選出作品

作品 - 20200407_761_11802p

  • [優]   - 黒羽 黎斗  (2020-04)

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  黒羽 黎斗

身勝手な流れと、火の櫓
(転調された、語彙の亀裂)
配列の構造と、黄色い花柄
(摩天楼を見下ろした汗の雲)
それらを
秤の上で、画角が覗き込む。
(放置される犬の、目は三つ)

縁取りの中で
擦り合わされて発火した炭素の
心臓の浮遊物が
とても小さな球体の中で
歪みの無い不協和音を鳴らしている。
城郭を具えたスパークは
全身の皮膚と骨の間で、筋肉の密を
破壊している。

倒置されている洞窟の音声を日々聞いていた
右肩から、純潔な、細胞膜が侵されていく
欄干の上に雨が降っていて
弟が足を使って走っている
ただ眺めているだけだった蓮の花が
俯きがちに、雲を見る。

宛名が、宛名があって、移る香りがある

赤く熟れている
ドングリの形をした木の実の一つが
朝食のパンの上で
産婦人科のベッドの上で
破裂寸前になっている。

自明であることは、ただそれだけである。
偶然であることは、ただそれだけである。
捕獲された蜂の巣の中に、
甘い香りが、味が、身勝手に棲みつく。

粗い砂粒は、靴の中で丸くなり
裂傷の無作為に蓋をする。

明るい惑星の日記が
凝結の海に、忘れられる。

崩壊が、整理された、時が来る。