黒い写真は我々に何を語ってくれるだろうか?
干からびた噴水の中を走る純粋さは追い出されてしまった
岩にも柔らかな弱点があり指で触ると硬くなっていく
裸になった精神のページにはいかなる言葉も書かれていなかった
冷蔵庫の中でよく冷やした孤独が静かに腐り始めるとき
蛇口から滴り落ちた一粒の焔さえひび割れて流血する
傷つけぬようにガラスの花束を優しく撫でまわした
雨に濡れた傘が身震いをしながら水滴を飛ばす
魅力を失うだけなのに薔薇の棘は削ぎ落とされてしまった
時計を切り裂くとその傷口から時間が溢れて零れ落ちるように
耳の奥へ迷い込んだ銃声を引っ張り出してやろう
冷たい風の尻尾をつまみ上げて空の向こうに逃がしてやろう
剥き出しの心臓が自分の身を切り開きながら羽を広げる
蜘蛛の巣の上では震える感情がこんがらがっている
手の写真を入れたポケットの中で手を温めていた
選出作品
作品 - 20200422_038_11826p
- [優] Chocolate - 鴉 (2020-04)
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Chocolate
鴉