってんのか?」
「ここらじゃ、イカれちまうときにはイカれちまうのさ。いかれないために酒をのむんだよ。
 かかあどもは、いかれないために俺達を罵り、小娘どもはいかれないために、ガキどもと
 こっそり会うのさ。」
「ラクリ!てめぇもイカレちまわないように酒を飲めよ。」

―ラクリのよめ、ファトナの一日
 彼女の部屋は一日中いすの上に座り。天上を見上げて、手をこすり合わせながら祈っている。
湿気となまぬるさに満ちた部屋の中で、すべての扉と窓を閉め切って、彼女は、何十年も前から
祈っている。彼女は一切の家事も、一切の交流も持たない。ラクリと口を利くことも無ければ、
勿論、ラクリの畑仕事で鍛えられた体を舐めることも、彼の太く固い陰茎を勃起させて、口に
ほうばることもしない。彼女の祈りは声を発さない。

カラスが屋根の上で、池で水浴びをしている。黒い色は決して落ちることが無い。
水面を揺らがしてそれを見つめては喜ぶ。

雨の中、ラクリがテニスラケットを持って、畦道を歩く。彼の足取りは、いつだって泥に汚れている。
天気は彼のためにあり、彼は雨の中で、テニスラケットをいつも握っているが、彼は一度も、テニスを
したことがなければ、ルールもしらない。テニスラケットは彼が、街の市でなんとなく買ったものだ。
その日以来、ファトナは祈り始めたのだ。

昨日から、ラクリのテニスラケットに蟲が繭をはった。白い繭がちょうど、テニスラケットのガットの
中央にはられており、ラクリはそれをわざわざひっぺがえそうとも思わなかった。ラクリには、テニスラケット
などそもそもどうでも良いのだ。

ファトナは、昨日から、以前よりまして激しく祈り始めた。あまりにも祈りが激しいので、それはほとんど、
呪詛のようになって、言葉にならない声で、うなっているだけ。彼女は癲癇の発作のように、何度も体を、
反ったり、ねじったりしながら、一日を過ごしている。

(どいつもこいつも皆イカレちまえ!)
(ろくでなしどもを世界に呼び込め!)
(俺達の醜い笑い声で満たしてやろうぜ!)

矮小な悪魔が一匹、天使に化けようとして失敗する。同じように、傲慢な天使が悪魔に化けようとして失敗した日。
テニスラケットの繭は裂けた。しかし中身は空っぽだった。そこには何も詰まってはいなかった。ラクリは、それすらも
気にしない。繭にもテニスラケットにも興味が無いのだ。
ファトナは、いすから立ち上がり、雨の中にいた。ラクリは雨の中テニスラケットを持って畦道を歩く。
二人の足には、泥がついている。
泥から、手が無数に沸いた。
手が二人の足を引き止める。
ラクリは家が見える場所まで来て、ファトナとであった。
「狂っている!何もかもが!」
そして、ラクリはファトナをテニスラケットでぶん殴った。何度も。
ファトナは、負けじと爪を立てて彼をひっかいた。
爪あとからは血が流れ、テニスラケットに殴られた場所は青く内出血した。
二人は、雨の中を、殴ってはひっかきあった。

雨が上がる。
矮小な悪魔が一匹の天使に化けようとして失敗する。傲慢な天使が悪魔に化けようとして失敗する。
二人の間に、穴が開く。
疲れた二人が、ずぶぬれの服を掴んだまま、穴を見つめる。
穴がじょじょに大きくなる。
二人は掴んだ手を離す。
穴はどんどん大きくなり、しまいに、二人はお互いを点としてか認識できなくなるほどになった。
穴の中に、ひざを抱えて落ちていく人が無数にいる。数え切れないほどの人が落ちていく。
二人はそれを見下げる。
ひざを抱えていた人たちが、落ちながら起立して、二人を見上げる。
雨上がりの太陽が、二人のずぶぬれになった服や髪をなでて、ゆげをたてさせる。
湿度があがり、髪の毛は静かにうなだれる。

二人はまっさかさまに落ちていく人々を見つめる。
落ちていく人々は二人を見上げる。
全員がはにかんでいる。

(まっさかさまにおちていって、すべってころんで)
(ろくでなしどもが笑う、笑う)
(おいこら聴け、全世界のろくでなしども!
 この世界をろくでなしどもで埋め尽くそうぜ!
 いくら気取ったところで、もうお前らはろくでなしだ!)

