灼熱の闇に 暗赤の泥濘は底無く
揺れる葦を掻き分け、漬かる膝を引き抜く
慄く掌が虚空を掴み、逃れ行く脚に
煌めく針山の底より 噴き出す業火から
群がる
無数の腕、
乾いた亡者らの
骨浮き、皮崩れ、
開け広げた唇に音なく
〈これでもかこれでもか、〉打ち下ろす
〈これでもかこれでもか、〉打ち下ろす
肉断ち、骨砕き、
槌に染まる血汐を被り、骸らの息絶えず
よろめき立ちて、
なお万力に絡み、絞め殺しの根のごとく
引き摺る腕の
剥ぎ、刮ぐ、
明滅する糸の
啜られ朽ちゆく
焔、
火先細り
銀河もろとも拉ぐ重力の滑落に
いましも燃え尽きんと
〈明滅する、明滅する、〉
眼上げれば遠く 連なる山塊の頂に
翻る旗は真白く!
雪崩れる山道の落石に塞がれ
指先は霞む白布を…
〈これでもかこれでもか、〉打ち下ろす
〈これでもかこれでもか、〉打ち下ろす
槌に染まる血汐を被り 絶えぬ骸らの
群がる
無数の腕
選出作品
作品 - 20200317_440_11762p
- [佳] 打ち下ろす槌に - 天寧 (2020-03)
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打ち下ろす槌に
天寧