あの街角に
ナッツ売りの子猫がいるわ
唄がきこえてくるのよ
秋風がつつんで
赤い紅葉の上で
ひるがえったのよ
あの子猫の唄が
ささやかな
幸せはいりませぬか
幸せに
なりませぬか
ナッツ売りの子猫は
綺麗な蓋つきの缶に入れて
朝の陽の光ごと
あなたの旅が
あまりにも恋しくて
欠けた記憶
破片ごと
滲む夕暮れ
旅立つ草原
生きる痛み
翡翠は揺れる
軋みながら昇る朝陽が
沸き立つ体温の赤いろの
片胸をのせ
鼓動の眠る丘に
あがったの・・・
ピンとはった尻尾
子猫の夜は
青い肺の中にできた
銀河なのよ
火のついた火山の
光の震えと
距離と眩暈と
ほどけてしまった
よ る
と
ぼくの心の
ぱ っ けーじ
あなたのそらの色を
おしえて???
心を許せしころに
ひょこんと
芽吹いた
差し出される手に
爪を立てた
行かないでって いったでしょ?
数えられない程の
あなたの夢を
見たのよ
たくさん涙したでしょう
まわり出したでしょう
全部があなたに
注がれているんです
ナッツは
いりませぬか?
ささやかな
幸せはいりませぬか
向日葵が
田舎の町の
単線の駅の上にも
咲いていますよ
幸せになる夜は
彼の肩の上で
泣くこともできるの
まるでオリオン座みたいに
幸せになる準備はいいですか?
ナッツ売り子猫の
秋風にくるんだ
子猫の唄
貴方にあげる
選出作品
作品 - 20191127_034_11583p
- [佳] ナッツ売りの子猫 - 鶲原ナゴミ (2019-11)
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ナッツ売りの子猫
鶲原ナゴミ