選出作品

作品 - 20200102_649_11660p

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 「右腕より、芽吹く」  

  黒羽 黎斗

 払われた帆船の埃が、
 私を妨げています。

 頬を撫でていた母親の眠りと、
 燃え尽きた雷の轟音が、
 外を知らなければならない理由です。

 一滴の牛乳に、
 喉を拒絶されるのが、嫌なら、
 目はただ、虚ろとなるはずです。

 私の肩に、
 羽を貼り付け、吊し上げた、
 子供のいない父親を、目の前にすることで、
 私の腰が痛むのです。

 柊の葉を、一枚食べて
 公園のパン屑を、食べて
 私は肩から腕をぶら下げ
 もう眠れない夜を歩くのです。

 青の中で、燃えて、繰り上がるのです。