隠喩を閉じる、
多くの濁音から、言葉が抜かれる、
貴方の韻律は、夜に始まる、
君/冬に凍える、手に、
瞳は凍らなかった、眼差しを、
たたえてて、
孤独は、涙を呼ばない、
その、手、
多くを掴むには、
小さすぎた手
君/その手を、開く、
小さいものたちのために、
何度も
君の手/その手は、多くをつかめなかったが、
小さなものを、掴むために、ある手、

僕の、魂は、今、どこへ行けばいいか、
何をすればいいか、
秋に、落ち葉を踏みしめるように、鳴る、
魂の音、
ぱちぱちと、燃え上がって、
君と僕を焼き尽くす、
この炎を、
どうやって、
凍えさせればよいのか、

君/その手を、
僕に、
小さな、
魂しか持ち得ない、
僕に、
少しだけ、
僕の魂を凍えさせるために、
その手を、

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5522 : 腹を裂く  RetasTares '11/09/08 09:11:31



肉食獣が獲物を狩る時
まず切り裂くのは
下腹の付近
内臓を引きずり出して
から食べる

切腹も下腹を
裂いてから
首を切断する

禅僧が弾圧を受けて
逃れ切る事が
出来なかった時
腹を裂き内臓や腸を
引きずり出して
木の枝にぶら下げ
血を吐きながら
悪政を罵倒し
呪い果てた


俺が餓鬼の頃
夜店のうなぎ釣りで
釣って持ち帰った
うなぎ…
そのうなぎを見るなり
「生かしとったらもったいない」
と言い
さっそく
鰻の腹を裂いて
焼いて食ってしまう
まるで無邪気な餓鬼にでも
施している様な
そんな親父だった


死んだ親父の腹を
解剖すると言って
医師が裂く
珍しい部位に
在る癌だと言う
それを病理標本
にしたい
理由はそんな腹だった


俺は亀頭の腹を
裂いた
アイスピックで
穴を開けて…
自慰のやり過ぎで
尿道が興奮する
それが好かった


いつもの川面に
銀の翼を広げて
飛んだり跳ねたり
カエルを捕らえて
玩んでいる
鷺がいた

カエルの腹を
引き裂いて喰っている


朝陽の中
秋桜がさいている
その返り血を
浴びて
はらはら美しかった

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5511 : 緑が燃えている  メタボでGO!! '11/09/05 17:48:02

草が燃えている
緑色が青臭い揮発性の気体を発し
青く濁った炎を上空へ押し上げている

葉っぱの上で
虫はのそりのそりと
甲殻の鎧をまとい葉をつたう
複眼は陽炎のように 燃え立つこの緑の熱気を
味気なく見つめている

烈風の如く
燃えあがる、萌えあがる
この糞緑
一山いくらの大安売り
糞暑い、頭痛がしてくる・・

とにかく、あたしゃねぇ〜と、
生まれたらスケジュールびっしりに書き込まれて
途中で別の生き物に食われるのも想定内だけど
虫はとにかく死ぬまで急いで生きている

人知れず 虫
杉の植林された広っぱの雑木の葉の上で
頭を前足で つるりつるりと掻いている
雨が上がって 少し涼しくなったから
葉の裏から するりと葉の表に出てみた
靄がかかり 
小さな蜘蛛の巣の水滴が 虹色に浮かぶ
嗚呼、よきかな、
不思議な生業を
モザイクナ複眼で眺める

陽射しが始まる
暴力大王の熱波だ
びしりびしりと炙るように照る
草が再び両手を天に向けて
うだる熱を浴びている
陽炎が舞い 
ゆったりとした重低音の
大地の宴がまた始まる

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5521 : (無題)  紳士 '11/09/08 04:37:10

   起源.
 存在と存在との融解は、宇宙という母胎の中で創造されるのであって、生命は存在を世界という空間で認識し現象させ、存在と生命は、宇宙の有限の贈り物を共有していて、人間はその宝箱から、無限に世界を創造する知恵を貸し与えられていて、そのために地球に人間は存在する事ができ、存在と生命という動力を発現しうる船の舵取りを任されていろのでしょう。よって、人間も宇宙に内在する存在にすぎないが、世界の内で存在しなければならない一生命であって、そのうえ、統べての存在と生命の現象を認識し、存在したと定義する諸々の概念も保持しなければならず、それゆえに宇宙は人類に地球という社会を発生せしめたのであって、こういった関係の客観視した主観性を有する生命が地球という概念を知覚させられ、こうした所以を総括して人間は地球を住居として定住する意義が成立し、これらの総体を移転するだけの能力が人間に現れたなら、そこを地球として良いだろうし、安息の地として生活を営めるでしょう。そして、こういった基本的な共通認識に立脚して生存する営みが生命活動と呼ばれるべきであって、本源的な闘争は宇宙の始まりの無の時点で行われていたのであって、人間は宝箱の中から世界と共生するために、協調して知識と現象をそれぞれ分け与えながら、宇宙という生命の歴史の上で、学びながら共に発展して行かなければならないのではないでしょうか。
            平成21年11月4日  
魂との対話
 死が今日私の前にある
 病人が治ったように
 病人がいえて外をあるくように
 死が今日私の前にある
 じゃこうの香のように
 風の日、帆かげに座る時のように

