崩れる昼下がりの中で、目に見えていた我々だけが確かで、
特別だから、重力が増していく。
彼が認めても変わらないのが自明ならば、
新しい日付に眠りはなくなる。
変わり者だって普通に歩くし、夜は陽の光を歓迎する。
それでも過去の言葉を借りて足りない音の中に血を注ぎ込む。
知らされた宿命なんて知ったことではないし、応える必要もないなんて、
ただの言い訳、怨嗟の声、
深淵に限った話ではなく、明るくて寒くて浮き上がるような
今日のこの部屋を、侵略戦争の先駆けにしよう。
新聞を取っていない人間には分からない話だろうが、
昨日のチラシの中に宅配ピザの広告があった。
歴史の教科書に則って書かれていたその赤色の広告は、どうせトマトの色なのだろう。
窓枠に溜まった埃は、結局のところ天井も床板も関係ない。
表に出ていた奴らは雨を羨んで、
そんなことも分からなくなった老いぼれは晴れの日に耳を塞ぐ。
二度三度と繰り返すうちに生まれてしまった、僕らのような深紅の夢は、
家の話をしたがらない。
自らの手で壊そうとして、壊れなかったあの家の話を、
誇りに思ったりなんかできない。
願望が届かないその先へ
知らされてしまった光の行方を、
ごみ箱に捨てた。
知識も本能も崩れてしまい、残りもしなかった薄氷に
ボールペンで刻み込まれた、ただ透明な、異国の文字
僕の子供がいつしか積み木を使って、僕を、破壊する。
それでいい。
選出作品
作品 - 20190914_083_11454p
- [佳] 目の前に、僕と私 - 黒羽 黎斗 (2019-09)
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目の前に、僕と私
黒羽 黎斗