選出作品

作品 - 20200520_298_11900p

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逆説的な届出のあれこれ

  夜野群青

(レ)確約をとりつけること
保護した紙切れの朱肉は乾くでしょうが

(レ)保険をかけること
光るものだけ見つめてたい眼球には
均等に塗りこめられた椅子四脚の艶
更新には照度五千ルーメンの食卓で
箪笥の木螺子は固く閉められている
外因で外れることは赦されていない
普段使いの茶渋に些かも興味はない
椎間板は刺激すれども充たされない
女共が騒ぎだすと後戻りはできない

(レ)安寧を求めること
欄間から覗く効きすぎた暖房の末の結露
湿気を帯びた布団の上で組まれ重ねた躰
手口と墨痕は温かい重き肌の上を這う蛇
薄紅の被膜の越えられないもどかしさよ
いちにちいちにち違うねこを飼いたいね

(レ)埒外から視ること
色のついた洗濯物を綯い交ぜにしてから
人の不幸を祝ってきたと云うの
書いてきた文字数に比例して跳ねる泥濘
誰の顔にも塗ってきたと云うの

(レ)照会
合わせ鏡の実像に語らぬこと

(レ)意訳
残酷だな
残酷だとも
生とはかようなものだ

( )確認
飼い慣らした舌の色鮮やかな口調を疑おうともしないわたくしに優しい物語など綴れるものか