   平安
 あまがけるもの、あまがけるもの
 人びとよ、なんじらの間から王は飛び立つ
 かれはもはや地上にはなく、かれは天にある
 なんじ市神は、王の精霊はなんじのかたわらにある
 かれはサギのように天を走る
 タカのように天に口づけし
 イナゴのように天に飛びはねる。
                    同、翌朝

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5508 : 陽の埋葬  田中宏輔 '11/09/05 06:43:37



わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招いて悔い改めさせるためである。
(ルカによる福音書五・三二)



目がさめると、アトリエの前に立っていた。

──子よ。                                        *01

扉の内から声がする。

──わたしの子よ。                                    *02

死んだ父の声がする。

──わたしはここにいる。                                 *03

どこにいるのですか。

──子よ、わたしはここにいます。                             *04

ここにあるのは、絵と骨のオブジェばかり。

──子よ、近寄りなさい。                                 *05

おまえは死んだ鸚鵡、ただの剥製の鸚鵡ではないか。

──わたしです。                                     *06

おまえが父だというのか。

──わたしがそれである。                                 *07

父の霊が、おまえに取り憑いたとでもいうのか。

──わが子よ、今となっては、あなたのために何ができようか。                *08

おまえに何ができる。わたしに何をしてくれるというのだ。

──あなたがすべてのことに恵まれ、またすこやかであるようにと、わたしは祈っている。    *09

そのようなことを告げるために、わざわざ、わたしをここに呼び寄せたのか。

──子よ、わたしの言葉にしたがい、わたしの言うとおりにしなさい。             *10

おまえの口が語る、その言葉とは何か。

──目をさまして、感謝のうちに祈り、ひたすら祈り続けなさい。               *11

いったい何のために祈れというのか。

──信仰に基づく神からの義を受けて、キリストのうちに自分を見いだすようになるためである。 *12

なぜ、キリストのうちに自分を見いださなければならないのか。

──新しいいのちに生きるためである。                           *13

おお、おまえは、死んだ父のように、聖書にある言葉を繰り返す。

──あなたはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である。                *14

