シャボン玉です
わたしにふれると死にます
東片町三丁目の大久保さんの長女のたか子ちゃんが
わたしをとばしてくれました
たか子ちゃんは先週三歳になったばかりなので
まだ人間ではなく 神さまです
みなさん ご存じないようですが
神さまは 小さくて よわくて
こわがりで 人間に
「こらあっ」とおどかされると
ひいっと なきだしてしまいます
大きな神さまなんて いないんです
というわけで
たか子ちゃんにとばされたわたしは
あたたかな春の風にのって
町の上の空を 旅しています
旅の目的は 単純です
神さまをおどかした人間をみつけて
その人の鼻先で はじけて割れることです
三日後 その人の胸のなかは
消し炭のようにぼろぼろになり
息ができなくなります
ほら もう 神さまを
おどかすことはできません
まいにち まいにち
あちこちの町の 空の下で
何人もの神さまが
涙をぬぐい 鼻汁をすすりながら
きれいなシャボン玉をいっぱい
とばしています
ただしくて強い
すべての人間たちに
とどきますように と
選出作品
作品 - 20200422_067_11827p
- [佳] シャボン玉 - 式子 (2020-04)
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式子