砂の夢を淋しく貴方の指がつかみます
骨張った、長い繊細な指です
私の落ち窪んだ
懐中は
酪乳色の天体を泛べて
帰れない故郷の
帰りたい生涯へ
まるで手紙の様に
なつかしい夜の窓を灯しておりました
そして
あなたの短い種摘時が終ると
自由は、重い孤独の風位計を確めるように
錆びた鉄網に鈍く降ろされた
ダンテル縫製の艫に、
天使長の冒した死に孵ってゆく
私達を影とを罪し
捉まえては
石盤の花束にひとつ傅く
衣裳の様に
つづれほぐれてゆくのです
この咽喉に
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影の街端
その心臓に確実を狂う鐘の聯なりが
時を進め
それは這い縺れ綴られた
孤像の総身に
哀しみを縋り尽くした
人間と謂う噴泉の涸れた命運を標しています
塵花は等しく
鉄漿色の藻屑を受けて
誰しもが埃を払い
踵を返すのです
この絶望という衣裳を残し
わたしたちの気息が
もし希望としての喪失を耐え得るならば
唾に価する慈愛などはないことを言伝に送るでしょう
卵管と癒着し
呼吸樹を立ちつづける実象の瞑目に
そして汽船の停泊地に
哂い歎き
視えなき群衆を溯ってわたしが
わたしであるべき
孤独に還り
一粒の籾殻を鎧戸の夕より喪い
且ての孤絶は
透明な
堕落と悔悛を
過ぎ去り、帰ることはないのでしょう
遺灰と塑像に
選出作品
作品 - 20191008_409_11498p
- [優] にせものの、 - 鷹枕可 (2019-10)
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にせものの、
鷹枕可