いいや、一度として、愛してはくれなかった。愛してなどくれなかった。

──心のねじけた者は主に憎まれ、まっすぐに道を歩む者は彼に喜ばれる。           *15

これを見よ。この指を見よ。父の手によって折られた、このねじくれた指を見よ。

──むちを加えない者はその子を憎むのである。子を愛する者は、つとめてこれを懲らしめる。  *16

その言葉を耳にするたび、わたしの父に対する憎しみは、ますます増していった。

──わが子よ、わたしの言葉に心をとめ、わたしの語ることに耳を傾けよ。           *17

ああ、もういい。もう、たくさんだ。おまえは、聖書にある言葉を繰り返すだけではないか。

──わたしの子よ、あなたはイエス・キリストにある恵みによって、強くなりなさい。      *18

むしろ、ユダの恵みにこそ、あやかりたいものだ。

──愛する者よ。悪にならわないで、善にならいなさい。                   *19

わたしのこころは、肉の欲に満ちている。その肉の欲は大いにはなはだしく、欠けるところがない。

──御霊によって歩きなさい。そうすれば、決して肉の欲を満たすことはない。         *20

わたしのこころが癒されるのは、ただ肉の欲に満ち足りたときのみ。

──肉の欲を満たすことに心を向けてはならない。                      *21

まだ女を知らぬ、美しい少年たちよ。その美しさは、わたしを虜にしてやまない。

──あなたは女と寝るように男と寝てはならない。                      *22

むしろ、その美しさを前にすれば、わたしの方が女となるのである。

──わが子よ、悪者があなたを誘っても、それに従ってはならない。              *23

誘うのはわたし、つねにわたしの方から誘うのである。

──子よ、わたしの言葉にしたがい、わたしの言うとおりにしなさい。             *24

わたしには、この古釘で、おまえの腹をかき裂くことができる。

──罪を犯してはならない。                                *25

きっと、おまえの腹のなかには、聖句がぎっしり詰まっているに違いない。

──ここから出て行きなさい。                               *26

いま、それを抉り出してやる。

──立ってこの所から出なさい。                              *27

この紙屑は何だ。聖書ではないか。聖書のページを切り取って丸めたものではないか。

──手を引きなさい。                                   *28

この聖書の切れっ端は、父がおまえの腹のなかに詰め込んだものだな

──それだけでやめなさい。                                *29

こんなもの、みんな取り出してやる。それでもまだ、おまえは口をきくことができるだろうか。

──もうじゅうぶんだ。今あなたの手をとどめよ。                      *30

おお、父よ。父ではないか。なぜいまさら、そのような姿で現われるのか。

──あなたは愚かなことをした。                              *31

愚かなこととは何か。

──あなたはしてはならぬことをわたしにしたのです。                    *32

いったい、わたしが何をしたというのか。

──自分の父または母をのろう者は、必ず殺されなければならない。              *33

世には、呪われるべき親もいよう。あなたは、わたしにとって、呪われるべき父親であったのだ。

──どうぞ主がこれをみそなわして罰せられるように。                    *34

何という言葉を口にするのだろう。父よ、それが、わたしに聞かせたかった言葉なのか。

──あなたは死にます。生きながらえることはできません。                  *35

父よ、わたしの言葉を聞いているのか。

──神はあなたを滅ぼされるでしょう。                           *36

父よ、わたしの言葉を聞いているのか。

──地のおもてから、あなたを滅ぼし去られるであろう。                   *37









References


*01:創世記二七・一、罫線加筆。

*02:テモテへの第二の手紙二・一、罫線加筆。

*03:創世記二七・一八、罫線加筆。

*04:創世記二二・七、罫線加筆。

*05:創世記二七・二一、罫線加筆。

*06:サムエル記下二・二〇、罫線加筆。

*07:マルコによる福音書一四・六二、罫線加筆。

*08:創世記二七・三七、罫線加筆。

*09:ヨハネの第三の手紙二、罫線加筆。

*10:創世記二七・八、罫線加筆。

*11:コロサイ人への手紙四・二、罫線加筆。

*12:ピリピ人への手紙三・九、罫線加筆。

*13:ローマ人への手紙六・四、罫線加筆。

*14:マルコによる福音書一・一一、罫線加筆。

*15:箴言一一・二〇、罫線加筆。

*16:箴言一三・二四、罫線加筆。

*17:箴言四・二〇、罫線加筆。

*18:テモテ人への第二の手紙二・一、罫線加筆。

*19:ヨハネの第三の手紙一一、罫線加筆。

*20:ガラテヤ人への手紙五・一六、罫線加筆。

*21:ローマ人への手紙一三・一四、罫線加筆。

*22:レビ記一八・二二、罫線加筆。

*23:箴言一・一〇、罫線加筆。

*24:創世記二七・八、罫線加筆。

*25:エペソ人への手紙四・二六、罫線加筆。

*26:ルカによる福音書一三・三一、罫線加筆。

*27:創世記一九・一四、罫線加筆。

*28:サムエル記上一四・一九、罫線加筆。

*29:ルカによる福音書二二・五一、罫線加筆。

*30:歴代志上二一・一五、罫線加筆。

*31:サムエル記上一三・一三、罫線加筆。

*32:創世記二〇・九、罫線加筆。

*33:出エジプト記二一・一七、罫線加筆。

*34:歴代志下二四・二二、罫線加筆。

*35:列王紀下二〇・一、罫線加筆。

*36:歴代志下三五・二一、罫線加筆。

*37:申命記六・一五、罫線加筆。

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20110905_356_5508p


5518 : 廃人其の1, 其の2  大丈夫 '11/09/07 01:11:26  [Mail] [URL]

 廃人其の1
廃人である人を見た。
廃人の瞳は虚ろで、空の一点のみを凝視していた。
廃人は何を思っているのか、タバコを吹かしながら全く動かない。
私も嫌な不安を感じながらも、共にその場を動けなくなった。

怖いというのではないのだが、何故か自分の中にある空虚感を、
見せ付けられたようで、一瞬ひきつけられた
世界はその場だけ、時が止まったモノトーンの風景を呈していた。
私はとても不気味な嫌悪感をもって、目を逸らした。


 廃人其の2
ほとんど白髪の老婆は、にやけた笑みで私の方へ向かってきた。
私のくわえタバコを欲しがって、どんどん近づいて来る。
その笑みは、一度目線を合わすと尋常なものではない事がうかがえた。
私は、その前歯のまったく無い、うす気味悪く微笑んだ瞳が迫ってくると、
身震いせざるにはいられなかった。
まるで不気味に迫るお化けの様な、その姿は一生忘れられないだろう。


鏡を見て自分の顔をじっと見つめると、瞳が虚ろな瞳を見つめ、
又その見た瞳を見つめると、眼が潤んでしまった。
悲しいかな、本当の自分の顔は、如何にしても見られないのだ。
 

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20110907_462_5518p


5494 : 蜂塚さん  case '11/08/31 21:34:08

蜂塚さん




添乗員は無駄に喝采して 本朝に埋ずまる蜂に似ている
このバスの乗客は あたしだけだったはずなのに
すべての補助席に空白が充填されていて 息苦しい とても

あたしが飲む
酔い止めの薬は添乗員のお姉さんが運転手さんから預かったものとのこと
「蜂塚さんっていうのよ」
耳たぶの黒子を避けるようにピアスをしている
目の下の隈が濃いお姉さんのハンドクラップ

パチ  パチ  パチ

  パチ  パチ  パチ

    パチ  パチ  パチ

蜂塚さんは一言も喋らずアクセルを踏み込み
あたしは 胸のスカーフをそっと緩めて
ぼんやりした風景の残像一つ一つに
黒子を添乗させていくお姉さんに似た脚の長い蜂を パチンと


**


高校生のころ
休みの日、視聴覚室の前にある広い
廊下で 
あたしたちはお互いの耳たぶにピアッサを噛ませた

髪の毛の絡んだお互いの耳たぶを
ピアッサは噛み砕き
いつしか視聴覚室の扉が開いても聞こえてくる音はなくなっていた
だけどあたしの耳たぶを針が貫通することもなく
運動部はいつも走ってばかり
あたしはずっと膿んでいた



大学生のころ
旅先の宿、脱いだ靴のなかで
あたしは刺された
人差し指の爪の生え際から産卵管の抜けない蜂が脚をばたつかせている
あたしは刺されたままにしておけなかった

されば脚を掴み地面に叩きつけるも
あたしのことを見向きもせず
蜂は白樺を抱く山の稜線に沿って
飛んでいった
あたしはたちまち赤黒くなった脚先を見つめながら
充電の切れかけたケータイを開いた
そしてアドレス帳の「わ行」に
メールを一斉送信した
しかしMAILER DAEMONさんからしか返事が来なくて
そのうちディスプレイの明かりが消える



本朝に埋ずまる蜂に似た社会人になったころ
あたしは無口な運転手の運転するバスの添乗員だったり
そのバスのなかで運転されたりしていた
すべての補助席を倒して
誰もいないバスのなか 押し倒される
蜂塚さんに脚を舐められながら
なぜかあたしはセーラー服を着ていて
皺にならないように畳まれた二人の制服を見ている
誰かが添乗員の服装で 手を叩いていた
耳たぶの黒子みたいなかさぶたを甘噛みしつつ
蜂塚さんは突き入れてくる



すると

激しく前後に揺さぶられ

ぼんやりした風景の揺さぶりが

これまであたしに刺さってきた何もかもを

世界に向かって逆流する陽光みたいな蜂にしてしまうと同時に

パチン

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20110831_238_5494p


5506 : 8月のバガデル   織田和彦 '11/09/05 00:13:03



黒ブチの
仔猫の彼女がいなくなって一週間

去勢手術を受けるために入院をし
退院した翌日に
ベランダの3階から飛び降りて以来
姿を消した仔猫

キッチンのコンロのある
隅っこがとても大好きで
そこでよく大きな
伸びをしていたが

3階から下はコンクリートで
まだ幼い彼女の足には 
たぶん
とても負担だったろう

きっと辛い骨折でもしているか
今もどこかで
その足を引きずりながら
歩いているに違いない

外の世界へ
僕が巻きつけた
レースのスカーフを首に巻いて
きっとどこかの町で
ノラをしているに違いない彼女


部屋の玄関の水槽が割れて
熱帯魚たちが
水の泡の中に溢れ出した

もちろん
タイルの床は水浸しだ

このワンルームマンションの
不安げなバランスと
欠けた器の破片に体を反らす
魚たちの群れが
一勢に口を開く


部屋から10分の
ショッピングモールの植え込みで
眠っている仔猫をみつけた

黒ブチの顔を
眠たげにこちらへ向け

プンっと
そ知らぬ顔だ
首に巻いた赤いスカーフも
もう真っ黒で

胸の中に彼女を抱き上げると
ツンと
尖った耳を
僕の頬にすりつけ
にゃーお ひと鳴き

適当なサイズの水槽をショップで買うと
車に乗せた
バタンっとドアを閉めると
後部座席でブチ猫の彼女が

水槽に首と右手を突っ込んで
がりがりと 
爪で内側を引っ掻いてる

「帰るまでに その水槽壊しちゃうなよ」と僕は
バックミラー越しに語りかけ
キーをひねりエンジンを吹かすと
朝食の時の
マーマレードが切れていたことを思い出し

ウインドウガラス越しに外をみつめた
真夏の25歳
それは8月のバガデル 僕らの思い出

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5486 : 亞流気眼出巣の瞑想  一人の少年 '11/08/27 19:46:55

           亀と兎と、コペルニクス的展開

 亀は、賞金の新しいお家を目当てに、競争に出る。
 兎は、何時も競争に、出されるたびに、疲れるし、負けるので、一つ勝ってやると、競争に出る。

規則は簡単、百メートルの円環グラウンドを速く走った方の勝ち。
真夏の茹だれる暑さの下で、大観衆の中、よーい、どん、の、音が聞こえた。
亀はいつも通りの戦術で、兎はひと戦略ありの顔つきで一歩遅れる。
亀は、お家を抱えながら、健気に重たい一足を先に進ませる。
兎は、いつものねぐらの穴と、勝利を確信して、後続する、
兎は、亀に言った。ねえ、亀君、今年も君が勝ちそうだね。僕は、いっつも、君に負ける度に悔しい思いをしているんだよ。それにね、君には、いっつも家が有って、頭が良いせいか、僕より先に、先手に前に出れるでしょ、だから、いつまでたっても、君を追い越せないのに、君は、時々、お家の中にすっぽりくるまって、時々お休みとまでくる。僕は、とっても、君が羨ましいよ、だからさ、僕に勝ち方を教えてよ。
亀は、言った。兎君、僕だって、ただ楽に勝ってる訳じゃないんだよ、君は脚が早いし、ルックスもいいし、人気もある。だから、考えたんだ。君より早く、一歩踏み出してしまえば、君がどんなに脚が早くても、僕には、勝てないって事をね。まあ、今更解った所で、どうにも成らないと思うけどね、君。
兎君は、一言だけ、言った。亀君、秘密を教えてくれて有り難う、悪いけど、今日は、僕が勝たせてもらうよ。
亀君、君ねえ、負け惜しみをもう言っているのかい、君はもう、手遅れなんだから、僕はまだ新しい自慢のお家で、一休みさせて貰うよ。
兎君、そうこなくっちゃ。

突然、大観衆からどよめきが走った。なんと、兎君は、円環グラウンドを逆走し始めたのだ。
もの凄い早さだ、亀君が二三歩しないうちに、ゴールライン一歩手前まで、来てしまった。
大観衆は、歓声を上げた、今年は、兎君の勝ちだ。
そして、なんと兎君は、穴を掘り始めた。そして、中に入って、ゴールラインを見つめながら、休んでいる。
大観衆は、両勢を応援し始めた。
いいぞ、兎君。いいぞ、亀君。

亀君は、なんだか解らない応援に、焦り始めたが、前に兎君の姿は、見えないので、全速力で、休む事なく、負けるもんかと、ただ歩いていた。

兎君は、あまりの展開に興奮しすぎて、夢の世界に入ってしまった。優勝台に立ち、大観衆の絶賛の嵐の中で、新しいお家の穴と、新しい彼女の事を。

そして、とうとう、大観衆の怒号の嵐が絶頂になった。亀君が、ゴールラインの二歩手前まで、来たからだ。観衆は、総立ち、賭けまで始まった。亀君にも、兎君にも、国家予算ほどの掛け金が集まった。

亀君は、目を疑った。あの、兎君が、何と自分の、後少し先に、穴の中で、こっちを見ながら、寝ているからだ。彼は、必死になってしまって、伝説の、神様が起きてしまうほどの、大きな足音で、一歩手前まで来た。

兎君は、どすんという、頭が割れるほどの、大音響で、夢から覚めてしまった。彼も、焦った、亀君が一歩手前まで来た、よーし今年こそは負けられない。亀君が、一歩出す前に、こっちがラインを切るんだと。

大観衆は、この神がかった激戦に、全てを賭け、亀君と兎君と己の運命に、祈り、静まり帰った。

ゴールの声がした。さて、どちらか。
兎君、念願の初優勝。
大観衆は、叫び声と共に、グラウンドに雪崩れ込んだ。

さてさて、その年から、亀君、兎君、競争はなくなり、新国家が誕生し、観戦も闘牛に変わった。
ところで、その後の、彼と彼は、どうなったのだろう。
二人は、賞金と掛け金の上がりを、二人で山分けし、豪邸を立て、結婚し、いつまでも仲良く、暮らしましたとさ。

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5514 : 酔生夢死   '11/09/05 19:23:33

叩きつけられたウサギのぬいぐるみが
しぼり出す悲鳴で壊れていくセカイ
ようやく整列が終わったと思ったら
次々に銃殺されるギムナジウムの少年たち

お前の求めるものはどこにも存在しない
さらに言うなら最初から存在しなかったのだ
虚しい宝探しに費やされたお前の人生
それを嘲笑う男は垢と悪臭にまみれている

 ワタシは正義を探し続けているのです
 それは愛よりも希少価値があるのです

負け惜しみと知りつつ言わずにはいられない
損失は少しでも回収しないといけないから
昨日は肉体の数値を気にしていた俺たちが
今日は機器の数値に怯えながら歩いている

銀色の光が降り注ぐ冬の午後に
誰もいない校庭を疾走する少年兵
油断すると足が地面から離れていき
そのまま空を飛んでいきそうになる

 ソレは何と遠い所に行ってしまったのだろう
 指笛を吹いても戻ってくる気配がない

幼い日の黄昏を永遠へと接続するために
セーラー服を着た老婆が今日もスキップする
(彼女はいまだに気がついていないのだ)
西風の香りを最後に嗅いだのはいつだったか

裏切られた気持ちで歩き続ける歩道から
母親の手が無数に生えてくるのが見える
想い出をブチ壊すノイズ! ノイズ! ノイズ!
子宮の呪縛が永遠だと思う哀れさ

すべては真夏の午後の眩暈のようなものだ
天を仰いで手をかざせば終わりが降ってくる
老いた手の平を見つめ続ける俺の背後では
生まれたばかりの赤ん坊が泣き叫んでいる

こうしている間にも俺たちの宇宙の片隅では
キボウという名の種子が弾け飛んでいる

 たどり着く大地はあるのか
 水はあるのか光はあるのか

何の保証もないからこそ旅立つのだと
私の背後で父親の声が聞こえる
もうそんなに大きくなったのですか
本当にあっという間の人生でした

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5411 : 中央広場  美裏 '11/08/01 06:16:51

死んだ目をした少年が
中央広場に立ち尽くしている
お母さんはいないだろう
ぎゅっと握られた風船は灰色で
中に小動物でも仕込まれているかのように
不気味に、小刻みに揺れていた
風も無いのに
…………
まっ
わたしには関係ないですけれど
ソフトクリームに
多種多様のチップが散りばめられたやつを
口元に持っていって舐めた
しかもそれはうまい
文句なしだ
空では太陽がガンガン照っちゃってるし
どっかの国のスラム街のアピーだかヤンカルだとかそういったやつらを皮膚ガンにしちゃうんだろうね
わたしのUVケアア
それをなめるなよ
紫外線とか地球から生きて帰さないですから
ここがお前らの墓場
紫外線の親父とその息子の頭蓋骨を破壊せしめる
そして君が代を斉唱してわたしの勝利をきみは祝え
ラッパも追加
日本酒のイッキ飲み
「たのしすぎるなら、うたえばいいとおもうよ」
タンバリンとかを殴打して
いえーい

笑顔で
そんなことをわたしは少年の肩をビシバシ叩きながら言った
(あれ、こいつだれだっけ?)
ふと顔を怪訝そうに覗き込む
なあんだ、さっきの少年じゃーん
えっへへー
「じんせーってえ、たのしいれえ」
少年はこちらを見て言った
「そうですね」
ちいさく笑った
「ぼくには自殺の仕方を選べる自由がある」
わたしはなんだかムカついてきた
ソフトクリームを少年の顔面へ近付けた
「間接キスしろよ」
「なにそれえ?」

中央広場の真ん中には噴水が設置されていて
誰が制御しているのか知らないが素敵なリズムで出たり出なかったりしている

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5523 : 題は無い  美裏 '11/09/08 20:28:15

気分は最悪でゲロ吐きそう
まったくムカムカしてあんたビンタしてもいい?
目の前の友だちの友だちに問いかけて別にいいですよなんて期待していたのか
はああ? なんてすっとんきょうな声が返ってきてわたしは何も無かったようにぷいと廊下を歩き出した
だめだ
とりあえず壁でもごちんと殴りたい
胸のムカムカの原因を探ってみる
実家に帰省したときわたし宛ての手紙が勝手に開封されていたからか?
それもある
マミー、いつになったらわたしはあなたの小学生ではなくなるのだ?
けど今のわたしのムカムカは別のものだよ
文学極道
そこに投稿したわたしの詩に対するコメントに不満がある
最近、セクハラチックな言動が増えてきているような気がしているのだよ
そそるとか
あのなあ…………
そんなこと書かれてわたしが嬉しくなると思ってんの?
それともなんかわたしをイラっとさせてそれを画面越しにニヤニヤ想像するとかの類いなの?
まったく気持ちの悪い××野郎はとっとと×××××!
危うく魂の叫びを発するところでした
我慢したよ
校内をうろつく野郎どももいることだし
気に食わないな
バイト先にもそういうのはいるけど
でもそれはお互い顔が見えてるわけだしさ
ある程度、向こうも代償を払ってるというか
セクハラチックな言動をして(こいつバカ?)って思われる危険性もあるわけで
でもネットで見ず知らずのやつにそんなこと書かれるのってなんかムカつくじゃん?
だからわたしは今、なんとかそそらないような文章にしようと思ってこれを書いてるんだけど成功してるかどうかは謎だ

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5509 : でんでん太鼓  黒髪 '11/09/05 11:40:03  [Mail]

太鼓でんでんならしてた童子
祭りの人影追いかけた
ばちでたたいた太鼓の音が
とっても美しくてうっとりしていた
外側の鉄鋲をかしゃかしゃと鳴らしていた

人生に寂しいという感情を抱く前に
無心に太鼓の音に耳澄ましていた
あの日の夕暮れ闇の中
今は昔の懐かしい記憶
トンボが一匹飛んでいた
赤とんぼの羽が透けていた
今はいないトンボ

すべてを破壊するんだと
勇ましい音楽に耳を傾け
自分を鼓舞していた少年時代
はしかのような病気に
今は分かるよお母さんお父さん
人生に疲れたらあの日の太鼓を思い出すよ
太鼓の音が聞こえてくる

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5527 : 手のひら  Tora '11/09/12 00:12:16

手のひらに描いた 私の三半規管は
時々右に 気がつくと左に と
まるで子供のように落ち着きが無いのです

あなたが愛を叫べば 私は大声でゴスペルを歌い

あなたが人を呪えば 私は大統領の脳下垂体ですら

そうです ジャっと引きちぎるのです

ある日

私は手のひらを太陽に掲げます

それは無意識の意思 意図せぬ欲望

三半規管は 透き通っていらっしゃいます

そして不思議なことに
「綺麗に透き通っていますね」と言われても
「私には見えないがね」と唾を吐かれても
太陽の光は陰る事無く
それはいつまでも 透き通っていたのです

腕が辛くなった私は腕を降ろし
手のひらを見たのでありますが
三半規管はどこにもなく

私は急に恥ずかしくなって

平均台の上を滑るようにして

走り去ったのです

指先が少し

じんじん致しますが

私の両手はバランスよく地平線を捉えて

まるでエアフォースワンのように加速して行くのです

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5525 : ぷるぷる鳥の結晶  千手観音 '11/09/10 20:48:09 *1

昼食は 駅前の喫茶店でナポリタンスパゲッティーを食べる事にした
別皿のキュウリの薄切りとキャベツのサラダには くし型に切られたトマトも乗っている
まずまずの味である
喫茶店なのだから高望みは不毛だ
店内の客は 僕ひとりしか居ない

ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツ の演奏するロック・アラウンド・ザ・クロックはこの店では突拍子もなく感じる
まるで 運動場でカヌーを漕いでいる集団のように空回りしっぱなしではないか

オーエス、オーエス、    オーエス、オーエス、

市民劇団の小人たちが掛け声に合わせて ろを漕ぐ

カウンターに置かれた灰皿から白煙が立ち昇る
僕はスパゲッティーをフォークで絡めとった
輪切りのピーマンが主張するのは やはり健康なのだろうか

窓の外では5月の昼の眩しい日差しが 物の質量を飛ばしてしまっている
絵画に描かれるべき現実が形而上学的に輝きを放っていた

店のマスターが話しかけてきた
「ぷるぷる鳥があるんだけど、どう?」 グラスを布で拭きながら 真面目な顔で言った

「何それ」 僕は けげんな表情で答える

彼の説明によると ぷるぷる鳥はフランス料理の食材で 生肉を知人から譲り受けたとの事情だ

「焼き鳥にしてみた」と言うマスター笑顔から 真新しい時計台を連想する 「さっき試食したんだ。ニワトリよりイケるぞ」

サービスのメニューとして差し出された小皿には キジ目ぷるぷるチョウ科ぷるぷるチョウ属のなれの果てが乗っていた
僕は それを見たとたん 急にビールが飲みたくなった

「ビールを…… 」 そう言いかけたらマスターが冷えたグラスをさっと差し出し フランスの映画俳優みたいに注いでくれた

気分が良くなったところで なにげなく窓から駅のロータリー広場を眺める
そしたら 丸刈りのメガネを掛けた青年と目が合った
臙脂色と黒の格子柄のネルシャツにベージュのゆるいチノパンツを履いている
僕の視線を受けとめると 彼は嗤ったように見えた

向こうは こちらを見続けていたように僕は感じる
何故だろう

青年が何か言っている
口もとから読み取ってみると、

――ぷるぷる、      ぷるぷる、
        ぷるぷる、
              ぷるぷる、――     

僕は呼ばれているようで 落ち着かない
目を逸らせる
ビールを一気に飲み干してから また見た

青年はこちらに向けて 黒くて輝く小石をかざしていた
きっと ぷるぷる鳥の結晶か何かだろうと僕は考える
何故そう思うかって?

理由なんて分からない
ただ 僕はこの出来事を前から知っていた
懐かしく感じて 泣きそうになった

青年が片手を上げ続けていたので タクシーが止まった
そりゃ そうだろう
彼は 戸惑いながらもタクシーに乗って消えた
僕はその一部始終を見終えて 視線を戻した

僕が喫茶店から出たのは 世のサラリーマン達が働くのを再開してから30分以上経ってからだ
青年が居た場所に行ってみると そこには 透き通った羽根が散っていた
喫茶店の窓を覗いてみると 室内は暗くて 何の影も見えなかった

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- ealis -